ぜんきはすい
前期破水
分娩開始前に破水をすること。母体や胎児の状態が悪化しやすく、入院して管理が必要となる
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最終更新: 2018.08.01
前期破水の基礎知識
POINT 前期破水とは
前期破水は分娩が始まる前に卵膜が破れ、羊水が子宮外に流れ出ることです。腟から突然羊水が流れ出て、下着が濡れたりすることなどをきっかけに気づくことがあります。原因の中で最も多いのは、「絨毛膜羊膜炎」(卵膜の細菌感染)です。診断のために腟鏡を使って子宮口からの羊水の流出を確認したりします。 妊娠37週以降の前期破水では、その後24時間以内に陣痛が起こることが多いので、感染の有無や胎児が元気かどうかを見ながら分娩が進むのを待ちますが、状況によっては子宮収縮剤を使って積極的に分娩を進めることもあります。妊娠37週未満(早期産)の前期破水では、妊娠週数などに応じて子宮収縮抑制剤を使用して陣痛を抑えたり、感染予防のための抗菌薬を投与したり、胎児の肺の成長を促すために副腎皮質ステロイド薬を使ったりします。前期破水は自覚する症状がおりものや尿もれと区別がつかないこともあるので、妊娠中に「下着が濡れて冷たい感じがする」などの疑われる症状がみられる場合には、かかりつけ医を受診して調べてもらってください。
前期破水について
- 分娩開始前に破水をすること
- 特に妊娠37週以前の破水を前々期破水という
- 妊娠週数や母体や胎児の状態によって治療法が異なる
- 主な原因
- 絨毛膜羊膜炎
羊水過多 - 双子や三つ子などの多胎妊娠
- 子宮の奇形
- 羊水
穿刺 などの処置による卵膜の損傷
- 前期破水と診断された場合に気をつけること
- 子宮内と外界の交通ができ感染のリスクが高まる
- 子宮内の環境が変わることで、
臍帯 が圧迫されてしまう可能性がある - 破水によって内圧が急激に減少することで常位胎盤早期剥離のリスクが高まる
- 前期破水と診断された場合には、必ず入院して管理が必要となる
前期破水の症状
- 羊水の流出感
- 水っぽい帯下ようなものが膣から流れる感覚がある
- 流出量の多い場合も少ない場合もある
- 流出量が少ない前期破水がある
- 自身では帯下や尿漏れと区別が付かないことがある
- 破水かどうか判断に迷った場合には病院を受診する
- 感染を伴う場合には以下の症状が現れることがある
- 母体の発熱
- 子宮の圧痛
- 羊水の混濁、悪臭
- 胎児心拍数の増加
- 羊水の量が少なくなることで胎児の成長に影響を及ぼすことがある
- 肺の
低形成 - 四肢の変形
- 関節の
拘縮
- 肺の
前期破水の検査・診断
- 診察
- 肉眼的な羊水の流出の有無や色調
- 羊水の性状
- 子宮頸管の長さや子宮口が開いているかを確認する
- 破水の有無を診断するための検査
- BTB試験紙を用いたpH値の検査(羊水はアルカリ性のため青色に変化する)
- 羊水中の成分を検出する生化学検査
- 経腹超音波法
- 羊水の量や胎児の元気さを確認する
- 採血
- 感染兆候の有無を確認する
- 胎児心拍数モニター(
NST )- 胎児の心拍数に異常がないか、子宮収縮の有無を調べる
前期破水の治療法
- 正期産(妊娠37週から42週未満)の場合
- 感染兆候に留意しながら陣痛発来を待機する
- 自然陣痛が認められない場合には陣痛促進剤を用いた分娩誘発を行うことがある
- 胎児の姿勢や母体の既往、
合併症 によっては帝王切開となる場合がある
早産 域(妊娠37週以前)の場合:感染兆候がなく児の状態が安定していれば出来る限りの妊娠期間の延長を図る- 床上安静
- 子宮収縮を認められる場合には子宮収縮抑制剤の投与
- 胎児の肺の成熟を促すための
ステロイド 治療 - 早産となる可能性があるため、早産児が管理可能な病院と連携し管理を行う
- 胎児の肺が成熟したとされる妊娠34週以降は、分娩が考慮される
- 過期産域(妊娠42週以降)の場合
- 胎盤の機能低下が起こる可能性が高いため、分娩誘発や帝王切開を考慮する
- 感染予防を目的に、抗生剤の投与を行う場合がある
- 妊娠週数によらず、感染兆候が強い場合には分娩誘発を検討する
- 緊急の帝王切開を行う場合もある
- 破水かもしれないと感じた場合には、膣からの感染予防のために入浴は控えましょう