高ナトリウム血症の症状:脱水による症状、意識障害など
高ナトリウム血症の症状はのどの渇きから始まります。興奮状態になったり、意識がもうろうとしたりすることもあります。けいれんや意識の状態が悪い場合は重症の高ナトリウム血症の可能性があるので、すぐに病院を受診するようにしてください。
1. 高ナトリウム血症の症状と血中ナトリウム濃度の関係
高ナトリウム血症は血液中のナトリウムが濃くなることにより様々な症状を呈する病気です。ナトリウムは食塩などに含まれていて、私達の身体が正常に機能するために必要な物質ですが、適量から大きく外れると体調不良の原因にもなります。
血液中のナトリウム濃度はmEq/L(メック・パー・リットル)という単位が使われます。ナトリウムの正常値は135から145mEq/Lです。血液中のナトリウム濃度が145mEq/Lを越えている状態が高ナトリウム血症です。
濃度は水の量とナトリウムの量によって決まります。つまり大量の水を飲むことなどはナトリウムの値を下げる方向に、脱水などはナトリウムの値を上げる方向に働きます(詳しくは「高ナトリウム血症の原因」で説明しています)。ナトリウムの値が145mEq/Lを越えることでしだいに症状が現れます。またナトリウムの値によって、高ナトリウム血症の症状も異なり、表にするとおおまかには以下のようになります。
ナトリウムの値 | 状態 |
135から145mEq/L | 正常値 |
145から160mEq/L | 軽症の高ナトリウム血症: のどの渇き、興奮状態・錯乱、意識もうろう |
160mEq/Lより高い値 | 重症の高ナトリウム血症: 痙攣(けいれん)、 |
ただし、ナトリウムの値が高くても症状が出にくい場合もあります。以下で軽症の場合、重症の場合、症状が出にくい場合について詳しく説明していきます。
2. 軽い高ナトリウム血症の症状
軽い高ナトリウム血症の症状として、のどが渇いたり、興奮状態になったり、意識がもうろうとしたりします。これらは血液中のナトリウム濃度がおおよそ145から160mEq/L程度の時にあらわれる症状です。以下で詳しく説明していきます。
のどの渇き
のどの渇きは高ナトリウム血症の初期にあらわれることが多い症状です。これは脳に口渇中枢というものがあり、ナトリウムの値が高くなると、のどの渇きとして感じるためです。のどの渇きを感じることで、私たちは水を飲むので、高ナトリウム血症の悪化を自然に防いでいます。しかし、のどが渇いても水を飲むのを我慢したり、お年寄りの方などで口渇中枢がにぶっていると、高ナトリウム血症の原因となってしまいます。のどの渇きを感じたらこまめな水分補給を行うことが重要です。
興奮状態・錯乱(さくらん)
高ナトリウム血症では精神状態の変化があらわれます。具体的にはいつもよりイライラしたり、怒りやすくなったりします。錯乱(さくらん)といっていろいろなことに混乱を起こしたり、非常に興奮した状態になることもあります。特に高ナトリウム血症はお年寄りや認知症の人に起こることも多く、このような精神状態の変化はわかりにくいことも多いのですが、ご家族の様子がいつもと違う、おかしいなと思った場合には、医療機関でナトリウムの血液検査を含め調べてもらうことをお勧めします。
意識もうろう・傾眠(けいみん)
高ナトリウム血症がより進行してくると意識がもうろうとしたり、
3. 重症化した高ナトリウム血症の症状
血液中のナトリウム濃度が160mEq/Lを越える重症化した高ナトリウム血症では、痙攣(けいれん)をおこしたり意識を失ったりすることがあります。以下で詳しく説明していきます。
痙攣(けいれん)
高ナトリウム血症は重症化すると痙攣の原因になることがあります。痙攣とは意識を失い手足に震えが起きている状態で、脳に異常が起きていることを示す危険な状態です。すぐに治療しないと命に関わることや後遺症を残すことがあるので、痙攣が起きた場合にはすぐに救急車で病院を受診するようにしてください。
昏睡(こんすい)
昏睡は意識がもうろうとしたり、傾眠になったりする症状がより悪化した状態です。一見眠りこんでいるようですが、大きな声で呼びかけても、痛みの刺激を加えてもほとんど反応がありません。昏睡も脳に異常が起きているサインであり、非常に危険です。もし、意識がもうろうとしてきた場合には原因がわからなくても助けを呼ぶか、すぐに救急車で病院を受診するようにしてください。
4. ナトリウムの値が高くても症状が現れないことがある?
ここまで高ナトリウム血症の重症度と症状の話をしてきましたが、ナトリウムの値が高くても症状があらわれなかったり、わかりにくかったりすることがあります。ナトリウムの値が高いにも関わらず、症状があらわれないのは主に以下のような場合です。
- 高ナトリウム血症の期間が長い場合
- 赤ちゃんやお年寄りの場合
詳しくは以下で説明していきます。
高ナトリウム血症の期間が長い場合
高ナトリウム血症の期間が長い場合、症状があらわれにくいことがあります。これは高ナトリウム血症の期間が長いと、体がナトリウムの高い状態に慣れてしまうためです。逆に言えば、急激にナトリウムの値が上がった場合には、体がナトリウムの変化についていけないため症状が出やすいと言えます。
症状がないにも関わらず、血液検査をして偶然高ナトリウム血症が見つかった場合は高ナトリウム血症の期間が長い可能性が考えられます。
赤ちゃんやお年寄りの場合
赤ちゃんやお年寄りは症状を他人に説明できない場合もあり、高ナトリウム血症の症状がわかりにくいことがあります。いつもより元気がない、怒りやすくなったといった何気ない症状が、高ナトリウム血症によるもののこともあるので注意が必要です。高ナトリウム血症であるかどうかは、血液検査でナトリウムの値を計測することでわかるので、ご家族などの症状が心配な方は血液検査でナトリウムの値を調べてみることをおすすめします。