外反母趾の症状:足の親指の曲がり、痛み、しびれ、タコなど
外反母趾の主な症状は足の親指(母趾)の曲がりです。はじめのうちは指の曲がりが生じるのみですが、進行すると母趾の付け根が出っぱり、痛みやしびれなどを感じるようになります。また、母趾の曲がりが悪化すると他の指も変形を起こして、さらに広範囲に痛みを伴うようになります。ここでは外反母趾の症状について詳しく説明します。
目次
1. 外反母趾の初期症状と進行した症状について
外反母趾の初期の症状は、足の親指(母趾)が小指の方向に曲がって少し変形している状態で痛みはあまりありません。手で曲がりを戻そうとすると正しい位置に戻りますが、手を離すとまた変形した位置に戻ります。
この状態で、靴などによって母趾の圧迫が続くと外反母趾が進行します。進行すると、母趾の付け根の部分にバニオンと呼ばれる隆起ができ、バニオンとその周囲に
さらに進行すると足先を圧迫するような靴を履いて歩くだけで母趾が徐々に曲がるようになり、母趾が第2趾や第3趾の下に潜り込むことで、第2趾や第3趾の指先が曲がってハンマートゥと呼ばれる状態になります。ハンマートゥになると、曲がった指の関節にタコ(胼胝:べんち)ができて痛みます。また、母趾の付け根が脱臼を起こして、足の甲にも痛みを伴うことがあります。この状態まで進行すると、歩く時に母趾が地面に接地しなくなるため、正常に踏み込めなくなります。
これら主な症状をまとめると下記のようになります。
- 足の親指(母趾)が小指の方に曲がる
- 足がズキズキして痛む
- 足がしびれる
- タコ(胼胝:べんち)ができる
- 母趾以外の指が変形する〔ハンマートウ、槌指(つちゆび)など〕
次に、それぞれの症状ごとに詳しく説明します。
2. 足の親指(母趾)が小指の方に曲がる
外反母趾の特徴的な症状として母趾が小指の方へ「くの字」に曲がります。くの字を構成するのは手前が中足骨で、奥が基節骨という骨です。出っ張った中足骨の頭の部分が隆起して「くの字」の曲がった部分を作ります。この隆起はバニオンと呼ばれ、バニオンが靴に当たって痛みを起こします。
3. 足がズキズキして痛む
外反母趾の自覚症状として多いのは足の痛みです。母趾の内側にある「くの字」の隆起部分(バニオン)がズキズキと痛むことが多いです。特に思春期までの子どもの外反母趾ではバニオンの痛みが多いですが、中高年の外反母趾ではバニオンだけでなく、小指や足の甲のあたりまで痛みが広がることがあります。
外反母趾で痛みが起こる部位は次のような場所です。
- 母趾の付け根の隆起部分(MTP関節、バニオン)
- 母趾の関節の内側(IP関節)
- 第2趾、第3趾の付け根(MTP関節)
- 第2趾の背側(
PIP関節 ) - 足の甲(リスフラン関節)
それぞれの痛みの起こり方について詳しく説明します。
母趾の付け根の隆起部分が痛い(MTP関節、バニオン)
最も多くの人に起こる症状が、「くの字」に曲がった母趾の隆起部の痛みです。この隆起部をバニオンと呼びます。外反母趾では母趾の変形により足の幅が広くなるため、幅の狭い靴や硬い靴を履くとバニオンが圧迫されて痛みが起こります。
関節のまわりには滑液が入っている滑液包(かつえきほう)と呼ばれる袋があり、関節を滑らかに動かす働きをしています。バニオン部分の関節(MTP関節)が圧迫されると滑液包が炎症を起こし、滑液包炎などを起こして腫れや赤みが生じます。また、バニオン部分の骨の隆起が神経を圧迫すると、ピリピリしたような神経痛が起こります。
滑液包炎や神経の圧迫に伴う痛みの強さは、外反母趾の曲がりの角度に比例しないため、見た目の外反母趾が重度でなくとも起こることがあります。また、母趾の内側部分に胼胝(べんち、タコ)ができて痛むことがあります。
母趾の関節の内側が痛い(IP関節)
外反母趾の変形が強くなると、母趾が小指方向に曲がるだけでなく、内側方向に回転することで母趾の内側がさらに靴に当たるようになり、タコ(胼胝:べんち)ができて痛みます。
第2趾の付け根が痛い
もともと母趾と小指をつなぐ横のラインはアーチ状になっており、第2指や第3指は少し高くなっています。しかし外反母趾が起こるとそのアーチが低くなり、立っているときや歩行時に第2、3趾の付け根に体重が強くかかることで痛みが起こります。この部位は母趾と小指をつなぐ横のラインのちょうど真ん中あたりになりますが、外反母趾の人の半数程度にこの部分の痛みが起こり、合わせてタコもできることがあります。
第2趾の背側が痛い(PIP関節)
外反母趾が進行すると母趾が第2趾の下に潜り込むことで第2趾が持ち上がり、靴などに当たりやすくなって背側にタコ(胼胝:べんち)ができて痛みます。変形が強い場合には第3趾の背側にもタコができて痛みます。
足の甲が痛い(TMT関節、リスフラン関節)
外反母趾が悪化すると足の甲が痛むようになります。具体的には、足の指につながる中足骨と、足の付け根にある楔状骨や立方骨との間にある関節で、TMT関節やリスフラン関節と呼ばれます。外反母趾で母趾の変形が悪化すると、TMT関節(リスフラン関節)に負荷がかかって隆起し、痛むようになります。さらにリスフラン関節の周囲や足先までの部分が痺れたりすることがあります。
4. 足がしびれる
バニオンの炎症や骨の隆起に伴って、母趾の神経が圧迫されると痛みやしびれが起こることがあります。この症状は外見で曲がりが軽度であっても起こることがあります。
神経の圧迫がある場合にはTinel徴候とよばれる特徴的な症状がみられます。Tinel徴候とはバニオンのあたりを叩くとその部分より先端部に痛みが広がるものです。診察時にTinel徴候の検査が行われたりします。
バニオンだけでなく、足の甲のTMT関節(リスフラン関節)の隆起でも神経が圧迫されることがあり、TMT関節の周囲や指先にかけてしびれが起こることがあります。
5. タコ(胼胝:べんち)ができる
外反母趾では体重のかかる場所や常に靴に当たる場所にタコができて、場合によっては痛みます。具体的には次のようなところです。
- 足の裏の第2、3趾の付け根
- 母趾の内側
- 第2、3趾の背側
外反母趾で最もタコができやすい位置は足の裏の第2趾の付け根です。最も体重がかかるためタコができて痛みます。その他には、バニオンや、母趾が内側に回転(回内)して指全体が外側を向くことで母趾先端の関節の内側にできることがあります。さらに母趾の曲がりが強くなると第2趾、第3趾が持ち上がって靴にあたるようになるため、これらの趾の背側にもタコができます。
6. 母趾以外の指が変形する〔ハンマートウ、槌指(つちゆび)など〕
母趾の変形が大きくなると、母趾が第2趾や第3趾の下に入り込んで持ち上がり、第2趾や第3趾も変形することがあります。このような指の形をハンマートゥや槌指(つちゆび)と呼びます。持ち上がった第2趾や第3趾の関節が靴にあたり、タコができ痛みを伴うことがあります。また、重度の外反母趾では小指も母趾方向に曲がって、内反小趾(ないはんしょうし)という状態になることがあります。
【参考文献】