2016.02.21 | コラム

外反母趾の手術について

手術法の比較など

外反母趾の手術についての写真
1. 外反母趾は治療が必要か?
2. 外反母趾の手術法について解説

外反母趾の手術には、様々な方法があります。手術の方法ごとの特徴や合併症などを説明します。

 

◆外反母趾は治療が必要か?

外反母趾は、足の親指が付け根から過剰に外側に曲がり、痛みを伴う病気です。強い痛みが現れた場合には、歩くことも困難になることもあります。治療法としては、装具療法や手術を行います。

この記事では、外反母趾の手術について解説しますが、その前に、外反母趾では手術などの治療をせずに放置していると、症状や変形はどうなるのでしょうか?

 

『外反母趾診療ガイドライン2014』には、以下のことが記載されています(いずれも弱い根拠に基づいています)。

  • 亜脱臼のみられる思春期の外反母趾を放置すると、約半数は変形が進行する。

  • 小児期の片側の外反母趾では、成長と共に進行して両側性になることが多い。

  • 成人の症候性の外反母趾を放置すると、症状は改善しない。

外反母趾がある人で、条件に当てはまる場合には、放置すると悪化する場合があるか、自然に改善することは見込めないことがわかっています。

痛みを増すようなきつい靴を履かないなどの注意に加えて、装具を使う治療法などもありますが、手術もひとつの選択肢です。

手術の中にもいくつかの方法があり、人によって適していると考えられる方法を選ぶことができます。

 

◆外反母趾の手術法について解説

外反母趾の手術方法としては、近位骨切り術、骨幹部骨切り術、遠位骨切り術、遠位軟部組織手術、その他(人工関節置換術、関節固定術、切除関節形成術など)に大きく分けられます。これらの手術法について、説明していきます。

 

  • 近位骨切り術

    • 近位骨切り術は、第一中足骨と呼ばれる親指の根元の骨の、かかとに近い部分(近位)の骨を切除します。外反母趾の手術法の中でも中等度や重度の外反母趾に適応とされており、手術の治療効果も良好である方法です。さらに、軽度の外反母趾に対して行われることも考えられます。年齢に関しては、子どもの頃ではまだ骨の先端がくっついてないため、その部分がくっついた後であれば年齢に制限はないとされています。

  • 骨幹部骨切り術

    • 骨幹部骨切り術は、近位骨切り術よりもより体の中心から遠い、第一中足骨の中央部分(骨幹部)を切って動かす手術方法です。手術の適応としては、軽度の外反母趾から重度の外反母趾まで幅広いものの、中等度と重度の場合に好んで行われます。また、動かした骨の断片どうしが潰し合うように落ち込んでしまうこと(troughing)の恐れがあり、重度の骨粗鬆症がある人では特に注意が必要とされます。治療効果は、近位骨切り術や後述する遠位骨切り術とあまり変わらないとされています。なお、骨幹部骨切り術の合併症として、手術の傷跡の痛みや神経痛が多いという報告もあります。

  • 遠位骨切り術

    • 遠位骨切り術は、骨幹部骨切り術よりもさらに先の部分(遠位)の骨を切って動かす手術方法です。手術の適応としては、軽度から中等度の外反母趾になります。合併症としては、骨に壊死が起きることがまれにあるほか、切って短くなった骨の場所に痛みが出ることがあります。

  • 遠位軟部組織手術

    • 遠位軟部組織手術は、足の親指につながる筋肉の腱を切って別の場所に付ける(母趾内転筋腱切離と中足骨頭または頚部への移行、第一中足骨の内側骨隆起切除、母趾MTP関節内側関節包の縫縮など)といった手術です。主に軽度の外反母趾の人に適応とされますが、遠位骨切り術と比べると、変形の矯正などはやや劣るという報告があります。

  • その他(切除関節形成術、関節固定術、人工関節置換術)

    • これらの手術は、初めての外反母趾の手術で行われることは非常に稀です。前述の4つの手術では対応できない場合に行われることがある手術方法になります。詳細な術式の説明はここでは割愛しますが、適応として、『外反母趾診療ガイドライン2014』では、「高齢者に適応がある」としています。合併症も様々ですので、もしこれらの手術方法を検討される場合には、医師とよく相談することが大事です。

 

以上、外反母趾に対する手術方法について説明しました。この中でも、遠位骨切り術や近位骨切り術では、術後10年間でも長期にわたって外反母趾の改善が見られていることが報告されています。術後10年以上のデータによれば、再発率に関しては、近位骨切り術で10〜15%、遠位骨切り術では2.5〜19%の報告があります。

 

痛みが強く、生活にも支障が出る外反母趾には様々な手術方法があります。手術を行う場合は、医師の説明をよく聞き、合併症なども含めて検討することをおすすめします。

 

注:この記事は2016年2月21日に公開されましたが、2018年2月8日に編集部(大脇)が更新しました。

執筆者

Shuhei Fujimoto

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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