がいはんぼし
外反母趾
足の親指が体の外側(小指側)を向いて変形してしまう状態
4人の医師がチェック 15回の改訂 最終更新: 2022.03.11

外反母趾の検査:病院で行う画像などの検査、角度による重症度判定など

外反母趾は主に問診と身体診察で診断を行うことができます。問診では症状の経過などについてよく聞かれるとともに、靴が原因になることが多いため、日常生活での靴の使用状況などについて聞かれます。重症度の判定のために母趾の変形の角度を測定することがあります。ここでは外反母趾の診断と検査などについて詳しく説明します。

1. 問診

問診は病気の経過や症状を把握するのにとても重要です。最近では問診票などにあらかじめ症状などを詳しく書いて、それをお医者さんが参考にして診察が行われます。お医者さんからは足の症状についての質問や、身体状況、生活背景についての質問があります。詳しく説明します。

足の症状について

問診でははじめに、受診した主な理由が聞かれます。外反母趾では足の症状について次のようなことが聞かれます。

  • 足の変形をいつから自覚したか
  • 足の痛みやしびれはどのようなものか(時期、部位、程度など)

◎足の変形をいつから自覚したか

外反母趾では足の変形が起こりますが、その変形がいつから起きたのか答えてください。また徐々に悪化してきているようであれば、その様子をお医者さんに伝えてください。

◎足の痛みやしびれはどのようなものか(時期、部位、程度など)

足の痛みやしびれがあれば、いつから起きたのか伝えてください。またどのような時に起こるのかも伝えてください。例えば、歩く時に起こるのか、じっとしていても起こるのか、靴を履いた時に起こるのかなどです。じっとしていても痛みがある場合には、外反母趾だけではなく関節リウマチ痛風性関節炎などの可能性も考えられるので、それに応じた診察や検査などが行われます。

日常の生活習慣について

日々の生活習慣でも外反母趾を悪化させる要因があります。具体的には次のようなことを聞かれます。

  • いつも履いている靴はどのようなものか
  • 症状が強く出る靴はあるか
  • どのくらい靴を履くか
  • 外反母趾の家族がいるか

◎いつも履いている靴はどのようなものか

外反母趾の大きな原因として靴は重要です。いつも履いている靴の種類や形について答えてください。

◎症状が強く出る靴はあるか

特定の靴の形を履いた時に痛みが起こることがあります。どのような靴の形が痛みを起こしやすいのかを答えてください。

◎どのくらい靴を履くか

外出が多く靴を履いている時間が長い、自宅で裸足で生活する時間が長いなど、どのくらい靴を履くかを答えてください。治療方針を決定するうえで重要です。

◎外反母趾の家族がいるか

外反母趾は遺伝的要因があると考えられており、家族に外反母趾の人がいると外反母趾になりやすいと報告されています。

身体状況について

治療するにあたって必要な情報を得るために、他の病気や生活に関しての質問も行われます。

  • 以前に治療した、もしくは現在治療中の病気、けが、持病はあるか
  • 常用薬やサプリメントの服用はあるか
  • 薬や食べ物などのアレルギーはあるか
  • 妊娠や授乳をしているか

この中で注意が必要な質問について詳しく説明します。

◎常用薬やサプリメントの服用はあるか

現在使用している薬やサプリメントがあれば教えてください。外反母趾の治療で新しく薬を服用することになった時には飲み合わせを確認する必要があります。市販薬やサプリメントについては自分で把握しておく必要がありますが、医療機関からもらった薬についてはお薬手帳を活用すると漏れなく伝えることができます。

◎薬や食べ物などのアレルギーはあるか

治療で新しく薬を使用する際に必要な情報です。外反母趾で手術を行う時は局所麻酔薬を使うことがあります。局所麻酔薬は一般的には歯科でよく使われる麻酔と同じリドカイン(商品名:キシロカイン®)です。以前に歯の麻酔で気分が悪くなったことがある場合には、アレルギーの可能性がありますので必ず伝えてください。

2. 身体診察

外反母趾はほとんどの場合足の診察で診断ができます。よく行われる視診、触診、可動域測定について説明します。

視診

視診は目で見て足の様子を観察するものです。母趾の変形の程度とともに他の指の変形についても確認されます。足の指の周りに赤みや腫れがないかや、タコがないかなども確認します。

座った状態のみではなく、立った状態でも足の様子が観察され、扁平足や開張足がないかどうかを調べられます。場合によっては歩き方の診察も行われます。

触診

触診では触った時の痛みや感覚の状態、関節の動きなどが確認されます。変形した母趾の隆起部分(バニオン)を触って、滑液包炎などの炎症を起こしていないかが確認されます。炎症がある場合には、熱感、腫れ、液体感などが感じられます。

バニオンによって神経が圧迫されると、母趾の背側の感覚が低下することがあります。感覚の低下も触診で調べられます。また、外反母趾の変形部分を手で動かしてみて、関節が固まっていないかが調べられます。関節の動きについては次に説明する可動域測定で調べられます。

可動域測定

母趾の根元の関節(MTP関節)が動く範囲を調べます。具体的には、母趾を上下に動かした時の可動域を確認します。可動域とは関節の動く範囲のことであり、外反母趾では可動域は正常(背屈60度、底屈35度)か、むしろ大きくなっていることが多いです。重度の外反母趾では母趾が回内(内側に回旋)することなどによって動きにくくなっていることがあります。重度の外反母趾ではないのに母趾の可動域が狭くなっている場合には、外反母趾よりも強剛母趾が考えられます。

3. 画像検査

外反母趾は主に問診や身体診察で診断されます。画像検査は曲がりの角度の測定や、他の病気と区別をするために行われます。最もよく行われるX線検査では曲がりの角度から外反母趾の重症度を判定することができます。

単純X線検査(レントゲン検査)

単純X線検査は外反母趾でもっともよく行われる画像検査です。立って足に体重がかかっている状態で、足の様子を上から(正面像)と横から(側面像)撮影します。さらに足先から撮影をして中足骨周囲にある種子骨と呼ばれる骨の状態を確認します。

X線写真の正面像から母趾の曲がりの角度(外反母趾角)が測定されます。少し難しいですが、外反母趾角は第一中足骨の骨軸と母趾基節骨の骨軸が作る角度です。正常平均値は報告によってさまざまですが9-15度です。外反母趾の定義は『外反母趾診療ガイドライン』では20度以上と決められていて、重症度はこの外反母趾角で決まります。詳しくは下記の「外反母趾の重症度」を参考にしてください。

その他にもいくつかの角度が撮影されたX線写真を用いて計算されます。側面像では足のアーチ(土踏まず)を評価することができ、外反母趾とともに起こりやすい扁平足などを確認できます。種子骨の撮影では中足骨の亜脱臼(脱臼しかけている状態)や脱臼がないかどうかが確認されます。

CT検査

CT検査はX線を使って身体の断面を詳しく見る検査で、細長い筒の中に入って撮影が行われます。(詳しくはこちらのコラムを参考にしてください。)外反母趾の診断には必須ではありませんが、より詳しく病状を調べたり、手術をどのように行うか検討したりする目的で行われることがあります。外反母趾に伴う関節の変化や種子骨の脱臼の程度などをX線検査よりも詳しく評価できます。

4. 外反母趾の重症度(軽度、中等度、重度)

外反母趾の重症度はX線写真の正面像から計算される外反母趾角で評価されます。外反母趾角は第一中足骨の骨軸と母趾基節骨の骨軸が作る角度のことです。『外反母趾診療ガイドライン』では20度以上が外反母趾と定義されています。

外反母趾の重症度と外反母趾角の関係は次の通りです。

  • 軽度:20度以上30度未満
  • 中等度:30度以上40度未満
  • 重度:40度以上

痛みの程度は個人差があるため重症度に関係しないこともあります。重症度は治療方針の検討に利用され、例えば軽度から中等度では痛みの軽減に一定の効果があるとされる装具療法や運動療法などが検討されます。また、手術療法には多くの種類があり、どれを行うか決める際にはこの重症度を含めて検討されます。

5. セルフチェック方法:母趾の角度でチェックする

自分の足をみて外反母趾なのか気になる人もいるかもしれません。自分で角度を調べて外反母趾かどうか簡単にチェックをすることもできます。外反母趾は母趾がどの程度曲がっているかによって診断されます。外反母趾角は第一中足骨と第一基節骨が作る角度です。

セルフチェックをする時は、まず立った状態で紙の上に足を乗せてください。。次に、かかとの内側と母趾の付け根を結ぶラインと、母趾のラインを引きます。この2つの線が作る角度が簡易的な外反母趾角です。この角度はX線写真から計算するもより大きい角度になることが多いですが、参考にはなります。

この角度の正常値は15度以下で、15度以上ある場合には外反母趾の可能性があります。変形が強い場合、痛みや痺れなどの症状がある場合には整形外科への受診を検討してみてください。

6. 外反母趾に似ている病気

外反母趾と同じような症状が出る他の病気があります。具体的には次の病気です。

自分では正確な診断は難しいため、足の痛みや変形が気になった人は医療機関へ受診をしてみてください。

それぞれについて簡単に説明します。

関節リウマチ

関節リウマチ免疫機能の異常により全身の関節などが攻撃される病気です。全身の関節に痛みや腫れなどを起こします。足では母趾の根元の関節(MTP関節)や第2、3趾の間に腫瘤(こぶ)ができることがあります。病状が進行すると単純X線検査で骨破壊が見られることがありますが、早期でははっきりしないことが多いです。そのため、血液検査などで関節リウマチに関連した値が増加していないかなども判断の目安にします。

強剛母趾

強剛母趾は母趾のMTP関節の変形性関節症です。変形性関節症は機械的な刺激によって軟骨がすり減って起きる変形で、関節周囲を取り囲む滑膜に炎症が起こったり、関節の動かせる範囲が狭くなったりします。特に指を反らせる方向に動きにくくなり、足を強く蹴りだす動作などで赤み、腫れ、熱感、痛みが起こります。単純X線画像で軟骨のすり減りやMTP関節の骨と骨の間が狭くなっていることが確認できます。また、骨棘という骨の出っ張りがみられることがあります。

痛風性関節炎

痛風性関節炎は痛風に伴って起こる関節炎で、痛風発作の7割が母趾のMTP関節に起こります。男性に多く、発作的な激痛が起こり、関節の赤み、腫れ、熱感などを伴います。発作が起きると、24時間以内に動けないほど強い痛みになることがあります。病状が進行すると関節の変形が起きたり、痛風結節とよばれる皮膚のしこりができることがあります。痛風は血液中の尿酸が多いと起こりやすい病気ですが、発作中の尿酸値は正常なことも多く参考にならないことも多くあります。痛風の検査についてはこちらを参考にしてください。

【参考文献】

『外反母趾診療ガイドライン』