そくていきんまくえん
足底筋膜炎
足の裏の筋肉(足底筋)が、かかとの骨にくっつく部分で細かな断裂を起こした状態
2人の医師がチェック 39回の改訂 最終更新: 2022.03.11

足底筋膜炎とは

足底筋膜炎は足の裏の足底筋膜に炎症が起こり主にかかとのあたりが痛む状態です。スポーツをする人や、長時間の立ち仕事をする人、肥満の人によくみられます。足に痛みがある人のうち11-15%が足底筋膜炎とも言われ、朝起きた直後の一歩目の痛みが特徴的です。ここでは主に足底筋膜炎の成り立ちと、症状、原因、検査、治療について説明します。

1. 足底筋膜炎とは

足底筋膜炎とは足底筋膜に炎症を起こした状態です。足底筋膜はかかとから足の指の付け根までの足裏全体に広がっています。足底筋膜がかかとの骨に付着する部分に強い負荷がかかって損傷したり変性したりすることが原因と考えられています。足底筋膜に強い負荷がかかる動きは、長時間の歩行や走行、繰り返しのジャンプなどです。これらの動きで足底筋膜が繰り返し引っ張られたり、圧迫されたりすると損傷や変性が起こるとされています。

負担をかけるような運動や長時間の立ち仕事などを減らすと足底筋膜への負荷が減って改善しますが、すぐに良くなるわけではなく、数ヶ月から1年程度は症状が続くこともあります。

足底筋膜のある場所:かかとから足の指にひろがる筋膜

足底筋膜とはその名前の通り、足の裏(底)にある筋膜です。足の裏の真ん中を縦に通る分厚い足底腱膜(そくていけんまく)とその両側にある薄い膜の部分をあわせたものです。足底筋膜はかかとの骨の少し内側の部分から、土踏まずを通って、足の指のあたりまで広がっています。

筋肉ではなく筋膜なので、筋肉のように収縮する機能はありません。かかとの骨との付着部分には血管や神経がたくさんあります。これらが損傷したり変性したりすることで痛みが起こります。

かかとの骨の周りには脂肪体と呼ばれる脂肪の組織があり、かかとの骨に直接強い衝撃が加わらないようにクッションの役目を果たしています。

足底筋膜の働き

足底筋膜の働きは次の通りです。

  • 足の裏の衝撃を吸収する
  • 足のアーチ(土踏まず)を維持する

足底筋膜は歩行時などに受ける足の裏の衝撃を吸収する働きがあります。衝撃を吸収して血管や神経、筋肉を保護しています。また足を蹴り出す時に足底筋膜に緊張がかかることで足のアーチを維持し、蹴り出しやすくする働きをしています。

足のアーチについて説明します。体重をかけずに足を下についた時には、通常、足裏の中央の部分が地面から浮いている状態になります。このような足の形状を足のアーチと呼びます。

このアーチがあることで足が受ける衝撃が吸収され、安定性のある歩行ができます。アーチが崩れると足が疲れやすくなったり、扁平足や足底筋膜炎などが起こったりするとも考えられています。アーチが崩れる原因には、足に合わない靴の使用、長時間の立ち仕事、硬い地面の歩行などの他、肥満や加齢などがあります。

2. 足底筋膜炎の症状

足底筋膜炎に多い症状は次のようなものです。

  • 歩き始めの一歩目にかかとが痛む
  • 一歩目の痛みは徐々に改善するが、長時間歩いていると痛みが悪化する
  • 足裏のかかとの内側部分を押すと痛い

足底筋膜炎に特徴的なのは一歩目の痛みです。歩いているうちに痛みは徐々によくなってきますが、歩行が長時間に及ぶと、再びかかとの痛みが悪化します。見た目の赤みや腫れなどはありません。足底筋膜炎の症状の詳しい説明は「足底筋膜炎の症状」にありますので参考にしてください。

3. 足底筋膜炎の原因

足底筋膜炎は足底筋膜に負担がかかることによって起こります。歩行やランニングなどで繰り返し引き伸ばされたり、足底筋膜がかかとの骨と付着する部分に大きな衝撃が加わったりすることなどが原因になります。

足底筋膜炎を引き起こしやすい要因には次のようなものがあります。

  • 加齢
  • 足の骨格の問題:扁平足、凹足
  • 肥満BMI>30)
  • スポーツ・運動
  • 長時間の立ち仕事
  • 不適切な靴

年齢に伴って足裏やふくらはぎの筋肉が弱くなると、足のアーチを支えにくくなり足裏への衝撃が強くなって足底筋膜炎が起こります。扁平足や凹足、肥満も足裏への衝撃が強くなることで足底筋膜炎を引き起こします。

繰り返し足底筋膜が繰り返し引き延ばされたり、かかとに強い衝撃が加わったりするスポーツも要因になります。例えば、ランニングやマラソン、バスケットボールなどがこれに該当します。また、長時間の立ち仕事や、足に合わない靴も原因になります。詳しい説明は「足底筋膜炎の原因」にありますので参考にしてください。

4. 足底筋膜炎の検査

足底筋膜炎を診断するための検査は次のようなものです。

  • 問診
  • 身体診察
    • 視診
    • 触診
  • 画像検査
    • 単純X線検査
    • 超音波検査
    • MRI検査

はじめに問診が行われ、次に身体診察が行われます。画像検査は、問診や身体診察では痛みの原因がはっきりしない場合などに、必要に応じて追加されます。

問診では自分の症状を伝えることがもっとも重要です。足底筋膜炎では、朝起きた後の一歩目が痛いといった、典型的な足の痛みがあることが多いです。診察では視診でかかとの部分の腫れや赤みなどがないかを確認します。また、かかとの前の方や土踏まずの後ろの方を押した時に、痛みがあるかどうかを確認します。足底筋膜に沿って押されると痛みが起こることもあります。

問診と診察のみで診断が行われることも多いですが、同じような症状を起こす他の足の病気が考えられる場合、原因をはっきりさせるために画像検査が行われることがあります。単純X線検査がよく行われますが、これだけでは診断はつきません。超音波検査やMRI検査などの結果と合わせて判断されます。

足底筋膜炎の詳しい検査は「足底筋膜炎の検査」にありますので参考にしてください。

5. 足底筋膜炎の治療

足底筋膜炎の治療は、原因となる日常生活や運動方法の見直しが中心です。次のような治療を行います。

  • 日常生活や運動方法の見直し
    • 安静
    • 体重コントロール
    • アイシング
    • 靴の見直し
    • 運動方法の見直し
  • 薬物治療
  • 装具療法
    • インソール(中敷き)
    • サポーター
    • Night Splints(就寝中の装具)
    • テーピング
  • 理学療法
    • マッサージ
    • ストレッチ
    • 運動
  • 局所注射療法(局所注入療法)
  • 体外衝撃波治療
  • 手術療法
    • 足底筋膜切離術
    • 腓腹筋退縮術

足底筋膜炎の治療の中心となるのは日常生活や運動方法の見直しです。足底筋膜に負担をかけるような生活や運動を避けて、足を休ませることで症状が改善します。痛みが強い場合には一時的に痛み止めを使用することもあります。

また、足のアーチを維持したり、かかとへの衝撃を和らげるためにインソールなどの装具を使うのも効果的です。ストレッチやマッサージで痛みを緩和できることもあります。

これらの保存的な治療で改善しない場合には、炎症のあるかかとの部分に薬を注射する局所注射療法(局所注入療法)や、体の外から衝撃波をあてる体外衝撃波治療、手術治療が検討されます。

足底筋膜炎では、治療を始めてすぐに症状がよくなるわけではありません。改善には数ヶ月から1年以上かかることがありますので、根気よく治療を継続する必要があります。

詳しくは「足底筋膜炎の治療」にありますので参考にしてください。

6. 足底筋膜炎の人が気をつけるべきこと

足底筋膜炎は、いったん改善しても再度悪化することがあります。治療で見直した生活習慣を継続することが、悪化や再発の予防になります。

予防するために気をつけることや、靴の選び方、治療期間などについて、「足底筋膜炎の人が気をつけるべきこと」に詳しく書いてありますので、参考にしてください。