上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の基礎知識
POINT 上腕骨外側上顆炎(テニス肘)とは
肘の使いすぎによって肘関節に痛みと炎症が生じた状態です。テニスによって起こることが多いので、「テニス肘」と呼ばれることもあり、初心者や高年齢層に多いとされています。テニス以外では料理や大工など手を酷使しがちな人々にも多く見られます。肘の外側の痛み、ものを持ち上げたりタオルを絞る際に痛みが強くなることが特徴です。ほとんどの場合、安静にしていることで症状が治まりますが、症状が強い場合や長引く場合には他の病気の可能性を考えて、レントゲン検査やCT検査、MRI検査が行われることもあります。上腕骨外側上顆炎(テニス肘)が心配な人は整形外科で相談してください。
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)について
- 肘の使い過ぎによって肘関節に痛みと
炎症 が生じた状態- 中年以降のテニス愛好家で多いためテニス肘と呼ばれる
- 手首を動かす筋肉の付着部である肘に負担がかかり、痛みが発生するとされる
- 主な原因はテニスのバックハンドストロークのしすぎ(ラケットを持つ手の側とは反対側に来た球を打つ際のラケットの振り方)
有病率 は全人口の1.3~2.8%- テニスによって起こるのは初心者や中高年齢層が多い
- 日常生活によって起こるのは30~50才代で女性に多い
- 料理人や大工などの手をよく使う労働者や主婦にも多く見られる
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の症状
- 手首をのばす動きで肘の外側の痛み
- 肘の外側に圧痛がある
- ものを持ち上げたり、タオルをしぼる際に肘の外側から前腕にかけて痛みが出ることが特徴的
- 多くの場合、安静時の痛みはない
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の検査・診断
問診 と診察から診断されるレントゲン 、CT :骨折など、他の病気でないことを確認するために行われることがあるMRI :他の検査では診断が確定できない場合に行われることがある
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の治療法
- 主な治療
- スポーツや手をよく使う作業をひかえる
- 湿布や
外用薬 を使用する - 手首や指のストレッチをこまめに行う
- 筋力トレーニングなどのリハビリを行う
- 痛みが強い場合
- 肘の外側に局所麻酔薬と
ステロイド の注射をする - テニス肘用のバンドを装着する
- 肘の外側に局所麻酔薬と
- 予防、再発予防方法
- 肘に優しい、自分の筋力に見合ったテニスラケットを選択する
- フォーム(打ち方)を見直す
- 腕のストレッチング、サポーターの活用、アイシング
- 多くの場合、治療後に症状は改善するが再発する可能性もある
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)に関連する治療薬
非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)(外用薬)
- 炎症や痛みなどを引き起こすプロスタグランジンの生成を抑え、関節炎や筋肉痛などを和らげる薬
- 体内で炎症や痛みなどを引き起こす物質にプロスタグランジン(PG)がある
- PGはシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の働きなどにより生成される
- 本剤はCOXを阻害しPG生成を抑えることで、炎症や痛みなどを抑える作用をあらわす
- 薬剤によって貼付剤(貼り薬)、塗布剤(塗り薬)など様々な剤形(剤型)が存在する
- 製剤によって使用回数や使用方法などが異なるため注意する
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の経過と病院探しのポイント
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)が心配な方
上腕骨外側上顆炎は、肘肩関節に持続的に強い力が加わることで発症します。テニス肘と呼ばれることが多いですが、テニス以外の原因でももちろん発症します。肘の外側(気をつけの姿勢から片手でもう一方の肘をつかんだ時に、親指以外の指が来る側)に痛みがあり、手首をそるように力を入れると痛みが増強するのが特徴です。
ご自身の症状が上腕骨外側上顆炎でないかと心配になった時、まずはお近くの整形外科のクリニックを受診されることをお勧めします。上腕骨外側上顆炎の診断は診察とレントゲンで行います。レントゲンで上腕骨外側上顆炎そのものを診断することはできませんが、よく似た他の病気(骨折や関節ねずみなど)の可能性を除外するために行われます。整形外科のクリニックであれば、総合病院でなくても、ほとんどのところにレントゲンの設備がありますので、クリニックでの診断が可能です。場合によってはMRIが必要となることもありますが、その必要性が高い場合には、それまでの経緯と検査結果をまとめた診療情報提供書(紹介状)をもらって総合病院で検査を受けることになるかもしれません。
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)でお困りの方
上腕骨外側上顆炎の治療で最も大切なのは安静にすることです。重症度にかかわらずスポーツや運動を繰り返していると治癒までの期間が伸びてしまいます。安静にすると同時に炎症を抑えるな薬(内服薬や湿布)やサポーター、ストレッチなどをあわせて行います。
それでも治りが悪いような場合には整形外科のある病院に入院して手術を受けることになりますが、まれです。手術の方法には関節鏡手術(細く小さなカメラが入るような穴を皮膚に開けて行うもの)と、関節鏡ではなく肩にしっかりと切開を入れて行う手術があります。関節鏡の方が傷が小さく術後の回復が早いというメリットがある一方で、狭い中で行わなければならないために手術中の動作に制限があるというデメリットもあります。どちらが良いかは損傷の程度によって変わってきますので、ご自身の考えを伝えた上で主治医からも説明を受け、どちらが良いかを決めていくのが良いでしょう。
手術が不要だった場合には、整形外科のクリニックであれば、特に専門を限らずに定期的な通院での対応が可能な病気です。ある程度の定期的な通院が必要となりますので、何よりも主治医との相性や病院の通いやすさが重要です。医師によって治療方針が大きく変わってくる病気ではありませんので、信頼できて、日常生活の悩みをしっかり相談できる主治医を見つけることがとても大切です。