じかせんしゅよう
耳下腺腫瘍
耳下腺(耳の前から下に存在する唾液腺)から発生する腫瘍の総称
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最終更新: 2020.02.09
耳下腺腫瘍の基礎知識
POINT 耳下腺腫瘍とは
耳下腺は耳の下あたりにある唾液を作る臓器で、耳下腺にできた腫瘍が耳下腺腫瘍です。8割が良性腫瘍で、多形腺腫とワルチン腫瘍が大半です。悪性腫瘍(耳下腺がん)は組織型により悪性度が異なります。症状は耳の前や下のしこりです。耳下腺がんでは急激に大きくなったり、痛みがでたり、腫瘍がある方の顔の動きが悪くなることがあります。診断はMRI検査や超音波検査と、腫瘍に針をさして細胞をとり顕微鏡でみる検査(穿刺吸引細胞診)を行います。治療は手術での摘出が基本となりますが、ワルチン腫瘍の場合は手術を行わないこともあります。手術では顔面神経麻痺が最大の合併症になります。耳の下の腫れの原因は種々ありますので、まずは耳鼻科のクリニックに受診し、必要に応じて大きな病院を紹介してもらいましょう。
耳下腺腫瘍について
- 耳下腺に発生する
腫瘍 の総称- 耳下腺は耳の前から下に存在する唾液腺
- サラサラした唾液を作って口の中に分泌している
- 唾液腺腫瘍のうち、耳下腺腫瘍が8割
- 10万人あたり1-3人の
発症 率良性腫瘍 が多く、75-90%を占める- 良性腫瘍では、多形腺腫とワルチン腫瘍が多い
悪性腫瘍 (耳下腺がん )では多数の種類がある- 耳下腺がんは、低
悪性度 、中悪性度、高悪性度に分けられて、生存率が異なる
- 耳下腺の中を
顔面神経 が貫いている- 顔面神経が耳下腺の浅い部分(浅葉:せんよう)と深い部分(深葉:しんよう)を分ける
- 手術の際には、顔面神経を温存できるかが重要となる
耳下腺腫瘍の症状
- 耳前部や耳下部が腫れる
良性腫瘍 の場合は、耳下腺の腫れ以外の症状がないことが多い- 通常は片側だが、ワルチン
腫瘍 は両側にできることがある
悪性腫瘍 を疑う特徴的な3症状- 痛み
- 急激な増大
- 顔面神経麻痺
耳下腺腫瘍の検査・診断
問診 - 腫れた時期、しこりの大きさの変化、痛みの有無などを確認
- 視診、触診
- 顔面神経麻痺の有無を確認
- 耳下腺腫瘍の硬さや位置、首の
リンパ節 の腫れがないかを確認
超音波検査 腫瘍 のある位置や、腫瘍の様子、血流などを調べる
MRI 検査- 腫瘍の位置や広がり、内部の様子を調べるのに重要な検査
CT 検査- 耳下腺の腫れが、腫瘍か感染なのかを調べる
- 周囲のリンパ節が腫れているかどうか調べる
穿刺 吸引細胞診 - 耳下腺の腫瘍に針を刺して、細胞を取り、顕微鏡で詳しく見る検査
良性腫瘍 なのか悪性腫瘍 なのかを判断する- 腫瘍の種類が推定できる
耳下腺腫瘍の治療法
手術で耳下腺腫瘍を摘出するのが基本
良性腫瘍 のうち、多型腺腫はがん 化するため、良性 であっても摘出する- 多型腺腫では
腫瘍 の膜が破れると、再発を起こすので腫瘍の周りに正常な耳下腺をつけて摘出する
- 多型腺腫では
- ワルチン腫瘍のがん化は極めて稀であり、手術をしないで経過を見ることが多い
- 良性腫瘍では、腫瘍のある位置で手術方法を決定する
- 耳下腺浅葉摘出術:
顔面神経 より浅い部分にある腫瘍に対する手術 - 耳下腺深葉摘出術:顔面神経より深い部分にある腫瘍に対する手術
- 耳下腺全摘術:耳下腺を全て摘出する
- 耳下腺深葉摘出術、耳下腺全摘術では顔面神経を損傷するリスクが高い
- 耳下腺浅葉摘出術:
耳下腺がんの治療
- 腫瘍の
悪性度 と進行度で手術方法を決定する - 悪性度の高い腫瘍の場合は顔面神経も切断する
- 顔面神経切断後は顔面神経の再建することもある
- 筋膜を移植して変形を矯正する方法と、神経や筋肉を移植して表情を作る方法がある
- 術後の病理診断によって、
放射線治療 や化学療法 を追加で行う
- 腫瘍の
手術の
合併症 - 顔面神経麻痺
- 顔面神経を切断しない場合でも、一時的な
麻痺 が起こることがある - 一時的な麻痺では半年程度の経過で改善する
- 切断した場合は神経再建などを検討する
- 顔面神経を切断しない場合でも、一時的な
- Frey症候群
- 耳下腺内の顔面神経の一部が皮膚に分布することで起こる
- 食事の時に耳下腺摘出部の皮膚が赤くなったり、汗をかいたりする
- 唾液ろう
- 耳下腺内の唾液を輸送する管が皮膚に分布することで起こる
- 顔面神経麻痺