ごえんせいはいえん
誤嚥性肺炎
食べ物を飲み込む際や、気づかないうちなどに、唾液や胃液、食物とともに細菌が気管に入り込むことで生じる肺炎
11人の医師がチェック 136回の改訂 最終更新: 2023.09.19

誤嚥性肺炎の基礎知識

POINT 誤嚥性肺炎とは

誤嚥性肺炎は飲み込みが悪いため、誤って肺の方に食べ物やつばなどが落ちてしまった後に起こる肺炎です。高齢者や脳梗塞の後に起こりやすいです。主な症状は、咳・たん・発熱・呼吸困難・意識もうろうなどです。寝たきりの人などでは症状がはっきりしないこともあります。症状の出た経過を参考にして、画像(胸部レントゲン、胸部CT)検査や血液検査、細菌検査などを用いて診断されます。治療では抗菌薬を用いますが、重症の人には酸素吸入や人工呼吸器が必要になることもあります。誤嚥性肺炎が心配な人や治療したい人は、一般内科や呼吸器内科、感染症内科などを受診して下さい。

誤嚥性肺炎について

  • 食べ物を飲み込む際や、気づかないうちなどに、唾液や胃液とともに細菌が気道に入り込むことで生じる肺の炎症
  • 主な原因
    • 明らかにむせこむ様子などのないまま、いつのまにか唾液が気管に入り込んでしまう形式の誤嚥(不顕性誤嚥
    • 食べたものを飲み込むときの誤嚥
    • 胃から逆流してきたものの誤嚥
  • 高齢者の肺炎の多くが誤嚥に関係している
  • 再発を繰り返す特徴があるため、抗菌薬が効きにくくなることがある
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誤嚥性肺炎の症状

  • 誤嚥性肺炎でよく見られる症状
    • 発熱
    • なんとなく元気がない
    • 体のだるさ
    • 重症化すると、酸素不足によって呼吸が苦しくなる
  • 誤嚥性肺炎に先立って起こりやすい症状
    • 食事中のむせこみ
    • 常に喉がゴロゴロ鳴っている
    • 唾液が飲み込みづらい
症状の詳細

誤嚥性肺炎の検査・診断

  • 胸部レントゲンX線写真)検査:肺の炎症の有無や程度を調べる
  • 胸部CT検査:肺の炎症の有無や程度、正確な部位を調べる
    • 肺の下側、背中側に炎症が起きることが典型的
  • 血液検査:炎症の程度や全身の状態を調べる
  • 細菌検査:痰や血液中の菌を検出して、適切な抗菌薬を使えるようにする
  • 嚥下機能検査
    • 飲水テスト
    • 嚥下内視鏡
    • 嚥下造影検査 など
検査・診断の詳細

誤嚥性肺炎の治療法

  • 病原体に合わせた抗菌薬で治療する
  • 咳をして自分で痰を上手く出せない場合、痰を吸引することが必要
    • チューブを気管にいれて吸引するだけでなく、重症の場合には必要に応じて気管支鏡での吸引も行うことがある
  • 呼吸不全が進行した場合は、人工呼吸器を用いることがある
  • 治療をしながら、並行した呼吸や体全体のリハビリがとても重要になる
  • 嚥下が適切に行えない場合には胃ろう(おなかの外から胃に穴をあけ、管で栄養を補給する処置)を作ることもある
    • ただし、社会的問題、倫理的問題など、本人や家族のために考慮すべきことが多く、「このような場合には胃ろうを作るべき」と医学的に一律に決めてしまうことはできない
    • 胃ろうを造っても誤嚥性肺炎を再発する可能性は減らないとされている
  • 予防のためにできること
    • 飲食時の意識付け
    • 誤嚥予防のための体位保持
      • 食後すぐに横にならず、2時間程度座位を保つ
    • 口腔ケア
      • 歯磨きなどで口の中の雑菌を減らす
治療法の詳細

誤嚥性肺炎の経過と病院探しのポイント

誤嚥性肺炎が心配な方

誤嚥性肺炎では、発熱、咳、痰などの症状が出ます。誤嚥とは、本来食道から胃に入るべきものが、気管から肺へ入ってしまうことです。胃は胃酸で守られているため細菌が入っても大丈夫なのですが、肺にはそのような防御機構がないために、細菌が入ってしまうとそこで周囲に炎症を引き起こしてしまうのです。

誤嚥には、食事中にむせこんで周りで見ている人が「誤嚥だ」と気がつけるものと、寝ている間などに唾液が肺に流れ込んで、咳き込むこともなくいつの間にか細菌が肺へ入り込んでしまうようなものがあります。後者の場合には本人も周囲も誤嚥を認識できないため、病院で検査を受けてはじめて誤嚥性肺炎だと診断がつくことも多いです。

誤嚥性肺炎を含む肺炎は日本人の死因の第3位を占めており、高齢の方が高熱を出して息が苦しそう(呼吸数が増える、肩で息をするなど)な時にまず考える病気です。

心当たりがある場合には、まず内科のかかりつけの病院を受診することをお勧めします。いつも診てくれている医師がいるのであれば普段の様子と比較してもらうためにそちらを受診するのが良いでしょう。症状だけからは風邪なのか肺炎なのか他の病気なのかを判断することは困難です。胸の聴診やレントゲンを用いて肺炎の診断を行った上で、もし肺炎であったとしたら、通院で治療するか入院が必要かを判断することとなります。普段からかかっている病院がない場合には、内科のクリニック、または呼吸器内科のクリニックが良いでしょう。肺炎の原因が誤嚥かどうかは最後まで判断がつかないこともあります。

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誤嚥性肺炎でお困りの方

誤嚥性肺炎は、感染症とは言っても人から人へ伝染するようなものではありません。しかし、嚥下力(ものを飲み込むのどの力)が低下しているご高齢の方では、肺炎が治ってもまた次の誤嚥性肺炎と、繰り返してしまうことが多いです。

誤嚥性肺炎については診断がつき次第その場で治療が開始されますし、治療の方法にもバリエーションが少ないため、どこでどのような治療を受けるか迷う余地は少ない病気かもしれません。

肺炎は日本人の死因の第3位です。肺炎になったと聞くと、とても重症な病気にかかってしまったと感じられる方がいるかもしれません。確かに肺炎は重症化し得る病気なのですが、従来元気に暮らしていた人が肺炎になることと、元々心臓や肺の病気、あるいはがんのような病気がある方が肺炎になることの間には違いがあります。免疫力が十分な方と免疫力が低下している方ではかかる細菌の種類にも違いがありますし、同じ種類の細菌だったとしても治療にかかる期間や症状の重さには差が出てきます。

このような事情がありますので、肺炎からどのように治癒するかは病院の設備によって異なるというよりも、原因となる細菌の種類であったり、患者さんに持病があるかどうかといったところで変わってくる側面が大きいです。大学病院など特殊な設備のある病院でなければ治療ができないということはあまりありませんが、そのような必要性が生じた場合にはその時点で元の病院から専門病院へと紹介してくれることでしょう。

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