乳腺線維腺腫は乳房にできる良性腫瘍です。乳がんのような悪性の病気ではなく、命に危険を及ぼすことはありません。このページでは乳腺線維腺腫の概要として症状や検査、治療などを網羅的に説明します。
1. 乳腺線維腺腫とはどんな病気なのか

乳腺線維腺腫は若い女性に多く見られる良性の病気です。乳房の病気としてよく知られた「乳がん」とは違う病気です。乳腺線維腺腫が乳がんに変化することはありません。基本的には、経過観察しても問題がない乳腺線維腺腫ですが、乳がんと紛らわしい場合や整容面で気になる場合には検査や治療が必要になります。
2. 乳腺線維腺腫の症状について
乳腺線維腺腫による主な症状は「胸のしこり」です。乳がんでもよく見られる症状ですが、特徴がやや異なります。
【乳腺線維腺腫によるしこりの特徴】
- 可動性がある
- 周りとの境界がわかりやすい
- 小さくなることがある
可動性とは、しこりを押した時に皮膚の奥で動くような感覚があることです。乳がんによるしこりであれば、可動性がありません。つまり、押してもなかなか動かないことが多いです。一方で、乳腺繊維腺腫のしこりには可動性があります。また周りの組織との境目がわかりやすいことや、小さくなることがあるのも乳腺線維腺腫の特徴です。 しこりの特徴に違いがあるとはいえ、正確に区別するには専門的な知識をもつお医者さんによる診察や検査が必要なので、自己判断するべきではありません(診察や検査については後述します)。
3. 乳腺線維腺腫の原因について
経口避妊薬の内服や妊娠、閉経などの影響で乳腺線維腺腫が大きくなったり小さくなったりすることがあります。これらの現象から、女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)のバランスが乳腺線維腺腫の発生に関係していると推測されていますが、はっきりとした関係性まではわかっていません。
4. 乳腺線維腺腫の検査について
乳腺線維腺腫の診察や検査の主な目的は乳がんとの区別です。疑われる人には次のような診察や検査が行われます。
【乳腺線維腺腫の診察・検査】
特に重要なのが、画像検査と病理学的検査です。 乳腺線維腺腫と乳がんでは病変を画像化したときの特徴が異なるので、画像検査が区別に役立ちます。ただし、区別しづらい場合があり、最終的な判断のために病理学的検査が必要になることが多いです。病理学的検査とは病変のすべてまたは一部を取り出して、顕微鏡で観察する検査のことです。それぞれの検査についての詳しい説明は「こちらのページ」を参考にしてください。
5. 乳腺線維腺腫の治療について
乳腺線維腺腫は良性の腫瘍です。大きくなっても数センチ程度で、命に影響を及ぼすことはありません。また、自然と小さくなることも知られています。このため、乳腺線維腺腫であれば、基本的には治療をせずに様子をみることになります。 一方で、少ないながらも治療になるケースもあります。例えば、検査をしても悪性腫瘍(乳がんや葉状腫瘍など)と区別がつかない場合や、しこりによる見た目が気になるといった場合です。治療としては、乳房の全部または一部を切り取る手術が行われます。治療を検討する場合は、その必要性や効果、副作用について、お医者さんとよく相談するようにしてください。
6. 乳腺線維腺腫で知っておきたいこと
乳房の病気と聞くと「乳がん」を思い浮かべる人が多いと思います。乳がんは女性のがんで最も多く、注意が必要な病気なので、胸にしこりを見つけて不安がよぎるのは当たり前のことかと思います。他方、乳腺線維腺腫は悪性の乳がんとは違って良性の病気です。つまり、乳がんのように、命を奪うことはありませんし、乳がんに変化することもありません。基本的には手術が必要なわけでもありません。乳房の症状が乳腺線維腺腫によるものだと明らかになれば、恐れる必要はなくなります。 しかしながら、乳がんと乳腺線維腫の区別は簡単にできるものではありません。専門的な知識をもつ医師が診察や検査を駆使して総合的に判断するものです。ですので、もし乳腺線維腺腫のようなしこりを見つけた場合は、自己判断するのではなく、すみやかに医師の診察を受けてください。
なお、このページでは乳腺線維腺腫について網羅的に説明したため、乳がんとの違いなどの疑問については詳しく取り上げてはいません。「こちらのページ」にまとめているので、参考にしてください。
参考文献
・ Michael S Sabel,MD., Overview of benign breast disease. UpToDate
・日本乳癌学会, 「患者さんのための乳癌診療ガイドライン」
・日本乳癌学会, 「乳癌診療ガイドライン」
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