かんのうほう
肝のう胞
肝臓の中に液体の溜まった袋(のう胞)ができる病気。悪性化することはなく、基本的に治療の必要性もない
5人の医師がチェック 110回の改訂 最終更新: 2022.09.22

肝のう胞の検査について:腹部エコー検査、腹部CT・MRI検査など

肝のう胞があっても症状が現れる人はほとんどいません。このため、症状をきっかけに肝のう胞がみつかることはまれで、健康診断の超音波検査などで思いがけずみつかる人がほとんどです。このページでは、肝のう胞の検査について説明をします。

1. 肝のう胞の血液検査について

肝のう胞があっても、ほとんどの人では血液検査は異常な値になりません。しかし、肝のう胞が「感染」、「出血」、「がん化」していると、下記の検査値が異常になることがあります。

血算:白血球数、赤血球数、ヘモグロビン濃度など

血算は白血球赤血球の数、成分の割合などを測定する検査です。肝のう胞に感染が起きた人では、白血球数が基準値よりも多かったり少なかったりすることがあります。また、出血して貧血になると、赤血球数やヘモグロビン濃度が低値になります。

肝機能検査:AST、ALT、γGT、ALP、総ビリルビンなど

肝機能検査(AST、ALT、γGT、ALP、総ビリルビンなど)は、肝臓の細胞が破壊されたり肝臓で作られる胆汁の流れが悪くなると、高値になります。このため、肝のう胞に感染が起きた人や、肝のう胞ががん化した人では高い値となることがあります。

腫瘍マーカー:CEA、CA-19-9など(がんがあると上昇する値)

腫瘍マーカーとは、腫瘍があると増えるタンパク質の量を測定する検査です。腫瘍マーカーが上昇したからといって必ずしもがんがあることを示すわけではありませんが、がんの発見に役立つ場合があります。悪性化した肝のう胞では、CEAやCA19−9などの腫瘍マーカーの値が異常に上がることがあります。

血液培養検査

血液培養検査とは、血液中の細菌を特定する検査です。健常な人の血液には細菌はいませんが、感染性肝のう胞の人の血液には、細菌が繁殖していることも多く、血液培養検査が有用です。

エキノコックス抗体

エキノコックス抗体は、エキノコックスに感染していると陽性になる血液検査です。保険適用はありませんが、エキノコックスの流行地である北海道では、自治体の助成制度があります。

2. 肝のう胞の画像検査について

肝のう胞は症状を生じないことが多いので、健康診断や他の病気を診断し治療するための画像検査で見つかることがほとんどです。肝のう胞を検査する画像検査にはどのようなものがあるのかを解説します。

腹部超音波検査(腹部エコー検査)

超音波とは人間には聞こえない高い音のことです。超音波を発生するプローブとよばれる機械をお腹に押し当てて検査をします。臓器まで到達し跳ね返ってきた超音波の量を測定することで、臓器の形を白黒の画像として見ることができます。超音波検査では副作用の心配はありません。

超音波検査で見た肝のう胞に下記のような特徴がある場合は、無害な肝のう胞であると考えられるので、追加の検査は不要なことが多いです。

  • 色合いが均一である
  • 輪郭のゆがみが少ない
  • 他の臓器を圧迫していない

一方で、内部の色合いにむらがあったり、いびつな形をしている肝のう胞は、感染や出血、悪性腫瘍が疑われるため、他の検査を追加することがあります。

腹部CT・MRI検査

腹部CT検査では放射線を、MRI検査では磁力を利用して身体の断面を映します。腹部超音波検査と併せて行うと、より正確に肝のう胞の状態を把握できます。

CT検査やMRI検査を行う際に造影剤を注射すると、がんと他の病気を見分けやすくなります。造影剤は、気管支喘息、ヨードアレルギー体質の人、褐色細胞腫の人や腎機能が悪い人などでは合併症が出やすくなるため、使えないことがあります。

参考文献

・宮里賢, 他. : 当院で経験した感染性肝嚢胞23例の検討. 肝臓. 60(4)117-126(2019)