ふくあつせいにょうしっきん
腹圧性尿失禁
おなかに力が入ったことで、尿が漏れしてしまう状態
7人の医師がチェック 114回の改訂 最終更新: 2022.02.09

腹圧性尿失禁で知っておくとよいこと:受診すべき診療科など

「尿もれ」は人に相談しにくいものです。読者の中には、誰にも相談できず、インターネットで検索している人が少なくなからずいるのではないでしょうか。ここでは、尿もれの中でもお腹に力が入った拍子に漏れやすい腹圧性尿失禁について、知っておくとよいことや、意外と知られていないことについて説明してきます。

1. 腹圧性尿失禁は治る病気なのか

腹圧性尿失禁には有効な治療法がいくつかあり、上手に治療を進めると症状が気にならない程度まで改善する人がいます。一方で、治療をしても症状が満足いくほど改善しない人もいて、尿もれを気にして、外出などを控える人も少なくありません。

しかしながら、十分に治らない人でも、対策をとることで残った症状と上手に付き合うことができます。お勧めの対策は尿取りパッド(尿もれ用パンツ)の活用です。今はさまざまなタイプのものが市販されていますので、自分に合ったものが見つかると思います。心配であれば最初は自宅で使ってみて、慣れたら徐々に活動の範囲を広げてみるのも良いかもしれません。生活を制限するというよりは、症状がある中でうまく過ごす方法を探してみてください。

2. 腹圧性尿失禁の治療がしたい人はどんな病院の何科を受診するべきか

腹圧性尿失禁の治療を考えた場合、何科を受診したらいいか迷うこともあると思います。また、クリニックを受診するべきか大きな病院を受診するべきかでも悩むかもしれません。

受診すべき診療科はどこか

排尿を専門的にあつかう診療科は泌尿器科です。泌尿器科であれば検査から治療まで一貫して行なうことができます。しかしながら、女性の場合、男性患者が多く集う泌尿器科に足を運びにくいという声が少なくありません。その場合は、まず婦人科で相談してみてもよいです。子宮脱、膣脱といった女性器疾患が腹圧性尿失禁と同時に見られることもあり、最初の窓口として問題ありません。

どんな病院がよいのか

腹圧性尿失禁が心配な人は泌尿器科もしくは婦人科で相談することを説明しましたが、受診する医療機関の規模感でも迷いが生じるかもしれません。クリニックがよいのか大きな病院がよいのか、その判断は難しいものです。 結論から述べるとどちらでもよいです。軽度な腹圧性尿失禁であれば、薬物療法や骨盤底筋運動で治療ができ、それらは大きな病院でなくても受けることができます。一方で、手術や専門的な検査は腹圧性尿失禁の診療に長けた大きな病院でしか受けられないこともあります。そうなると、「始めから大きな病院に行った方がよいのでは?」と考えるかもしれませんが、クリニックから紹介してもらえるので、必ず大きな病院にかからなければならないことはありません。もちろん、他の持病で大きな病院にかかっている人や、どうしても大きな病院で最初から見てほしいという人は、始めから大きな病院を受診してもなんら問題はありません。

3. 腹圧性尿失禁の症状緩和に減量(ダイエット)が有効である

肥満は腹圧性尿失禁の要因の1つとして考えられており、減量が症状の緩和に有効とされます。医療機関で受けられる治療として、薬物療法や骨盤底筋運動(リハビリテーション)、手術といった方法がありますが、減量と組み合わせるとより効果的です。 肥満かどうかはBMIという数値を用いて判断されます。自分のBMIを知るために、以下の式に身長と体重を当てはめてみてください。

【BMIの算出式】

  • BMI(kg/m2)=体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)

*身長は馴染みのあるcm(センチメートル)ではなく、m(メートル)です

BMIが25以上の人が肥満と判断されます(なお標準とされるBMIは男女とも22です)。計算の結果、BMIが25以上であった人には、腹圧性尿失禁の症状改善のためにも減量をお勧めします。 減量ではエネルギー摂取量(食事)と消費量のバランスを改善する必要があります。もう少し詳しく言うと、食事療法と運動療法により、消費カロリーが摂取カロリーを上回るように調整します。 しかしながら、食事療法や運動療法を効率よく行うのは簡単ではありません。もちろん、自力で減量に成功する人も中にはいますが、上手く進まない人は少なくはありません。適切な摂取カロリーを算出し、その上でバランスがとれた食事を続けるには専門的な知識が必要ですし、運動の習慣はなかなかつくものではありません。 そこで、なかなか体重が落ちずに悩んでいる人には、肥満外来や職場での保健指導などで減量のアドバイスを受けることをお勧めします。専門家の立場から食事や運動について詳しく教えてくれるので、減量の効率が上がるでしょう。なお、肥満外来については「こちらのページ」から調べることができるので、医療機関探しの参考にしてください。

参考

泌尿器科領域の治療標準化に関する研究班, EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン, じほう, 2004

厚生労働省:e-net 肥満と健康