腹圧性尿失禁の治療について:薬物療法、骨盤底筋運動、手術など
腹圧性尿失禁の治療は程度によって異なります。軽症であれば薬物療法や骨盤底筋運動によって改善が望めますが、症状が重い人には手術が必要になります。このページではそれぞれの治療内容について詳しくみていきます。
1. 薬物療法
尿道(膀胱から尿を身体の外に出す管)には外尿道括約筋という筋肉があり、尿が漏れるのを防ぐ働きがあります。この筋肉が衰えると、お腹に力を入れた影響で尿もれが起こってしまいます。外尿道括約筋の力を増強すると考えられている薬としてβ
2. 骨盤底筋運動:リハビリテーション
骨盤底筋とは膀胱や直腸、膣、子宮といった骨盤の中にある臓器を支える筋肉のことです。骨盤底筋には骨盤内の臓器が重力にしたがって垂れ下がるのを防ぐ役割があります。また、排尿機能にも関わっていると考えられていて、骨盤底筋を鍛えると尿道を引き締める力が高まり、尿もれの予防効果が期待できます。 訓練の具体的な方法ですが、簡単にできる一例としては、尿道や肛門、膣に力を緩めたり締めたりを繰り返すものがあります。座った状態でも立った状態でもどちらでもよいです。リハビリテーションとして行なうこともあり、専門的な知識をもつ
3. 電気・磁気刺激療法
電気や磁気で骨盤底筋や神経を刺激する治療法です。筋力や神経活動を強化する働きがあり、腹圧がかかった際の尿もれを少なくすることが期待できます。電気や磁気による刺激は身体の表面から伝える方法を使うことが多いので、身体の中に器具を入れる必要はほとんどありません。
4. 手術:尿道スリング手術(TVT手術、TOT手術)
薬物療法や骨盤底筋運動を行っても症状に改善がない人には手術が検討されます。手術の方法はいくつかありますが、現在主流で行われている方法は「尿道スリング手術(TVT手術またはTOT手術)」と呼ばれるものです。具体的には膣の壁を小さく切開し、尿道を支えるテープを挿入します。腹圧性尿失禁の原因は尿道周囲の筋肉の衰えが主な原因なのですが、手術で挿入されるテープにはこの筋肉の力を補う効果があると考えられています。 手術ときくとお腹を切ることを想像するかもしれませんが、尿道スリング手術ではお腹を切る必要はありません。手術時間は短く30分から1時間程度で、入院期間は数日と身体への負担は比較的小さいと言えます。
このページでは主な治療方法について説明しましたが、減量も症状緩和の手段してして有効です。「こちらのページ」で説明しているので、参考にしてください。
参考:
泌尿器科領域の治療標準化に関する研究班, EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン, じほう, 2004
Emily S Lukacz, Treatment of urinary incontinence in females. UpToDate (2020.6.4更新版)