腹圧性尿失禁の基礎知識
POINT 腹圧性尿失禁とは
腹圧がかかることで起こる尿失禁です。「せき」や「くしゃみ」のように瞬間的にお腹に圧がかかったときに尿が漏れます。男性より女性に多く、尿道を締める筋肉や骨盤の底の筋肉が衰えることが原因だと考えられています。問診や画像検査で診断します。尿失禁は筋肉を鍛える体操(骨盤底筋体操)や飲み薬などで改善する可能性がありますが、症状が重症な場合は手術も検討されます。腹圧性尿失禁の症状で悩まれている人は泌尿器科や婦人科を受診してみてください。
腹圧性尿失禁について
- お腹に力が入って中の圧力が高くなることで、尿が漏れしてしまうこと
- 病気のメカニズム
- 膀胱(ぼうこう)や尿道の「しまり」が悪くなることが原因
- 尿道を閉じる機構(尿道括約筋(にょうどうかつやくきん)など)がうまく働かない
- 膀胱(ぼうこう)や尿道の「しまり」が悪くなることが原因
- 主な原因
- 尿道を締める筋肉に傷が付く
- 神経に傷が付く
- 膀胱を支える骨盤の筋肉(骨盤底筋(こつばんていきん))が弱くなる
- 骨盤の中にある臓器(子宮など)の手術をしたことがある
- 妊娠や出産
- 子宮脱(子宮の位置の異常)
- 膀胱脱(膀胱の位置の異常)
- 男性より女性に多い
- 女性に発病しやすい理由
- 男性と比べて尿道が短い
- 膀胱をささえる骨盤底筋の筋力が弱い
- 女性に発病しやすい理由
- 精神的な悩みのもとになり、行動を制限してしまうことによって、生活の質を落としてしまうことに繋がることがある
腹圧性尿失禁の症状
- おなかに力を入れたときに尿が漏れる
- 咳やくしゃみをしたとき
- 大笑いをしたとき
- 運動時
- 約30%の人は切迫性尿失禁(急にトイレに行きたくなり、間に合わず漏らしてしまう)を同時に認める
腹圧性尿失禁の検査・診断
- 尿検査
- 尿の状態を調べる
- 膀胱炎などが原因でないことを調べる
- 尿の状態を調べる
腹部超音波検査 - 超音波が出る機械をおなかに当てて中の様子を調べる
- 排尿日誌
- 毎日の排尿記録をつけて、尿失禁の時間や状況を記録する
- パッドテスト
- パッドをつけたあとに運動をしてもらい、尿漏れの程度を調べる
- 鎖
膀胱造影 検査- 膀胱内へ柔らかい鎖を入れておいた状態で膀胱を膨らませて
造影 検査をする
- 膀胱内へ柔らかい鎖を入れておいた状態で膀胱を膨らませて
- 尿流動態検査
- 尿の流れや、勢い、膀胱に残っている尿の量を調べる
腹圧性尿失禁の治療法
- 骨盤底筋運動
- 骨盤底筋運動(腟や肛門を締めたり緩めたりする運動)
- 薬物療法:膀胱を緩め、かつ尿道を締める働きのある薬を内服
- β刺激薬
- 手術
- 重症な場合に検討する
- 尿道の周りにコラーゲンを入れる治療
- 中部尿道スリング手術
- 尿道を締める機能を補助するようにする手術
- TVT(tension-free vaginal tape)手術
- TOT(transobturator tape)手術
腹圧性尿失禁の経過と病院探しのポイント
腹圧性尿失禁が心配な方
腹圧性尿失禁では、くしゃみや、重いものを持ち上げようとして力んだ時などに尿が漏れてしまうといった症状が出ます。お腹に力が入って失禁してしまうのが腹圧性尿失禁です。腹圧性尿失禁は年齢を重ねるにしたがって起こりやすくなり、病気というよりも、加齢にともなう人体の変化の一つとも考えられます。
このように分かりやすい症状があるので、腹圧性尿失禁は比較的自己診断しやすい病気の一つです。腹圧性尿失禁に悩まされている方は全国で2000万人を超えると推定されており、ご自身に腹圧性尿失禁と思われる症状がある場合、まず一度かかりつけの内科クリニックで相談してみるのが良いでしょう。特に普段かかっている病院がなければ、泌尿器科のクリニックなどに相談してみると専門的な診断や治療が受けられます。
腹圧性尿失禁の診断のためには、はじめに他の種類の尿失禁や病気でないことを確認することが必要です。他に尿失禁を起こす病気は過活動膀胱や膀胱炎などがあります。そのためには普段の排尿状況を詳しく知ることが重要ですので、受診前に1日の尿の回数や、夜間の尿の回数をメモしておくと診断の上で参考になります。
腹圧性尿失禁でお困りの方
腹圧性尿失禁の治療は、薬によるものとそれ以外のものがあります。内服薬もありますが、まずは骨盤底筋群と呼ばれる、膀胱周囲の筋力トレーニングを行います。便を我慢するときのように下腹部から陰部、肛門に力を入れ、そして緩める、といったような運動です。腹圧性尿失禁はもともと筋力の低下が原因ですので、弱った筋肉を鍛えるというのは理にかなった治療法です。
様々な治療をしても症状が改善しない場合には手術治療もあります。こちらについては泌尿器科でご相談されることをお勧めします。
薬以外の治療については、泌尿器科以外では細かな説明や指導にあまり慣れていない医師が多いです。腹圧性尿失禁で治療を受けていながらもまだ症状が残ってしまう方は、ぜひ泌尿器科のかかりつけ医を作られることをお勧めします。