がくかんせつしょう
顎関節症
口を開くときに音が鳴ったり、顎に痛みがあって口が開きにくくなる状態
11人の医師がチェック 91回の改訂 最終更新: 2023.08.21

顎(がく)関節症の症状にはどんなものがあるか?

顎関節症の代表的な症状は、あごが痛い、口が開かない、あごを動かすと音がするという3つです。また、あごの症状のみでなく、一見あごとは全く関係がなさそうな、耳の痛み、耳鳴り、耳が詰まった感覚などの耳の症状を引き起こします。その他にも頭痛、肩こり、めまいなどのさまざまな症状を引き起こします。ここでは顎関節症の代表的なあごの症状と、その他の場所の起こりやすい症状についてみていきます。

1. 顎関節症で起こりやすいあごや口の症状

私たちが顎関節症かもしれないと気づくきっかけになる症状は主に顎や口の症状です。顎関節症であごや口には下記の症状が起こります。

  • あごが痛い
  • 口が開かない
  • あごを動かすと音がする

顎関節症は3つの症状のうち、少なくとも1つの症状が必ずあります。なぜなら、顎関節症の診断基準では上記3つのうち少なくとも1つの症状があることが条件になっているからです。それぞれの症状について説明します。

あごが痛い:顎関節痛

顎関節症(がくかんせつしょう)の症状で最も多いものが、あごの痛み(顎関節痛:がくかんせつつう)です。痛みが出るのは顎関節の周りです。あごの関節は耳の前にあります。耳の真ん中の高さあたりに指をあてて口を開け閉めするとくぼむ部分があごの関節の一部です。顎関節症では、口の開け閉めをする時や、食べ物を噛む時に顎関節のあたりが痛みます。

顎関節症になったばかりの時は顎関節周囲のみの痛みになりますが、徐々にこめかみや頬の痛みも起こります。なぜなら、顎関節症が進行すると顎関節の周りの筋肉がこわばるからです。こわばる主な筋肉は食べ物を噛む時に使う筋肉で、数か所ありますが、まとめて咀嚼筋(そしゃくきん)とも呼ばれています。咀嚼筋のうち痛みを起こしやすいものは、咬筋(こうきん)と側頭筋(そくとうきん)です。咬筋は奥歯を噛みしめると頬で硬く触れる筋肉です。側頭筋は奥歯を噛みしめるとこめかみで硬く触れる筋肉です。顎関節症が悪化すると咬筋や側頭筋にも痛みが広がります。

一方、顎関節症では口の開け閉めをしない時の痛み、顎関節の周りの腫れ、表面の皮膚の赤みや熱などは通常ありません。口の開け閉めをしない時の痛みや腫れがある場合には、流行性耳下腺炎おたふくかぜ)や化性耳下腺炎などの顎関節症以外の病気が疑われます。

口が開かない:開口障害

開口障害とはできるだけ大きく口を開けた時に、上と下の歯の間に指が3本入らない場合です。人差し指、中指、薬指の3本を揃えた幅より口が開かない場合には、開口障害の可能性があります。正確には口が開く幅が30mm以下の場合を開口障害と呼びます。開口障害は、顎関節症で下あごが動きにくい場合や、あごを動かす筋肉がこわばっている場合に起こる症状です。

あごを動かすと音がする:顎関節雑音

あごを動かした時の音を顎関節雑音(がくかんせつざつおん)と呼びます。顎関節雑音には2種類あります。

  • クリック音=「カクッカクッ」という音
  • クレピタス音=「ジャリジャリ」という音

顎関節の音だけで痛くないときは、一般的には詳しい検査や治療は必要ありません。

クリック音は乾いたような「カクッカクッ」という音です。クレピタス音はこすれたような「ジャリジャリ」という音です。顎関節雑音から疑われるのは、顎関節の骨や関節に変化がでてきている状態です。音が大きくなった場合、痛みが出てきた場合、口を開けた時に引っかかる場合には、顎関節症の可能性がありますので、詳しい検査を受けてください。

2. 顎関節症で起こりやすい耳の症状

顎関節は耳に近いため耳の痛み、耳鳴り、耳の詰まった感覚などの耳の症状を多くの人が感じます。耳の症状を起こす仕組みははっきりと解明されていないのですが、顎関節症の治療を行うと耳の症状も改善されることが多く、顎関節症が何らかの影響を及ぼしていると考えられています。

耳が痛い:耳痛

顎関節症では耳の痛みが起こることがあります。顎関節は耳の奥につながる外耳道の下方にあるため、顎関節症では耳が痛くなります。顎関節症の耳痛は大きく口をあけた時や、強く噛んだ時に痛みが強くなる特徴があります。その他にも、耳の前方の顎関節を触れる部分を押すと痛みが出ることもあります。日中に歯の食いしばりがある場合には夕方に耳の痛みを感じることが多く、夜間の歯ぎしりや食いしばりがある場合には、寝ている時や朝起きた時に耳の痛みを感じます。

耳痛が起こる仕組みはまだ解明されていませんが、顎関節の圧迫が神経を刺激して鼻と耳をつなぐ耳管の調整が上手くできずに痛みが出る説や、鼓膜の奥にある筋肉の痙攣(けいれん)を起こして痛みが出る説などがあります。

耳鳴りがする:耳鳴

耳鳴りは耳鳴(じめい)とも言います。耳鳴りには難聴が伴う場合と難聴が伴わない場合があります。顎関節症では多くの場合には難聴を伴わない耳鳴りが起こります。顎関節症に起こる耳鳴は、顎関節症と同じ側に起こります。顎関節症の治療を行うと44%の人で耳鳴が改善したという報告などから、顎関節症が耳鳴に何らかの影響を与えると考えられています。

顎関節症が耳鳴を起こす仕組みははっきりとはわかっていません。

参考文献
・Buergers R, et al. Is there a link between tinnitus and temporomandibular disorders?, J Prosthet Dent. 2014 Mar;111(3):222-7.

耳が詰まった感覚がする:耳閉感

耳閉感は「耳が詰まった感じ」や、「水に潜ったような感じ」、「飛行機やエレベーターに乗った時の聞こえの感覚」と表現されます。多くの場合は、難聴がある場合に耳閉感を感じますが、顎関節症では難聴がない場合でも耳閉感を感じます。ある研究では、聴力検査難聴がないにも関わらず、耳閉感の症状がある人にMRIを行うと81%に顎関節に異常が見られました。そして、顎関節円板障害があった人や顎関節の周囲に浸出液が溜まっていた人では、顎関節症の治療を行うと耳閉感の症状が改善しました。

耳閉感が起こる仕組みも解明されていませんが、耳鳴と同様に三叉神経の刺激によって起こるのではないかという説があります。

参考文献
・Lee SY, et al. Clinical implications of magnetic resonance imaging in temporomandibular disorders patients presenting ear fullness. Laryngoscope. 2018 Jul;128(7):1692-1698.

3. 顎関節症で起こりやすい全身の症状

顎関節症ではあごや口の症状の他、全身に様々な症状を起こします。代表的な症状についてみていきましょう。

頭が痛い、こめかみが痛い:頭痛

顎関節症では顎関節の近くの痛みだけではなく、頭痛も感じることがあります。頭痛は顎関節の周りの筋肉がこわばることによって起こります。はじめは顎関節に近い咀嚼筋(そしゃくきん)のみのこわばりですが、徐々に首や肩の筋肉もこわばるようになります。咀嚼筋は食べ物を噛む時に使う筋肉の総称で、さらにいくつかの筋肉に分けられます。顎関節症では咀嚼筋のうち咬筋(こうきん)と側頭筋(そくとうきん)に痛みを感じます。首の筋肉である胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)や、肩の筋肉である僧帽筋(そうぼうきん)にも痛みを感じます。

咬筋は奥歯を噛みしめると頬で硬く触れる筋肉で、側頭筋は奥歯を噛みしめるとこめかみに硬く触れる筋肉です。胸鎖乳突筋は耳の下から鎖骨の内側にある筋肉で、僧帽筋は首の後ろにある筋肉です。

このうち、側頭筋のこわばりや、首にある胸鎖乳突筋や僧帽筋のこわばりが頭痛の原因になります。このような筋肉のこわばりによって起こる頭痛を緊張型頭痛(きんちょうがたずつう)と呼びます。

肩がこる、首がこる:肩こり

顎関節症は肩や首のこりなどの症状も引き起こします。顎関節症の筋肉のこわばりは顎関節の周りから首や肩まで広がります。首の横にある胸鎖乳突筋や、首の後ろにある僧帽筋がこわばり、肩こりを引き起こします。

ふわふわする、視界が回る:めまい

顎関節症ではめまいが起こることがあります。顎関節症の41%でめまいがあるという報告があります。顎関節症で起こるめまいは頸性めまいと考えられています。頸性めまいは、首の周りの筋肉のこわばりによって、身体のバランス感覚に異常が起こるめまいです。顎関節症では顎関節や首、肩の周りの筋肉のこわばりが起こるため、めまいが起こります。

参考文献
・Porto De Toledo I, et al. Prevalence of otologic signs and symptoms in adult patients with temporomandibular disorders: a systematic review and meta-analysis. Clin Oral Investig. 2017 Mar;21(2):597-605.