2016.03.22 | コラム

顎関節症の症状とは

顎関節症の診断と関連する症状について

顎関節症の症状とはの写真
1. 顎関節症の症状
2. 顎関節の機能
3. 顎関節症の治療法

顎関節は顎の痛みや口が開かないといった症状などをきたす病気です。その他にも、もしかしたら顎関節症かもしれないという症状には、どのようなものがあるのでしょうか?今回は顎関節症の症状とその原因について解説します。

◆顎関節症の症状

顎が痛い、口が思ったほど開かない、そんな経験をしたことがある人もいるかと思います。顎関節症はそんな症状をあらわす病気です。この記事では、顎関節症の症状について解説していきます。

まずは、過去に報告された「この症状があると顎関節症かもしれない」という質問項目について紹介します。

下の質問項目は、2007年に報告された研究から引用したものです(杉崎正志ら、顎関節症スクリーニング用質問1項目の選択とその妥当性検討、日本顎関節学会雑誌、2007)。

  1. 口を大きく開いたとき、人差し指から薬指を並べた3本指を縦にして入りますか?
  2. 口を大きく開け閉めしたとき、あごの痛みがありますか?
  3. 口を大きく開いたとき、まっすぐに開きますか?
  4. 干し肉、するめ、タコなど硬いものを食べるとあごや顔が痛みますか?

これらの中で当てはまるものが多ければ顎関節症の疑いがあるとされています。特に2番の質問に「はい」「いいえ」で答えてもらった結果、最終的に顎関節症と診断された人のおよそ70%が「はい」と答え、顎関節症ではないと診断された人のおよそ87%が「いいえ」と答えていました。

この研究の対象者は何らかの理由で歯科を受診した患者です。そのため一般より顎関節症の人が多い可能性がありますが、実際に顎関節症と診断された人は12.4%でした。2番の質問に「はい」と答えた人の42%に顎関節症があり、「いいえ」と答えた人の96%は顎関節症がありませんでした。

2番の質問は、顎関節症の症状である、顎の痛みや開口障害に対応します。

 

顎関節症の症状としては、上の質問にある症状に加えて、顎を動かした時に顎の周囲で音がすること(顎関節雑音と言います)もあります。

それでは次に、このような症状が見られる理由について解説します。

 

◆顎関節の機能

顎関節症で、顎の痛み顎がずれたように感じる症状が見られる理由を説明するには、まず「顎関節」というものがどのような構造であるか、簡単に知っておく必要があります。

顎関節は、頭の骨と下顎の骨の組み合わせで成り立っています。頭の骨は、側頭骨と呼ばれる部分でその中でも下顎窩という「くぼんでいる」場所が顎関節に面しています。下顎の骨には突起になっている部分があり、その先端である「下顎頭」が顎関節を作ります。顎関節は下顎頭が下顎窩に噛み合わさる構造になっています。この関節の隙間には、関節円板というコラーゲンでできたものが挟まっています(関節円板は、背骨の間にある椎間板ヘルニアの原因となる椎間板と同じような性質のものです)。

これらの構造は、口の開け閉めで動きます。口を開く場合は、下顎が開くため、下顎頭は前に出ます。逆に、口を閉める時は、下顎頭は下顎窩の中に収まるように動きます。このとき、クッション剤のように口の開け閉めに合わせて大事な役割を持つのが、関節円板です。

関節円板は、正常であれば下顎頭と連動して口の開け閉めにあわせて前後に動くわけですが、顎関節症では様々な方向にずれてしまいます(前の方にずれる人が多いですが、後ろにも横にもずれます)。画像検査などで関節円板のずれを確認できないこともあるのですが、関節円板のずれが顎関節症の症状に関係すると考えられます。

関節円板がずれると、そこで引っかかりが起き、口を開けにくくなったり、関節内で炎症が起きることにより顎の痛みが出ることも考えられます。

その他にも、顎関節症と呼ばれる状態の中にはさまざまな原因による場合が含まれると考えられていて、筋肉の障害などが顎の痛みの原因になることもあります。

それでは最後に、顎関節症の治療法を簡単に説明します。

 

◆顎関節症の治療法

顎関節症の治療法は、大きく下の2種類に分けられます。

  • 保存療法
  • 手術療法

保存療法では、薬治療(消炎鎮痛剤など)、スプリント(口にはめる装具のようなもの)、物理療法(電気刺激、温熱療法など)といったものが、手術療法では、内視鏡を使った関節円板の手術などが行われています。

 

顎関節症の症状を中心に解説してきました。当てはまる症状があり困ることがあれば、ほかの原因がないか調べる意味でも、歯科などで相談することができます。

 

注:この記事は2016年3月22日に公開されましたが、2018年2月9日に編集部(大脇)が更新しました。

執筆者

Shuhei Fujimoto

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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