ちゅうないしょう
肘内障
主に子供に起こる肘の靭帯のずれ。突然肘が曲がらなくなり、痛みが出る病気。子供の腕を強く引っ張った時に起こりやすい
13人の医師がチェック 82回の改訂 最終更新: 2022.11.07

Beta 肘内障のQ&A

    肘内障の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    肘内障は、橈骨(手首と肘を結ぶ2本ある骨のうち、親指側の骨)の肘側の部分に異常が起きた状態です。この橈骨の端の部分は輪状靭帯という輪っか状の靭帯に包まれていますが、この靭帯から外れかけた状態が肘内障です。

    1-6歳程度のお子さんの肘に、急激に力が加わることで発症します。ご家族の方が、お子さんの手を引っ張り上げた時や、一人で遊んでいて腕がどこかに挟まった時などに生じることが多いです。寝返りを打っただけで肘内障が起きることや、ご家族が目を離している間に生じて、原因が分からないことなども中にはあります。

    肘内障は、どんな症状で発症するのですか?

    お子さんが「手が痛い」と言って気づかれる場合が多いです。

    また、会話ができない年齢だと片方の腕を全く動かさなくなることで発症することもあります。

    肘ではなく手首のあたりを自分で押さえたり、肩から先を一切動かさなくなったりすることがあるので、それを見たご家族が「手首(または肩)を痛めた」とおっしゃって一緒に受診されることもしばしばあります。

    肘内障は、どのように診断するのですか?

    レントゲンで骨折がないことを確認した上で、整復操作を行います。その過程で整復感があり(コクッという、関節が元に戻った感覚が整復を行った医師の手に伝わります)、その後に普通に手を動かせるようになったら肘内障と診断できます。

    経験のある医師の場合はレントゲンを省略することもあります。

    肘内障の治し方について教えて下さい。

    肘内障の治し方には、様々な手法があります。回内法や、回外屈曲法と呼ばれるものが有名ですが、他にもいくつかの手法があります。

    上腕が回らないように押さえながら、他方の手でお子さんの腕を回内させたり、回外させながら肘を曲げていきます。コクっという音がするか、その感触がしたらほぼ整復されています。

    なお、回内、回外とは、以下の向きに前腕(肘と手首の間)を回すことを指します。

    • 回内:自分の肘を90度曲げた状態で、親指が上から下へ、奥から手前へ来る向き
    • 回外:同様に、親指が下から上へ、手前から奥へ行く向き

    肘内障は、肘の脱臼とは違うのでしょうか?

    肘内障は肘の「亜脱臼」と言って、脱臼に至る前の段階です。完全に脱臼してしまうと、整復(関節を元に戻す)するのも肘内障より大掛かりになりますが、肘内障が進行して脱臼になってしまうということはほとんどありません。

    また、いわゆる肘の脱臼では、橈骨ではなくその隣の尺骨という骨が外れることが多いです。

    肘内障と診断が紛らわしい病気はありますか?

    上腕骨顆上骨折という、肘のすぐ上が折れたものと紛らわしいことがあります。そのために、レントゲン検査が必要になる場合があります。

    子どもの肘内障は、親が自分で治そうとしてしまっても良いのでしょうか?

    手順を間違えなければ簡単な操作であり、何度も肘内障を起こしているようなお子さんであれば試みても良いかもしれません。

    ただし、誤った操作をすると肘を痛めてしまったり、また、そもそも肘内障とよく似た骨折(上腕骨顆上骨折)だったりする場合もあります。日中で通常の外来が開いていて近くにある場合や、そうでなくとも少しでも不安があるような場合には、医療機関を受診してください。

    肘内障は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    詳細な頻度は不明ですが、一人のお子さんに何度も繰り返して起こることがあります。

    1-6歳の間に多いと言われ、この年代を超えると靭帯や骨の構造がしっかりとしてくるために、それまでに繰り返していたお子さんでも、通常は肘内障を起こさなくなります。

    肘内障が治った後は、いつから運動させて良いのでしょうか?

    医療機関で肘内障だと診断されて、それが整復されたようでしたら、すぐに運動をしてもらっても差し支えありません。

    大人でも肘内障になることはあるのでしょうか?

    成長に伴って関節が安定しますので、大人の肘内障は極めてまれです。成人に突然肘の痛みが生じた場合には、通常肘内障以外の外傷(脱臼や骨折、靭帯損傷など)を第一に考えます。

    肘内障にならないよう、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。

    お子さんが自分で動きまわって肘内障を起こしてしまうことはあり、そのようなものも含めて全てを予防することは困難です。

    しかし、肘内障の多くはご家族の方がお子さんの手を引っ張った時に発症するものであり、この点については意識することで予防が可能です。

    肘内障は、再発することがありますか?

    肘内障の再発率は報告によって様々ですが、27-39パーセントなどといった高い再発率が報告されています。明らかに手を引っ張って生じた肘内障などはある程度予防が可能ですので、そのようなことを避けることが大切です。