上腕骨近位端骨折の基礎知識
POINT 上腕骨近位端骨折とは
二の腕のうち肩に近い部分に起こる骨折です。転んで手をついたときや肩から落下した時に起こります。骨折に加えて、同時に脱臼も起こすことがあり、高齢者に多く見られます。レントゲン検査やCT検査、MRI検査で骨の状態を詳しく調べ、手術の必要性を判断します。骨のズレが少ない場合は手術をせずに固定をすることで治りますが、ずれがひどい場合には釘を打ち込んだりプレートを埋め込みます。上腕骨近位端骨折の診断や治療は整形外科で行われます。
上腕骨近位端骨折について
上腕骨近位端骨折の症状
- 骨折による肩から二の腕の腫れや痛み
- 肩を動かすことはできない
- 場合によっては神経が損傷し、手のしびれが起こることもある
- 上腕骨の骨折であれば、手を握ることは問題ない
上腕骨近位端骨折の検査・診断
- 画像検査:骨折の程度や骨折部位がずれていないかなどを確認する
レントゲン (X線 )検査CT 検査MRI 検査
上腕骨近位端骨折の治療法
- 骨折の程度によって手術をするかしないかを決定する
保存的治療 :骨折による骨のずれ方が少ない場合は、三角巾 やバンドで腕を体に固定し治るのを待つ- 手術:骨のずれが大きいまたは骨のかけらがある場合に行う
- 髄内釘固定法
- プレート固定法
- 骨折がひどい場合は人工骨頭置換術を行うこともある
- 手術後早い時期(2-3週間後)からリハビリテーションを行うことが大切
- 適切なリハビリテーションをすることで、肩の動きは取り戻せることが多い
- 筋力トレーニング
- 日常生活の動き(例えば、重い物を持ち上げたり、洗濯物を干したりする動き)の確認
- 関節ができるだけ固まらないようにする
- 適切なリハビリテーションをすることで、肩の動きは取り戻せることが多い
- 高齢者は転倒を予防することが重要
- 運動習慣をつける
- 認知機能を低下させない
上腕骨近位端骨折の経過と病院探しのポイント
上腕骨近位端骨折が心配な方
上腕骨近位端骨折は、ほぼ肩の近くの腕の付け根に起きる骨折で、特にご高齢の方に多いです。強く打ったりひねったりした後から肩が腫れて強い痛みがある場合には上腕骨近位端骨折の可能性がありますが、それ以外にも肩の脱臼、鎖骨の骨折、肩腱板断裂といった疾患が同様の症状を引き起こします。ご自身でこのうちのどれかを診断するのは必ずしも容易ではありません。実際に医療機関を受診された後は、上腕骨近位端骨折の診断は診察とレントゲンで行います。場合によってはエコー(超音波)検査やCT検査を補助的に使用します。
ご自身の症状が上腕骨近位端骨折でないかと心配になった時、まずは整形外科のクリニックや、お近くの救急外来を受診されることをお勧めします。肩の脱臼や鎖骨骨折であればクリニックで対応が可能です。上腕骨近位端骨折で手術が必要そうな場合には、レントゲンやその他行われた診察、検査の結果をまとめた診療情報提供書とともに、手術可能な病院を紹介してくれます。
受診先として、総合病院の救急外来は相対的に待ち時間が少ないというメリットもある一方で、専門の整形外科医ではなく広く浅く診察をする救急医が初期対応に当たることになります(日中は救急外来が開いていないこともあります)。総合病院の整形外科外来は、飛び込みで受診するには患者数が多く(待ち時間が長く)、また診療情報提供書を持っていないと受診ができなかったり、追加料金が必要となったりします。
上腕骨近位端骨折でお困りの方
上腕骨近位端骨折の場合、ごく軽度の骨折であれば手術をせずに三角巾で安静にして治すこともあります。それを除けば原則は手術が必要です。上腕骨近位端骨折は、診断がつき次第その場で治療が開始されますので、どこでどのような治療を受けるかを迷う余地は少ない疾患かもしれません。
手術後は、あまり安静にし過ぎているとかえって関節が固まって動かしづらくなってしまうため、痛みに耐えられる範囲で早期からリハビリテーションを開始していきます。