2015.07.17 | ニュース

上腕骨近位部の転位骨折は、手術をしてもしなくても2年後の結果はほぼ同じ

多施設間ランダム化比較試験により検証
from JAMA
上腕骨近位部の転位骨折は、手術をしてもしなくても2年後の結果はほぼ同じの写真
(C) Stasique - Fotolia.com

上腕骨のなかでもより肩に近い部分の骨折(上腕骨近位端骨折)は、転んで手をつく、肩から落ちるなど、腕に強い力が加わったときに起こる骨折です。今回の研究は、この骨折の治療として、手術と保存療法の場合で、身体機能の結果は変わらなかったということを報告しました。

◆手術群とスリングによる固定(保存療法)群にランダムに振り分け

今回の研究は、イギリスの32施設で、転位を伴った上腕骨近位端骨折患者250名を対象として、以下の方法で実施しました。

手術群では、骨折固定術または上腕骨頭置換術が、これらの手術経験がある外科医により施行された。

保存療法群は、スリングによる不動とした。

主なアウトカムは、オックスフォード式肩スコア(0-48点; 高い点数の方が良好)とし、2年間のうちに、6、12、24ヶ月の時点で評価した。

対象者は、手術を行う群と、スリング(腕の重さによる肩への負担を軽減する装具)により固定し動かなくする保存療法群にランダムに振り分けられ、それぞれその後の身体機能への効果を比較されました。

 

◆手術でも保存療法でも同様の効果

調査の結果、以下のことを報告しました。

手術群と保存療法群の間に、介入前、介入後2年間でいずれの時点でも、オックスフォード式肩スコア(手術群39.07点vs非手術群38.32点;差0.75点、95%信頼区間-1.33-2.84点、p=.48)に統計的な有意差は認められなかった。

手術群と保存療法群では、肩の機能への効果に有意な差は認められないという結果でした。

その他に、生活の質(QOL)や在院日数などの評価も行っていましたが、いずれの指標にも差は見られませんでした。

このことから筆者らは、「手術を行うことは、手術を行わない場合と比較して、受傷後2年間に患者が報告した臨床指標に有意な差は認められない。この結果は、転位を伴う上腕骨近位端骨折には手術を行うことが増えていることを支持しない。」と述べています。

 

上腕骨近位端骨折は高齢者の多い代表的な骨折の1つであり、手術するかどうかは、その骨折の状態とともに、患者さんの様々な状況を総合的に判断して決定されますが、今回の結果を始めとして、今後の様々な研究によって最適な治療方法が確立されていくのかもしれません。

執筆者

MT

参考文献

Surgical vs nonsurgical treatment of adults with displaced fractures of the proximal humerus: the PROFHER randomized clinical trial.

JAMA. 2015 Mar 10

[PMID: 25756440]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。