もやもや病(Willis動脈輪閉塞症)の基礎知識
POINT もやもや病(Willis動脈輪閉塞症)とは
子供のくも膜下出血の原因にもやもや病があります。もやもや病は脳の動脈が細くなっていく病気です。細くなっていく血管の役割を補うために周囲に血管がたくさんの血管が作られます。このたくさんの血管が「もやもや」と見えるためにもやもや病と呼ばれます。脳の血管が細くなった影響で、脳に流れる血液が不足して「手足の麻痺」「ろれつが回らない」「しゃべれなくなる」などの症状が現れます。特に、食べ物を冷ますために「ふーふー」と息を吹きかける動作や楽器を演奏する動作などで症状が出やすいことが知られています。もやもや病を診断するためにCT検査やMRI検査、脳血管造影検査などが行われます。細くなった血管の代わりに、手術で新しく血管をつなぎ直して脳の血流を上げる治療が行われます。もやもや病が疑われる症状がある場合は小児科・脳神経外科・神経内科などを受診して詳しく調べてもらってください。
もやもや病(Willis動脈輪閉塞症)について
もやもや病(Willis動脈輪閉塞症)の症状
- 主な症状
- 頭痛
- まひ
- 感覚異常
- 意識障害
- けいれん
- 構音障害 など
- 症状が現れるきっかけ:通常よりも激しい呼吸をした際に、血管が縮んで一時的に血流が途絶えるため、手足が動かしづらくなるなどの症状が現れることが多い(一過性脳虚血発作と呼ぶ)
- 熱いものを食べようとフーフーと冷ましているとき
- リコーダーを一生懸命に吹いているとき
- 大きな声で歌っているとき など
- もやもや病における一過性脳虚血発作のメカニズム
- 息をしすぎると過換気(体内の二酸化炭素が外に出て行き過ぎた状態)が起こる
- 体の中に二酸化炭素が足りないと、脳の血管が縮まる性質がある
- 脳の血管が縮まり、脳に十分な血流が行かなくなる
- その結果、一時的に麻痺などの症状が起こる
もやもや病(Willis動脈輪閉塞症)の検査・診断
- 頭部CT:主に脳出血が起きていないか調べる
- 頭部MRI、頭部MRA:頭部CTではわからない詳しい脳の状態を調べる
- 脳血流SPECT:脳の血管が細くなり、血流が不足しているかどうかを調べる
- 脳血管造影検査:カテーテルを使って、血管の状態を調べる
- 脳の血管の状態が、最もよく分かる検査である
もやもや病(Willis動脈輪閉塞症)の治療法
- 薬物治療
- 手術(バイパス手術):不足する脳への血流を増やすために行われる
- 手術の方法には「直接法」と「間接法」があり、どちらかが、あるいは両方が同時に行われる。子どもでは「間接法」がうまく行きやすいが、大人では「間接法」はあまりうまくいかず、「直接法」が行われることが多い
- 直接法:例えば浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術(STA-MCA吻合術)が代表的。脳の血管は細くなってしまっているので、顔の横を走っている浅側頭動脈を、脳の表面の中大脳動脈に直接つなげて、脳への血流を補う
- 間接法:側頭筋や硬膜などを脳の表面に付着させることで、数ヶ月かけて側頭筋・硬膜から脳に向かって血管が伸び、脳の血流を補う
もやもや病(Willis動脈輪閉塞症)の経過と病院探しのポイント
もやもや病(Willis動脈輪閉塞症)が心配な方
もやもや病は過呼吸の後に手足が動かしにくくなる、痺れる、言葉が出にくいといった症状(一過性脳虚血発作)が現れたり、脳出血や脳梗塞を引き起こしたりする病気です。
もやもや病は一過性脳虚血発作の症状で病院を受診した時や、脳出血、脳梗塞を起こしてその原因を調べた時に発見、診断されます。特に大人の場合は脳出血や脳梗塞を起こして、救急や脳神経外科外来、神経内科外来を受診した時に、その原因としてもやもや病が疑われたり、診断されることが多いです。
ご自身やお子さんがもやもや病でないかと心配になった時、受診先としては脳神経外科の病院やクリニックが適しています。もやもや病の治療として手術ができる病院は限られていますが、必ずしも手術が行われるというわけではありませんので、まずは地元にかかりつけの総合病院があれば、そちらの脳神経外科外来を受診するのが良いでしょう。
もやもや病の診断は問診と診察、頭部CTやMRI、SPECTなどの画像検査、頭部血管造影検査で行われます。頭部CT、MRIでは脳出血や脳梗塞の有無、脳の異常血管、あるいは他の病気の有無が分かります。頭部CT、MRIでもやもや病が疑われた場合、診断を確定させるためには頭部血管造影検査というカテーテルを使った検査が必要です。SPECTはもやもや病と診断された場合に治療方針を検討するために行われます。本来の血管が狭くなっていることが原因で、実際に脳の血流が少なくなっているかどうかが分かります。頭部CTやMRIでもやもや病が疑われた場合、もやもや病の治療を行っている病院に紹介してもらって頭部血管造影検査を受ける必要があります。
なお、もやもや病が疑われながらも、診断には至らないことがあります。そういった病気の中には、もやもや病に似ているけれども典型的でなかったり、他に原因の病気があるものがあり、類もやもや病と呼ばれたりしています。また典型的なもやもや病は左右両側に起こるため、片方の血管だけがもやもや病のような状態になっている場合、片側もやもや病と呼ばれます。あるいはもやもや病になる途中の段階のため、診断を確定させるために必要な条件を満たしていないという可能性もあります。いずれにせよもやもや病が疑われた場合、診断された場合には自然に治る可能性は低く、長い時間をかけて様子を観ることになります。定期的に脳神経外科の医師を受診するのが望ましく、また新たな症状が現れた場合は調べ直す必要があります。
もやもや病(Willis動脈輪閉塞症)でお困りの方
もやもや病は脳を栄養する太い血管が少しずつ狭くなり、詰まっていく過程で元々の太い血管の代わりに細いもやもやとした血管が生まれていきます。それでも脳の血流、酸素が足りなければ一過性脳虚血発作や脳梗塞になり、新しく生まれた弱いもやもや血管が破れてしまうと脳出血を起こします。基本的に太い血管の狭窄は少しずつ進行していきます。それに伴い一過性脳虚血発作や脳梗塞を起こしやすくなります。またもやもや病の血管は出来て時間が経つと、やがてもろく破れやすくなってしまいます。
もやもや病の治療は様子観察や対症療法としての薬物治療、手術です。手術では不足している血流を補うため、バイパス手術が行われます。手術以外には脳梗塞を予防するための抗血小板薬、てんかん発作をコントロールするための抗てんかん薬が使われます。
手術に関しては、効果が見込めるかどうか慎重に検討する必要があります。一般的には無症状であれば手術は行われません。一過性脳虚血発作や脳梗塞、脳出血などの症状がある場合には効果が認められるため、行われます。また手術方法は様々なやり方、組み合わせがあります。大きく分けると、直接バイパス手術と間接バイパス手術があります。直接バイパス手術は頭皮の中の血管と脳の表面の血管を直接つなぎ、頭皮の血管から脳を栄養する血流が生まれることを狙います。間接バイパス手術は頭の筋肉や膜を脳の表面に敷き詰めることで、筋肉や膜から新たに脳を栄養する血管が生まれることを狙います。それぞれメリット、デメリットがあり、患者さんの状態や医師によって片方が選ばれることもあれば、両方が組み合わされることもあります。一般に子供の場合は間接バイパスがよく発達することが知られています。そういった細かい手術方法に関しては、担当の脳神経外科の医師からよく話を聞いて、相談しましょう。
もやもや病は分かっていないことも多く、手術をするかどうかの判断も難しいですし、また細かい手術方法も様々なやり方があります。もやもや病と診断され症状もある場合、なるべく経験数が多い脳神経外科の医師を紹介してもらうなどして受診されるのが良いでしょう。
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