もやもやびょう
もやもや病(Willis動脈輪閉塞症)
脳に酸素や栄養を供給する太い動脈が細くなり、その役割を補う目的で周りに細い血管(もやもや血管)ができる病気
17人の医師がチェック 191回の改訂 最終更新: 2022.02.21

Beta もやもや病(Willis動脈輪閉塞症)のQ&A

    もやもや病とはどういう病気ですか

    脳に栄養を送る大事な血管である内頚動脈に狭窄が起こり、徐々に閉塞していく疾患であり、それを原因として様々な症状を呈します。頚動脈が閉塞していくため、脳は新しく血管を作って血流を保とうとしますが、この新しく出来た血管が脳血管造影検査で「もやもや」とした煙のように細々と薄く写ることからこの名前がついています。

    もやもや病は遺伝しますか

    遺伝が関連している可能性も言われており、発症に関係のあると思われる遺伝子もいくつか見つけられていますが、家族内に他にもやもや病の人がいる(家族性)例は全体の10%程度にすぎず、多くは家族性ではありません。遺伝以外に、年齢や環境などが影響して発症に至ると考えられていますが、はっきりと関連があると証明されたものは今のところありません。つまり、原因は依然よくわかっていないということです。

    もやもや病はどのくらいの頻度で起こりますか

    日本の人口10万人あたり3-10人が有病者で、年間400-500人が新たに登録されています。(ただし昨今のCT・MRIの普及により、過去の報告よりももやもや病が見つかる頻度は高くなってきています。)

    もやもや病はどのように発症しますか

    もやもや病では内頚動脈が狭窄し、次第に閉塞していきますので、脳の血流が不足し、虚血発作や脳梗塞をきたすことがあります。また、新しく作られた血管はいわば“間に合わせのもの”であり、もろいため、出血しやすく、脳出血を起こすこともあります。そのため、脳梗塞・脳出血をおこして病院に来た患者さんをよく調べたら、その原因がもやもや病だった、というのがよくある見つかり方です。その他、頭痛やけいれん発作をきっかけに、画像検査をしたら見つかった、ということもあります。

    もやもや病は何歳で発症しますか

    もやもや病の発症は、5-10歳の小児と、30-50歳の成人で多いとされています。小児は脳梗塞や虚血発作、成人は脳出血で発症することが多いです。

    もやもや病では具体的にどのような症状が出ますか

    脳梗塞や脳出血を起こした際には、梗塞・出血を起こした脳の部位によって意識障害・麻痺・失語・視野障害などさまざまな症状が出現する可能性があります。しかし、これらは他の原因による脳出血・脳梗塞でも起こりえるため、もやもや病に特異的な症状、というわけではありません。 小児のもやもや病患者は、熱いものをフーフー吹いた時や激しく泣いた時に、脳の血流が不足し、脱力や麻痺を呈することがあります。

    もやもや病はどのように診断しますか

    もやもや病は厚生労働省の指定難病であり、診断基準が定められています。脳血管造影やMRIで、もやもや病に特徴的な変化を脳血管に認めれば確定診断に至ります。

    もやもや病では、他にどのような検査をしますか

    上記の検査で診断はつきますが、もやもや病は徐々に進行する病気なので、定期的にMRI検査を行う等で経過を見ていく必要があります。また、SPECTやPETという検査を行い脳の血流量を調べることで、手術をしたほうが良いかの判断や治療の効果判定を行うことがあります。

    もやもや病にはどのような治療をしますか

    もやもや病の病態である、内頚動脈の狭窄を治す・止める方法は現在のところ存在しません。そのため、内服薬も手術も、起こってしまった脳出血・脳梗塞に対する治療や、将来起こりうる脳出血・脳梗塞を予防するための治療が主体となります。

    もやもや病ではどのような薬を飲みますか

    飲む事を推奨された内服薬は現在のところありません。脳梗塞の発症を予防するために、抗血小板剤を使用することはありますが、有効性について確かなエビデンス(医学的根拠)はないのが実情です。また、もやもや病は脳出血を起こすこともあるため、抗血小板剤の内服が望ましくない場合もあり、一概に飲んだほうが良いとはいえません。症状に応じて、抗けいれん薬や頭痛薬、降圧薬を処方することもあります。

    もやもや病ではどのような手術をしますか

    内頚動脈が狭窄・閉塞して脳血流が不足している状態に対して、血行再建術を行います。具体的には、脳の外にある血管や組織から、脳に血液を回してもらえるように、血管同士を繋いだり(バイパス)、脳の表面に筋肉や硬膜などの組織を密着させます。さまざまな術式があり、患者が小児か成人か、血流が不足しているのが脳のどの部位かによって、手術の方法を決めていきます。

    もやもや病は治る病気ですか

    罹患後、徐々に進行し、自然に治ることは通常ありません。肝要なのは、定期的な検査と、適切な時期の手術で重篤な脳出血や脳卒中を防ぐことで、他の方と同様の社会生活を送られている方もいらっしゃいます。

    もやもや病では、生活で気をつけることはありますか

    成人の方では、脳卒中の危険因子の管理(血圧、血糖、高脂血症、喫煙)も必要です。小児においては、過呼吸となるような動作を避けることが望ましいです。もやもや病患者でも妊娠・分娩は可能ですが、脳卒中のリスクが妊娠していない時よりも高まる可能性はあり、妊娠時期や出産環境については医療機関に相談しましょう。