くもまくかしゅっけつ(ひがいしょうせいくもまくかしゅっけつ)
くも膜下出血(非外傷性くも膜下出血)
脳血管の一部が破裂してくも膜と脳の隙間の出血が起こるタイプの脳卒中の一種。突然の頭痛・首の硬化・意識障害などが特徴だが、症状が軽く気付きにくい場合もある
25人の医師がチェック 384回の改訂 最終更新: 2017.12.06

Beta くも膜下出血(非外傷性くも膜下出血)のQ&A

    「開頭クリッピング術」について詳しく教えてください

    くも膜下出血の原因となった脳動脈瘤は、血圧などをコントロールしても高率に出血を繰り返すことが知られており、再出血するたびに後遺症がひどくなったり、死亡する確率が高くなります。そのため、再出血を予防するための処置が重要となります。

    開頭クリッピング術は、脳動脈瘤の壁を外側からつぶすことによって、内部に血液が流れ込まなくすることで、再出血を予防する手術です。

    手術の具体的な流れについて、以下で説明します。

    ① 全身麻酔をかけた状態で、頭皮、筋肉を切開し、頭蓋骨を露出します。

    ② 専用のドリルなどを用いて、頭蓋骨を直径5cm程度切り取ります。この切り離した部分は、動脈瘤の操作が終わったら、元の位置に戻して、チタン製の金具などで後々凹んだりしないように固定します。また、重症のくも膜下出血では、脳の圧力が中にこもって柔らかい脳組織を障害してしまわないように、切り離した骨をあえて戻さずに手術を終了することもあります。

    ③ 脳を包んでいる硬膜という膜を切開し、顕微鏡で拡大して観察しながら、いわゆる「脳のしわ」を分けていきます。脳動脈瘤はこの皺の奥にあり、またこの皺を分けるだけでは脳は傷つかないからです。

    ④動脈瘤と、その心臓側の動脈が確認できたら、動脈瘤と正常な血管の境界部分にスペースを作り、その部分を動脈瘤用のクリップで挟んで閉鎖します。動脈瘤の形・大きさによっては複数のクリップを用いることがあります。

    ⑤脳圧をコントロールしたり、脳の表面全体(くも膜下腔)に広がった血液を洗い流すために、ドレーンと呼ばれるシリコン製のチューブを頭の中に置いてくることがあります。

    ⑥脳の周りの操作が終わったら、硬膜・骨・筋肉・皮膚などを、できるだけ元の状態に近くなるように、固定したり、縫ったりして手術を終了します。

    クリッピングの手術を受けることになっている人、受ける可能性のある人、そしてそのご家族は、担当医からの説明も踏まえてよく手術のことを理解された上で、手術を受けることが望ましいです。

    くも膜下出血の予後について教えてください

    くも膜下出血の予後(生存率)は、一般的に以下のように言われています。

    • 1/3が死亡(即死を含む)

    • 1/3が大きな後遺症を起こす

    • 1/3が社会生活を送ることができる程度まで回復

    くも膜下出血の予後は、治療を受ける前(病院に来たとき)の意識状態や出血の程度、神経症状の有無や程度によって大きく変わります。

    例えば以下のような軽い症状で来院された治療された場合は、7割近くの方が社会復帰が可能と言われています。

    • 頭痛のみ(いつもと違う頭痛、冷や汗が出るような頭痛、突然の激しい頭痛)

    • ものが2重に見える  など

    一方で、意識がない状態で運ばれてきた方の場合は生存率が悪く、社会復帰できる可能性は10%程度とも言われています。

    くも膜下出血はきちんと脳動脈瘤の治療がされなかった場合に再出血することがあります。再出血を起こすと予後はさらに悪化します。くも膜下出血の再出血は発症した当日がもっとも高く、約50%の割合で発症後1か月以内に再発すると言われていますので、発症後早期に治療を行うことが大切になります。

    また、くも膜下出血を起こしたあとにけいれんが起こることもあり、しばらくは身体の状況を観察する必要があります。

    くも膜下出血の主な原因である脳動脈瘤を早期に発見するためには、脳ドックを受けることが1つの方法です。特にご家族でくも膜下出血を発症した方がいらっしゃる場合は受診することを検討されてもよいかもしれません。

    くも膜下出血が起こる原因やメカニズムについて教えて下さい。

    くも膜下出血は、脳の表面を覆う「くも膜」という薄い膜と、脳の表面の間の「くも膜下腔」という空間に出血が起きた状態です。くも膜下腔には多数の血管が走っていて、その血管が何らかの理由で傷つくまたは破裂すると、くも膜下出血となります。

    くも膜下出血の原因は大きく2つに分かれます。1つが、脳動脈瘤や脳動脈奇形といった脳血管の異常が原因となるタイプで、もう1つは頭を強く打つことによって出血するタイプです。後者は外傷性くも膜下出血と呼ぶことが多く、通常「くも膜下出血」と言うときは、前者の脳動脈瘤や脳動静脈奇形(特に脳動脈瘤)が原因のものを指します。

    くも膜下出血はどのような症状で発症するのですか?

    くも膜下出血で最も特徴的な症状が「突然の激しい頭痛」です。「バットで殴られたような」とか「後ろから鈍器で殴られたような」と表現されることもあります。「突然」というのもキーワードであり、発症した瞬間をはっきりと特定できることが多いです。頭痛の部位は特に決まっているわけではなく、後頭部や首の後ろが痛くなるような場合もあります。また多くの場合、吐き気や嘔吐が一緒に起こります。

    重症の場合は、意識がぼーっとしたり、呼びかけに全く反応しなくなるなどの意識障害が起こります。

    ただし、これらは典型例で見られる症状であり、出血の量が少ないと、突然起こる軽い頭痛程度の症状しか出現しない場合もあります。

    くも膜下出血はどのような検査で診断するのですか?

    くも膜下出血は頭部CT検査で診断を行います。しかし症状の軽いくも膜下出血では画像上の変化が乏しく診断が難しい場合もあります。

    くも膜下出血が起こっていることがCT検査で確認された場合、脳動脈瘤など脳血管の異常があるかどうかを検査します。腎臓の機能に異常がなければ造影CT検査(CTアンギオ)や脳血管造影検査を行います。場合によってはMRI(MRA)を行う場合もあります。

    くも膜下出血と診断されたらどのような治療を行うのですか?

    くも膜下出血であることが分かったら、緊急入院の上で治療を開始します。診断の遅れはその後の経過を悪くするので、迅速に診断から治療までを行わなければなりません。

    脳動脈瘤の破裂によって起こるくも膜下出血では、ある程度出血した後に一旦出血が止まることがありますが、数時間、数日以内に再出血を起こしやすいことが知られています。再出血が起きると症状が悪化し、その後の回復の見込みが低くなるために、早期(発症から72時間以内)に再出血予防を行うことが重要です1)。再出血予防は手術で行いますが、主に2つの方法があります。1つはクリッピング手術で、もう1つが血管内手術(コイル塞栓術)です。

    ただし、病院に到着した時点であまりに病状が悪い場合には、残念ではありますが治療が行われない場合もあります。

    くも膜下出血が起こりやすくなる危険因子にはどのようなものがありますか?

    くも膜下出血の危険因子として、以下の3つが知られています。

    • 喫煙
    • 高血圧1)
    • 過度の飲酒1)

    上記のうち、特に過度の飲酒はくも膜下出血との関連が強いと言われています。量の目安としては、アルコールを1週間あたり150g(1週間でビール大瓶5本、日本酒5合程度)以上飲む人はくも膜出血の発症率が5倍近くに増加するという報告があります。

    また、くも膜下出血の直接的な原因になる病気として、脳動脈瘤(くも膜下出血の約85%は脳動脈瘤が破裂することによって起こります)、脳動静脈奇形、脳動脈解離などが挙げられます。

    くも膜下出血の前兆となる症状はありますか?

    全ての場合ではないですが、一部で「警告出血」と呼ばれる出血が起こることがあります。これは、軽度のくも膜下出血が起こった後に出血が一旦止まった状態です。

    警告出血の症状は、突然起こる頭痛や首の後ろの痛み、吐き気など、くも膜下出血と同様ですが、警告出血にとどまっている範囲では重症化しないのが特徴です。前兆となる症状ではありますが、実際に警告出血の時点でそれだと気づいて病院を受診できることはまれで、重症化してしまってから救急車で病院へ搬送されることの方が多いです。

    くも膜下出血で、クリッピング手術とコイル塞栓術はどのように使い分けるのですか?

    クリッピング手術とコイル塞栓術に優劣を付けるのは難しく、患者さんの状態、脳動脈瘤の性状や位置、担当医やその施設がどちらの治療法の経験が豊富かなどにより選択されます。

    例えば、脳動脈瘤の位置が脳表から深い位置にある場合(脳底動脈や椎骨動脈にできた脳動脈瘤、または前床突起近くの内頚動脈瘤など)、もしくは患者さんが高齢である場合などはコイル塞栓術を選択した方が良いと言われています。一方で、出血による血腫が多い場合、脳動脈瘤がかなり小さい場合、逆にとても大きい場合、形状がコイリングに向いていない場合(脳動脈瘤のつけね部分が広い)などにはクリッピング術の方が良いと言われています。

    くも膜下出血の予防方法について教えて下さい。

    予防方法としては大きく2つあります。

    1つ目は危険因子である喫煙、高血圧、過度の飲酒の改善です。これらは他の重篤な病気の原因にもなるので改善することが望ましいと言えます。

    2つ目は、未破裂脳動脈瘤が発見された場合の、出血予防のための手術です。ただし、この手術は未破裂脳動脈瘤が見つかった全ての人に行うことは勧められておらず、脳動脈瘤の大きさや患者さんの年齢、体の状態などを踏まえて、十分に患者さんと相談した上で手術を行うか決める必要があります。脳動脈瘤の大きさ(直径5-7mm以上はリスクが高い)、場所、形のいびつさなどが破裂の危険性と関連があり、これらを参考にして治療を検討するべきであると考えられています(詳細は未破裂脳動脈瘤の情報もご参照下さい)。

    くも膜下出血に対する手術治療は緊急で行わなければいけないのですか?

    くも膜下出血に対する手術治療は、発症してから72時間以内に行うことが推奨されています。

    参考:「脳卒中治療ガイドライン2015 日本脳卒中学会

    推奨としては上記のようになっていますが、特に理由のない限り、入院した当日か翌日に手術が行われることが国内ではほとんどです。

    くも膜下出血はどのくらいの頻度で起こるのですか?

    くも膜下出血の発生頻度は国によって異なりますが、日本では10万人あたり年間20人ほどの発症であると考えられています。

    また性別による差もあり、日本での男女比は1:2程度と女性が多くなっています。

    参考:「脳卒中治療ガイドライン2015 日本脳卒中学会

    くも膜下出血の手術後はどのような治療を行うのですか?

    くも膜下出血の治療の中では手術ももちろん重要ですが、その後およそ2週間の治療も同様に重要です。なぜならば、くも膜下出血を発症してから2週間程度は、「遅発性脳血管攣縮(スパズム)」と呼ばれる状態が起こる可能性があるためです。

    スパズムとは、脳の血管が一時的に縮んで細くなってしまう状態です。スパズムを発症すると、脳梗塞を起こしてしまうことがあり、重度の後遺症が残ることもあります。手術の出来とは関係なく起こり、また起こるかどうかを事前に予測することが困難ですので、日々患者さんの状態を注意深く観察し、異常が疑われた場合は速やかに検査と治療を行います。したがって、手術が終わっても数日から1週間程度は、ICU(集中治療室)などで経過を観察することも多いです。

    くも膜下出血はどのくらい怖い病気なのですか?

    くも膜下出血は重篤な症状や後遺症を残すことで有名な、大変怖い病気です。一般的には、くも膜下出血を起こすと1/3が死亡、1/3が重度の後遺症を残し、1/3が元通りの生活に復帰できる(ただし軽度の後遺症を残すものを含む)と言われています。

    一方で実際には病院に到着する前に亡くなってしまう患者さんもいると考えられ、実際の死亡率は1/3よりも高い可能性があります。くも膜下出血を発症して病院に運ばれたときの意識障害の状態が軽ければ軽いほど、その後の回復の見込みが高いことが知られています。

    くも膜下出血は遺伝するのですか?

    くも膜下出血という病気自体が遺伝で発生するものではありませんが、くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤や脳動静脈奇形という病気は遺伝の影響があると考えられています。親や兄弟(姉妹)に脳動脈瘤のある人がいると、4%程度の確率で自身にも脳動脈瘤が存在すると言われています。

    従って、病気としてのくも膜下出血自体は直接遺伝しませんが、その原因となる脳動脈瘤には、部分的な遺伝的要素があると言えます。

    くも膜下出血の症状は、どれくらいで良くなりますか?

    くも膜下出血では病気になった直後、いわゆる急性期が、最も症状の改善が見られやすい時期とされています。

    発症から数週〜数ヶ月の期間で、改善の度合いは徐々に緩やかになり、途中で頭打ちになるのが一般的です。発症から3-6ヶ月頃が症状安定期となる場合が多いです。

    くも膜下出血の入院期間はどのくらいですか?

    軽症であれば、2-3週間の入院で社会復帰をされる方もいます。一方で重症の場合には、後遺症や合併症により月単位での入院を余儀なくされます。

    年齢や(くも膜下出血以外の)持病の有無、発症時の意識状態を元に、ある程度は入院期間の予測がつきます。

    くも膜下出血を治療し退院した後に気をつけることなどはありますか?

    退院後に気をつけるべきことは大きく分けて二つあります。

    1. 再発しないように、危険因子(高血圧、喫煙など)があれば必ず治療や改善が必要です。
    2. 水頭症の発症に注意が必要です。くも膜下出血を発症してから1ヶ月以上経過した後に、水頭症を起こすことがあります。認知症のような症状や、動きが緩慢になる、ぼーっとするなどの症状は水頭症のサインとなります。多くの場合、手術の後も定期的に頭部CTなどの画像検査を行うため、症状が出る前に水頭症になりそうかどうかが分かることもありますが、このような症状が出た場合には、シャント手術という水頭症に対する手術を検討します。

    普通の頭痛とくも膜下出血を見分けるには、どうしたら良いですか?

    くも膜下出血に伴う頭痛は「これまでに経験したことのないほどの強い頭痛」が「急に」起こるのが一般的です。

    逆に、いつもと同じ程度の頭痛や、出たり消えたりを繰り返しているような頭痛では、くも膜下出血の可能性は低いと言えます。

    またくも膜下出血では、半分以上の場合に意識障害が生じます。「いつもと違う」、というのがキーワードの一つになると思います。

    くも膜下出血では、どんな後遺症が残ることがありますか?

    くも膜下出血の後遺症は、出血の場所や程度により多岐にわたります。

    麻痺、失語、高次脳機能障害などの症状が様々な程度で組み合わさって後遺症として残ります。意識が戻らないこともあり得ます。

    ごく軽症の場合には後遺症らしい後遺症がない場合もあります。

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