下痢(数日以内)の基礎知識
概要
下痢は主に腸の病気が原因で起こります。急な下痢の原因として急性腸炎、食中毒などが多く、下剤などの薬剤が原因となることもあります。
強い腹痛がある、高熱がある、下痢に血液が混じっている、下痢の回数がとても多い、などの
上記の危険なサインはないものの、下痢で困っている人は内科、消化器内科、小児科などを受診してください。
原因とメカニズム
人間の身体では、飲食物に含まれる水分と胃腸から分泌される消化液を合わせて、毎日約9リットルの水分が腸に流れ込みます。この大部分は腸で吸収されますが、水分の吸収が不十分になったり、消化液の分泌が増えたりすると、便に含まれる水分が増えて下痢になります。
考えられる病気
数日以内に起こった下痢症状では、急性腸炎や食中毒などが原因のことが多いです。1週間以内に自然に治ることも多いですが、症状が強かったり長引く人は医療機関を受診してください。
感染性腸炎
食中毒
腸炎ビブリオ、サルモネラ、カンピロバクター、
旅行者下痢症
海外旅行から帰国後に下痢症状が出現することがあります。ウイルス、細菌、寄生虫などの感染や、食習慣の違い(水や香辛料)、ストレスなどが原因となります。
薬剤による下痢
一部の下剤(酸化マグネシウム、ポリエチレングリコールなど)や胆汁酸製剤(ウルソデオキシコール酸など)を内服している人に下痢が起こることがあります。また、
怖い病気
上に挙げた病気と重なるものもありますが、数日以内の下痢で重症化しやすい病気には次のようなものがあります。
一部の細菌性腸炎
腸管出血性大腸菌などの特殊な細菌による腸炎は下痢症状を示すのみならず、高度の脱水や全身の
抗菌薬投与後の偽膜性腸炎
別の病気に対して抗菌薬で治療を受けている時に、下痢や発熱などの症状が出てくることがあります。抗菌薬によって正常な腸内細菌のバランスが乱されることが原因です。高齢者や持病のある人では重症化することがあるため注意が必要です。
免疫抑制状態での下痢
受診の目安
次のような症状がある人は、危険な病気の可能性があるので速やかな受診が必要です。
・下痢の回数がとても多い
・十分に水分が摂取できずぐったりしている
・強いお腹の痛みがある
・下痢に血液が混じっている
・38℃以上の高熱がある
診療科
下痢がある人が受診する診療科は、内科、消化器内科、小児科です。具合が悪く夜間休日でも応急処置が必要な人は救急外来を受診します。
内科、小児科
下痢の原因の多くはウイルス性腸炎などの
消化器内科
腸の病気が下痢の原因となることが多いので、消化器内科のクリニックや診療所を受診しても良いです。さらなる精密検査や入院治療が必要な人は大きな病院に紹介されることがあります。
検査
下痢の原因を調べる検査には次のようなものがあります。
血液検査
身体に炎症が起こっているか、脱水の程度、肝臓や腎臓の異常などを調べることができます。
便培養検査
感染性腸炎、特に食中毒の原因となる微生物を調べるための検査です。便を採取して病原体となる細菌やウイルスがいないかを調べます。
腹部CT検査
大腸内視鏡検査
治療
急な下痢の場合には、まず整腸剤や下痢止めで症状を和らげる治療が行われます。ただし、下痢には身体から病原体を排出するという働きもあるため、完全に下痢を止めてしまわないように薬剤の使い方には注意が必要です。
原因となる微生物の種類によっては、抗菌薬が処方されることもあります。
下痢の回数が多く脱水状態になっている人には点滴が行われることもあります。
セルフケア
下痢は脱水を引き起こし、体力を消耗するつらい症状です。安静にしてこまめな水分摂取を心がけてください。食事が摂れそうなら消化の良い物を少量ずつ摂取するようにし、刺激物やアルコール類は避けるようにしてください。