カルニチンの認知機能に対する効果
カルニチン(L-カルニチン)は体内で作られている物質です。体内の化学反応に必須の役割がありますが、健康な人では通常不足しません。
カルニチンは医療行為などにより欠乏する場合があり、欠乏状態に対する治療薬の有効成分にも使われています。
カルニチン補充について、認知機能障害がない成人を対象に、認知機能を向上させる効果を検討した研究の調査が行われ、『Cochrane Database of Systematic Reviews』に報告されました。
2件とも効果不明
次の結果が得られました。
2件のRCTだけが適格だった。1件は18人の参加者によるクロスオーバー試験だった。もう1件は400人の参加者を4種類の治療のうち1群にランダム割り付けしていた。4群のうち2群(L-カルニチンと偽薬)がこのレビューに関係するものだった。しかし、これら2群の参加者の正確な人数は報告されていなかった。
採用条件に合う研究は2件見つかりました。1件の研究は18人を対象としていました。もう1件の研究は400人が参加し、ランダムにグループ分けされることによってカルニチンと偽薬が比較されていましたが、カルニチンのグループが何人で偽薬のグループが何人かは報告されていませんでした。
効果について次の結果がありました。
治療3日後にL-カルニチンが反応時間、覚醒、即時記憶または遅延再生に対して何らかの影響を及ぼしたという証拠は見つからなかった。
小さなクロスオーバー試験はまた認知に対するL-カルニチンの効果がないことを報告していたが、データは提供していなかった。
どちらの研究でもカルニチンが認知機能を改善させるという結果は出ていませんでした。18人の研究では、認知機能が改善したか悪化したかを確認できるデータが報告されていませんでした。
400人の研究の報告によれば、副作用の可能性がある深刻な事態はありませんでした。18人の試験では副作用の情報が報告されていませんでした。
カルニチンで認知機能は上がらないのか?
カルニチンを補充することで認知機能が向上したという研究結果は存在しなかったという報告を紹介しました。
効果があるかないかは試した結果がなければわかりません。2件の結果が見つかりましたが、どちらも結論をつける力はないと判断されました。研究の質の問題から、カルニチンが認知機能を向上させないという証拠とするにも至りませんでした。
したがって現時点では、「カルニチンが認知機能を向上させるという証拠はない」と言えます。
カルニチンを飲んでみようと思ったら、危険性も特に報告されていないことから、妊娠などの特に慎重になるべき状況を除けば、飲んでみるのは間違いとは言えません。しかし、「期待できる」とも言えません。
執筆者
L-carnitine for cognitive enhancement in people without cognitive impairment.
Cochrane Database Syst Rev. 2017 Mar 26.
[PMID: 28349514]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。