2017.04.20 | ニュース

食事の塩分を1/3まで減らすと血圧はどれぐらい下がるのか?

文献の調査から

from The Cochrane database of systematic reviews

食事の塩分を1/3まで減らすと血圧はどれぐらい下がるのか?の写真

高血圧には塩分を減らした食事が良いと言われますが、どれぐらいの効果があるのでしょうか。最近までになされた研究データの調査から、研究として行われた減塩の程度と効果が報告されました。

文献の調査によって、減塩の効果としてこれまでに研究された内容をまとめた研究を紹介します。

この研究は、各種文献データベースを検索し、古いものでは1946年から、新しいものでは2016年までの範囲を調べて、食事の塩分(ナトリウム量)の違いによる効果の研究を集めました。

塩分の多い食事と少ない食事をランダムに割り当てる方法で行われた研究を調査対象としました。血圧、コレステロール、中性脂肪などの変化の情報を集めました。

血圧は普通、収縮期血圧と拡張期血圧の組み合わせとして計測します。120/80mmHgと書いてあれば収縮期血圧が120mmHg、拡張期血圧が80mmHgです。

 

調査により185件の研究が見つかりました。食事の塩分は、平均して1日あたり201mmol(およそ11.75g)から1日あたり66mmol(およそ3.86g)に減量されていました。

対象者の背景を区別して収縮期血圧が下がった量をまとめると次のようになりました。

  • 血圧正常の人
    • 白人:1.09mmHg
    • 黒人:4.02mmHg
    • アジア人:統計的に差が確かめられない
  • 高血圧の人
    • 白人:5.51mmHg
    • 黒人:6.64mmHg
    • アジア人:7.75mmHg

また減塩によってコレステロールと中性脂肪の検査値は上がっていました。

 

減塩の効果の研究を紹介しました。すでに多くの研究から示され、ここにも要約されたとおり、高血圧の人が食事の塩分を減らすことは有効です。特にアジア人では白人や黒人より効果が高い可能性もあります。

ただし、血圧正常のアジア人については統計的に効果が確かめられませんでした。

また、上の数値を実現するために、1日あたりおよそ12gから4gという大幅な減塩が行われています。「国民健康・栄養調査」(2015年)によると、日本人は平均で1日あたり9.7gの食塩に相当するナトリウムを摂取しています。みそ汁1杯が1gから2g、ラーメン1杯が5gほどの塩分を含んでいます。1日4gにまで減らすのは、主な食品の塩分量を把握したうえ、かなり厳しく気を付けなければ難しいことです。

高血圧の治療には、減塩のほかにも適正体重の維持、運動、節酒、禁煙などがあります。もちろん薬もあります。減塩によって7.75mmHg下げることができれば大きな意義がありますが、150/100mmHgの人が減塩だけで正常血圧にまで戻すことは期待しにくいでしょう。

高血圧に減塩が有効と言っても、誰もが減塩しなければならないという意味ではありません。減塩だけで高血圧が解決するわけでもありません。

 

食事は楽しい生活を送るための大切な要素です。健康のために食事に気を付けるのは大切なことですが、食事だけですべてを説明することはできません。

ここで紹介したように、数字で効果を把握しておくことで、どの程度の重みがあるのかバランスよく考えることができます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Effects of low sodium diet versus high sodium diet on blood pressure, renin, aldosterone, catecholamines, cholesterol, and triglyceride.

Cochrane Database Syst Rev. 2017 Apr 9.

[PMID: 28391629]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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