2017.03.29 | ニュース

依存性の薬物から離脱するために、ブプレノルフィンは有効か?

文献の調査から

from The Cochrane database of systematic reviews

依存性の薬物から離脱するために、ブプレノルフィンは有効か?の写真

オピオイドは痛みを止める強い作用がありますが、薬物依存を起こす場合もあります。オピオイド依存の治療として、離脱症状を抑える薬を使う方法があります。最近までの研究で出ている結果の調査が行われました。

オピオイド依存に対して、ブプレノルフィンの効果として報告されている内容の調査結果を紹介します。

オピオイドはモルヒネ・フェンタニルなどの薬剤の総称です。ブプレノルフィンはオピオイド依存の治療として使われる薬のひとつです。

この調査では、研究データベースを検索し、最も新しいもので2016年12月22日までの範囲から、オピオイド離脱の際に表れた徴候・症状に対してブプレノルフィンの効果を調べた研究を収集しました。

2009年にも同様の調査が行われていましたが、以後の研究結果も含めるように改めて調査が行われました。

 

関係する27件の研究が見つかりました。

報告されている結果をまとめ、次の結果が得られました。

ブプレノルフィンを処方された患者はより長期にわたって治療に残り続け、効果量は大きいと見積もられた(標準化平均差0.92、95%信頼区間0.57-1.27、558人、5件の研究、中等度の質)。また、ブプレノルフィンを処方された患者は薬物離脱治療を完了する見込みが大きかった(リスク比1.59、95%信頼区間1.23-2.06、1,264人、12件の研究、中等度の質)。

同時に、有害事象の発生率には有意な差がなく、むしろ有害事象による離脱はクロニジンを使ったほうが多かった(リスク比0.20、95%信頼区間0.40-1.15、134人、3件の研究、低い質)。

治療完了率の差を言い換えると有益な帰結1人に対してNNT4(95%信頼区間3-6)であり、すなわちブプレノルフィンで4人を治療するごとに、クロニジンまたはロフェキシジンに比べて1人多く治療完了を期待できる。

ブプレノルフィンを使うことで、同様の目的で使われるクロニジンまたはロフェキシジンに比べて、より離脱症状が弱くなり、依存治療をより長く続けられる効果があり、ブプレノルフィンを使用した患者の4人あたり1人多い割合で治療を完了できると見積もられました。

ブプレノルフィンの副作用として呼吸抑制・吐き気などが知られていますが、副作用の可能性がある症状などが実際に発生した人の数はクロニジンまたはロフェキシジンと統計的に差が見られませんでした。

 

オピオイド離脱のためのブプレノルフィンの効果の調査を紹介しました。

薬物依存の治療は長期に及ぶことも多く、簡単ではありません。ブプレノルフィンの効果が確かめられていることは、治療完了に向かうためにブプレノルフィンを計画的に使えることにつながります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Buprenorphine for managing opioid withdrawal.

Cochrane Database Syst Rev. 2017 Feb 21.

[PMID: 28220474]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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