2016.12.09 | ニュース

薬物乱用者が見放されている?オピオイドのための治療は19%のみ

アメリカ50万人の調査から
from Drug and alcohol dependence
薬物乱用者が見放されている?オピオイドのための治療は19%のみの写真
(C) Sabphoto - Fotolia.com

薬物乱用は体に深刻な害を及ぼします。依存性があり簡単にやめられない薬も多い中で、乱用をやめて立ち直るためには社会からのサポートが必要です。乱用した人の調査では大半の人が未治療だったことが報告されました。

アメリカのデューク大学の研究班が、アメリカ全国で行われた聞き取り調査のデータ50万人分をもとに、薬物乱用をしていた人の特徴を集計しました。

前年にオピオイド鎮痛薬(モルヒネなど)を乱用していた6,125人が対象となりました。

 

集計から次の結果が得られました。

オピオイド使用障害の患者の大半(80.09%)にほかの薬物使用障害もあり、大うつ病エピソードがよく見られた(28.74%)。オピオイド使用障害患者のうち26.19%がアルコールまたは薬物使用に対する治療を受け、19.44%がオピオイドに特異的な治療を受けていた。

アルコール/薬物に対する治療を受けていた人の間で、自助団体と外来リハビリテーション治療がよく利用されているサービスだった。

オピオイド使用があった人のうち80%ほどがほかの薬物も乱用していました。アルコール依存症薬物依存に対する治療を受けていた人は26%ほどにとどまり、オピオイドのために特化した治療を受けていた人は19%ほどでした。

治療としてよく利用されていたのは自助団体と外来リハビリでした。

 

薬物乱用は長年にわたって社会問題として知られています。特にアメリカでは乱用が非常に多いと言われています。厳しい監視や罰則にもかかわらず乱用者は跡を絶たず生まれ続けています。

新たに手を出さない・出させないことはもちろん大切ですが、一度乱用をした人が立ち直る道が開かれていなければ、乱用を続けて深刻な結果に陥ることを防げません。

オピオイド依存の治療として、似た作用の薬を体に与えることで乱用行動をやめるという方法も知られています。異論もある治療法ですが、乱用がそれほど深刻な問題となっている結果でもあります。

この報告でもよく利用されていた自助団体やリハビリなどを充実させることも、社会全体で薬物乱用に向き合うために大切な要素です。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Treatment utilization among persons with opioid use disorder in the United States.

Drug Alcohol Depend. 2016 Oct. [Epub ahead of print]

[PMID: 27810654]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。