2017.03.23 | ニュース

頭を冷やして脱毛を軽減、抗がん剤治療中の乳がん患者をケア

182人の女性の治療で検証

from JAMA

頭を冷やして脱毛を軽減、抗がん剤治療中の乳がん患者をケアの写真

乳がんの治療の中で抗がん剤には重要な役割があります。抗がん剤には副作用もあります。脱毛は出やすい副作用のひとつです。頭を冷やす装置を使って脱毛を抑えられるかという研究が行われました。

アメリカのベイラー医科大学などの研究班が、抗がん剤治療中の脱毛を少なくする方法の研究結果を医学誌『JAMA』に報告しました。

この研究では、乳がんに対して抗がん剤治療を受けようとしている女性182人が対象とされました。

対象者は4サイクル(一定期間)の抗がん剤治療を受ける間、頭皮を冷やす装置を使用するグループと使用しないグループにランダムに分けられました。

頭髪の減少量が50%未満で、かつらが必要ない状態を頭髪温存成功と判定し、4サイクル終了時点でグループによる違いを比較しました。

 

次の結果が得られました。

頭髪の温存に成功した女性は、冷却群の95人中48人(50.5%、95%信頼区間40.7%-60.4%)であり、対照群では47人中0人(0%、95%信頼区間0%-7.6%)だった(成功率の差50.5%、95%信頼区間40.5%-60.6%)。頭皮冷却群と対照群の間で、ベースラインから化学療法サイクル4までの生活の質の変化には、どの尺度を取っても統計的に有意な差はなかった。

装置の使用に関連する有害事象だけが収集された。冷却群で54件の有害事象が報告され、すべてグレード1かグレード2だった。深刻な有害事象はなかった。

頭皮を冷やす装置を使ったグループでは95人中48人で頭髪が温存されましたが、使わなかったグループの47人の中で頭髪が温存された人はいませんでした。生活の質を質問票で聞き取った結果では、どちらのグループでも違いは見られませんでした。頭皮を冷やす装置によると思われる深刻な害は発生しませんでした。

 

頭皮を冷やす装置で抗がん剤による脱毛を減らすことができたという結果を紹介しました。

脱毛は抗がん剤の種類によっては高い確率で発生する副作用です。抗がん剤治療の期間が決まっている場合は、治療終了からある程度経つと髪はまた生えてきます。

髪が元に戻るまでの間は、かつら(ウィッグ)を使う方法もありますが、自分の髪を残したい人にとって頭皮を冷やす装置は価値があるかもしれません。

頭皮を冷やす装置は現在日本では標準的なものにはなっていません。今後国内でも検証が進めば普及する可能性もあります。

乳がんは手術や抗がん剤などの治療をすれば長期生存を期待できる場合も多いがんです。手術後・抗がん剤治療後の生活に目を向けた研究も数多く行われ、重視されています。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Effect of a Scalp Cooling Device on Alopecia in Women Undergoing Chemotherapy for Breast Cancer: The SCALP Randomized Clinical Trial.

JAMA. 2017 Feb 14.

[PMID: 28196254]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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