◆2年前から左乳房が膨らんでいた男性
この報告は、2年前から左乳房に膨らみがあることを訴えて受診した25歳男性についてのものです。
膨らみの部分に痛みはなく、触診では柔らかく動かすことができました。
◆中身はケラチンだった
マンモグラフィーの結果、膨らんだ部分に、丸い形で輪郭のはっきりした病変が写っていました。さらに超音波検査を行ったところ、研究班が「線路のような」と表現する平行線状の影が見えました。
これらの特徴は、膨らんだ部分に袋状の構造があると考えると説明できます。一方、乳がんの典型的な特徴とは一致しません。
病変の中身を微量に取り出して観察する「生検」を行ったところ、ケラチンの塊が見つかりました。これは皮膚の老廃物であるケラチンが袋状の構造の中に溜まって大きくなったもの、すなわち粉瘤と診断されました。
研究班は粉瘤に対する一般的な注意として「症状がなく、小さく、安定した病変は治療を必要としない。しかし、大きな、あるいは大きくなっていく病変は、美容のためと、がんが隠れている可能性を除外するため、切除しなければならない」とまとめています。
粉瘤は皮膚のどこにでもできます。場所によってはほかの病気と紛らわしくなります。この男性では粉瘤だったとわかりましたが、男性にも乳がんは少数ながら発生するため、マンモグラフィーなどが行われたことには重要な意義があります。
もし胸の皮膚に気になる変化があれば、一度皮膚科や婦人科で相談してみてはどうでしょうか。
執筆者
Epidermal inclusion cyst in a male breast: parallel linear echoes (tram-track appearance) on sonography as a diagnostic clue.
BMJ Case Rep. 2015 Dec 7.
[PMID: 26643189]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。