◆カルシウム摂取量と骨折の関連を検証
今回の研究は、50歳以上を対象にした46の研究をまとめました。 集められたデータから、食事に含まれるカルシウム量、ミルクや乳製品の摂取量、カルシウムサプリの摂取量と骨折の関連を検証しました。
◆食事に含まれるカルシウムの摂取量と骨折は関係ない
以下の結果が得られました。
摂取した食事に含まれるカルシウムについては、多くの研究でカルシウム摂取量と骨折に関連がないと報告されていた(全ての骨折で14/22、股関節の骨折で17/21、脊柱の骨折で7/8、前腕骨折で5/7)。
26のランダム化比較試験により、カルシウムサプリは、全ての骨折の危険性(20の研究、n=58,573、相対リスク0.89、95%信頼区間0.81-0.96)、椎体骨折の危険性(12の研究、n=48,967、相対リスク0.86、95%信頼区間0.74-1.00)を減少し、股関節骨折の危険性(13の研究、n=56,648、相対リスク0.95、95%信頼区間0.76-1.18)、前腕骨折(8の研究、n=51,775、相対リスク0.96、95%信頼区間0.85-1.09)は減少しなかった。
食事に含まれるカルシウムの摂取量と骨折に関連性は見られないと報告している研究が多いという結果でした。一方で、カルシウムサプリを飲むと、背骨の骨折の危険性を減らすという結果が見られ、歩けなくなる原因になりやすい股関節の骨折を減らす効果は確かめられませんでした。
著者らは、「食事に含まれるカルシウム摂取量は、骨折の危険性と関連しておらず、食事から摂取するカルシウムの量が増えると骨折を予防するという臨床試験による根拠はなかった」と述べています。
食事から摂取するカルシウムの量と骨折に関連はなく、カルシウムサプリでも股関節骨折は減らせないかもしれないという研究結果でした。カルシウムサプリの効果については、以前に紹介した研究でも、その効果が限られていることについて報告されています。
「骨折予防には、カルシウム摂取」という風に思えても、カルシウムだけでは解決できないのかもしれません。骨粗しょう症の治療にはいくつか違った種類の薬があり、また骨折防止のためには運動療法などさまざまな対策が研究されています。広い視野を持つことが大切なのかもしれません。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。