2022.03.01 | コラム

「経過観察」や「様子見」の真意とは?

健康診断や病院で「経過観察」と言われたらどうすればいいのか、重大な病気の心配はどの程度あるのかについて解説します

「経過観察」や「様子見」の真意とは?の写真

「CT検査では3ヶ月前とあまり変わらないようです。経過観察を続けましょう。」

「検査値に目立った異常はありませんでした。家でよく休んで様子を見てください。」

このようにお医者さんから「経過観察」あるいは「様子見」と言われることは珍しくありません。また、健康診断の結果で「要経過観察」などと書かれたことのある人も多いのではないでしょうか。

お医者さんの書くカルテにも、「経過観察」あるいは「obs.」「f/u」といった記載がしばしば見られます。「obs.」は「observation」で「観察」の意味、「f/u」は「follow-up」で「フォローアップ」の意味です。

ところが、「経過観察」という言葉は聞き慣れない人からするとそのニュアンスが良くわかりません。どのように様子を見て、次にいつ医療機関にかかればいいのか、具体的にはあやふやなままになってしまいがちです。

結論から言うと、単に「経過観察」といってもその意味するものは状況によって大きく異なります。このコラムでは「経過観察」や「様子見」と患者さんに伝えるお医者さんの真意を解説し、患者さんの立場でどのように対応したらよいのかを説明します。

 

1. 基本的に問題のない場合

「経過観察」や「様子見」と言われるケースでまず多いのが、基本的に放っておいてもあまり問題ないと思われる場合です。具体的には以下のような例が挙げられます。

 

【放置して問題なさそうなので経過観察とされる例】

  • 健康診断の胸部レントゲン(X線)検査で異常と言われたが、実は乳首が写りこんでいただけだった
  • 皮膚がんかと思い心配して受診したが「ホクロでしょう」と言われた
  • 腹部エコー(超音波)検査で肝のう胞があると言われた

 

こういった場合にお医者さんから言われる「経過観察」は「問題なし」とほぼ同じ意味で、次にいつ来てくださいともあまり言われません。

それならば「経過観察」と言わないでハッキリと「異常ありません」と言ってほしいと感じるかと思います。実際に、異常はないと言い切ってくれることも多いですが、「経過観察」や「様子見」という表現が好んで使われることもあります。

これは、全く問題ないとお医者さんから言われると、胸部レントゲン検査で今後異常を指摘されても「どうせ同じだから大丈夫だろう」であるとか、万が一ホクロがいびつに拡大してきても「以前に大丈夫と言われているから大丈夫だろう」と思ってもう受診しない人もいるからです。

お医者さんは毎日何十人も、人によっては多いと100人以上の患者さんを診ることもあります。そうすると何千人、何万人と診る患者さんの中には、いかにも異常なしに見えても後から異常な所見が出てくるような人も紛れ込んでいます。そうした人の今後の受診意欲を削がないように、あえて「問題ありません」とは言い切らないことがよくあるのです。

 

「様子見」とは具体的にどうすればよいか

こうした意味合いの「経過観察」は、言われた側にとってみれば、何に気をつけて様子を見たらよいのか分からずモヤモヤしがちです。そうした状況では、具体的には次の2点についてお医者さんに遠慮せず聞いてみてください。

 

  • 「次はいつ受診したらよいか」
  • 「何に気をつけて過ごせばよいか」

 

変わったお医者さんでなければ、「1年後の健診レントゲンもちゃんと受けてくれればそれでいいです」、「もしもホクロが大きくなるようであったらまた来てください」などと具体的に教えてくれると思います。

 

健診結果が「要経過観察」になったら

健診での「要経過観察」という結果の場合には、その場でお医者さんに質問ができませんが、基本的には「来年も忘れずに健診を受けてください」くらいの意味合いと思って大丈夫です。もっと早く再検査した方がよければ3か月後や6か月後に再検査という指示が通常は書いてありますし、すぐに検査や治療が必要であれば「要精査」や「要治療」といった判定になるからです。

 

2. 悪化する可能性が十分ありうる場合

次に、悪化したり重大な事態になる可能性があって「経過観察」や「様子見」と言われるケースです。具体的には以下のような例が挙げられます。

 

【重大な事態になりうるので経過観察が必要とされる例】

  • 胸部CT検査で肺の中に小さな影が見つかり、「肺がんの可能性が否定できないので3ヶ月後に再検査しましょう」と言われた
  • お腹の動脈にコブ(腹部大動脈瘤)が見つかり、「破裂の危険がありうるので半年ごとにCT検査をしましょう」と言われた

 

このように、重大な事態が想定されうる場合でも「経過観察」や「様子見」という表現が使われることがあります。

重大な事態がそれなりに想定されるならば、先手を打って詳しい検査でハッキリさせたり、早めの治療をして欲しい、と考える人も少なくないと思います。しかし、大掛かりな検査や治療にはそれなりの苦痛やリスクを伴います。

お医者さんはこうした大掛かりな検査や治療をしないで済むメリットと、様子を見ている間に手遅れになりうるデメリットを天秤にかけたうえで、「経過観察」という方針を提案しているわけです。

このような「経過観察」をしている途中で、いつも変わらないと言われるから大丈夫だろうと自己判断して定期受診を忘れてしまうと重大な事態を招く危険があります。

 

3. まとめ

このように「経過観察」や「様子見」といっても、お医者さんが想定している病気の重大さや可能性はさまざまです。ほぼ100%病気はないだろうと考えている場合から、ほぼ100%病気がある場合まで、「経過観察」という方針がとられうることを説明しました。多くの場合、「経過観察」とはさらに詳しい検査や治療をするのに適したタイミングは今ではないですよ、という意味合いが強いのです。

したがって、「経過観察」という方針だけを聞いても、具体的な治療方針は分かりません。お医者さんに「経過観察」を指示された人は、以下の点を自身で理解しているか確認するようにしてください。

 

【経過観察と言われた人が理解しておくべきポイント】

  • どれくらいの確率で重大な事態になりうると考えられるのか
  • 次はいつ、あるいはどのような状況になったら受診すればよいのか

 

こうしたポイントはお医者さんが患者さん一人ひとりの理解度を確認しながら、丁寧に説明するのが本来は望ましい内容です。しかし、実際には時間が十分とれなかったりして、ついつい「経過観察しましょう」、「様子を見ましょう」といった言葉で済ませてしまうことがあります。

 

自身で上記のようなポイントが十分に理解できていないと思った人は、ためらわずにお医者さんに確認してください。こうしたポイントを理解することで、少しでも安心して「経過観察」期間を過ごせる人が増えれば幸いです。

 

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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