おねしょはしつけの問題? おむつはしない方がいい?:夜尿症の原因と家庭でできる対策について

前回のコラムで、おねしょを医学的に「夜尿」と呼ぶことや、5歳を過ぎてもおねしょが続いていると「夜尿症」という病名がつくことがある、という話をしました。前回は受診の考え方を中心に説明をしましたので、今回は夜尿症の原因と家庭での取り組みについて説明します。また、夜尿症にまつわる誤解についても解きたいと考えています。
子どもの夜尿症の原因と対策
夜尿症を起こすメカニズムについては未解明な部分もありますが、主な原因として次の2つが考えられています。
【夜尿症の主な原因】
1. 寝ている間に作られるおしっこの量が多い(夜間尿量増大)
2. おしっこを溜めておく臓器である膀胱の容量が小さい(膀胱容量低下)
漏れるほどの量のおしっこが睡眠時に作られてしまうことも、膀胱が小さいことも、身体が未成熟な子どもにとってはよくあることですので、病気ではありません。そしてほとんどのおねしょは年齢が上がるにつれて自然に解消していきます。しかし、発達の具合には個人差があるため、これらおねしょの原因が長く残ってしまう人もいます。
また、おねしょが長引いている子どもについて見逃して欲しくないことがあります。頻度は高くありませんが、上記2つの原因の背景には病気が隠れていることがあるのです。具体的には、夜間尿量増大は尿崩症や糖尿病が原因となりますし、膀胱容量低下の原因には過活動膀胱や排尿筋過活動などがあります。こうした病気が見つかった場合は、夜尿症と並行して原因となる病気に対しての治療が必要になります。
一方で、特に病気が見当たらない場合は、生活習慣を工夫して、夜尿症を治していくことになります。それぞれの原因で勧められる生活習慣は次のものになります。
1. 寝ている間に作られるおしっこの量が多い(夜間尿量増大)
夜間の尿量が多すぎることが夜尿症の原因の一つになります。夜間の尿量は夕方以降に摂取した水分量に影響を受けるので、次のことを心がけるとよいです。
【夜間の尿量を減らすための上手な水分摂取の方法】
- 日中に十分な水分を摂っておく
- 夕方以降は水分を制限(コップ一杯程度が目安)する
- 特に就寝2時間前からは控えめにする
上の方法はあくまで目安なので、季節やその日の活動量などで調節してください。例えば、夏場や夕方以降の活動量が多かった日などではコップ一杯では水分が不足することがあります。子どもが汗をかいている、喉が渇いたと訴えているときには、躊躇することなく飲ませてあげてください。
また、十分飲んだはずなのにどうしても口の乾きが気になる場合には、氷を使うのもおすすめです。摂取する水分量を抑えつつ口を潤すことができます。本人と相談しながら、その子に合った方法を探してみてください。
なお、水分摂取の適量は本人の趣向も関わってくるので、一人ひとりの適量を見極めるのが難しいと感じるかもしれません。そんな時には「水分摂取量の記録」をおすすめします。記録を残すことで、摂取量と夜尿の関係が見えやすくなり、適量が見極めやすくなります。
2. おしっこを溜めておく臓器である膀胱の容量が小さい(膀胱容量低下)
子どもは体つきだけではなく、臓器も発達途上です。そのため、膀胱の大きさが成長に追いついてないことも夜尿症の原因になります。
就寝前には必ず排尿をする習慣をつけておくようにしてください。膀胱の中を空にしておくことで、膀胱容量の小ささをカバーすることが可能です。
また、膀胱の容量は「膀胱訓練」という方法で増やすことが可能です。この方法はざっくりいうと、尿意を感じてもすぐには排尿せず、ぎりぎりまで我慢した後に排尿するというものです。排尿を我慢することで、少しずつ膀胱容量が拡大すると考えられています。
ただし、膀胱訓練は他に病気が隠れているのを知らずにやると、副作用が懸念されることがありますし、全員に勧められる方法でもありません。上手くできずに出先で漏らしてしまうと、子どもに恥ずかしい思いをさせるだけで、元も子もありません。簡単に取り入れられる方法ではありますが、必ずお医者さんと必要性について相談し、適切な状況を選んで行うようにしてください。
夜尿症にまつわる誤解や間違った対策について
夜尿症に関する情報を調べると、まだまだ誤解や間違った対策が散見されます。上記で説明した水分摂取の方法や膀胱訓練の効果を十分に得るためには、病気に関する知識を高めるだけでなく、子どもとの接し方や、その他の習慣を見直すことも必要になってきます。
夜尿症はしつけの問題ではないので、叱ってはいけない
先述したとおり、夜尿症の原因は夜間の尿量が多いことや、膀胱容量が少ないことであって、しつけの問題ではありません。身体がまだ発達できていないだけなので、叱ったりペナルティーを与えることはするべきではありません。反対に、おねしょしなかったことを褒めたり、ご褒美を与えることは効果的です。また、おねしょしなかったことだけではなく、「夜寝る前にトイレに行く」「適切な水分摂取ができた」ことなどを褒めることも効果的です。
おねしょを避けるために夜間起こしてはいけない
おねしょを避けたいからといって寝ている子どもを起こして排尿を促す行為は避けてください。夜間に強制的に起こすと、膀胱の容量が減少したり、尿量を抑えるホルモン(抗利尿ホルモン:ADH)の分泌が不十分になり、夜尿症に悪影響を及ぼすと考えられています。
夜尿症とおむつの使用は関係がない
夜尿症の治りやすさとおむつの使用には明らかな関係はないと考えられています。つまり、おむつをしないほうが早く治るわけでもないですし、おむつを使っているから夜尿症が治らないわけでもありません。この事実を子どもに説明したうえで、寝る時におむつを使うかどうかを子どもと一緒に考えてください。
夜尿症の原因と家庭での取り組み、それに加えてよくある誤解についても説明しました。
今回のコラムでは家庭でできる取り組みを中心に説明しましたが、他の病気が隠れていたりすると家庭での取り組みだけでは解決しません。前回のコラムで述べたようにお子さんの気持ちに寄り添いながら、お医者さんに相談することも忘れないようにしてください。
おねしょで悩むご家庭の参考になれば幸いです。
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。