2020年10月からロタウイルスワクチンが定期予防接種になったことを知っていますか:【前編】ロタウイルスについておさらい | MEDLEYニュース
2020.11.04 | コラム

2020年10月からロタウイルスワクチンが定期予防接種になったことを知っていますか:【前編】ロタウイルスについておさらい

ロタウイルス感染症について詳しく説明します
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(c)Viacheslav Iakobchuk-Fotolia.com

2020年1月に武漢から始まった新型コロナウイルス感染症の話題は今もトピックとなっています。この感染症をきっかけに、予防接種についても皆さんの意識が高まっていると思います。そんな中2020年10月1日から厚生労働省の推奨するワクチンのメニューが変更されました。具体的には、今までは任意接種であったロタウイルスに対するワクチンが定期接種になりました。

そもそもロタウイルスによる感染症とはどういったものなのでしょう。このコラムではロタウイルス感染症とはどんなものなのかについて説明していきます。

「【後編】ロタウイルスワクチンについて」はこちら

 

ロタウイルスとはなんだ?

ロタウイルスは人間に感染すると下痢や嘔吐といった症状を引き起こします。国内では年間およそ80万人が感染すると考えられており、特に乳幼児の感染が多いことが特徴ですが、大人でも感染することがあります。小さい子どもを持つ親御さんは子どもからの感染にも注意が必要です。ただし、大人は感染しても無症状であったり、軽い症状で済んだりすることがほとんどです。

 

ロタウイルスの流行期

季節によってロタウイルス感染の起こりやすさは変わります。一般的に「下痢や嘔吐を引き起こす病気」は一年中どの季節でも起こりますが、一つの病気に限ってみていけば季節性が見えてくることがあります。例えば嘔吐と下痢で有名な感染症であるノロウイルス感染症は冬から春にかけて流行ります。

 

ノロウイルス感染症の国内発生数(2018/2019)】

ノロウイルス感染症の国内発生数

 

同じようにロタウイルスについて季節別に見てみると次のようになります。

 

【ロタウイルス感染症の国内発生数(2018/2019)】

ロタウイルス感染症の国内発生数

 

上の表にある通りロタウイルスは春から初夏にかけて感染が多くなっています。もちろん流行期以外にも感染は起こりえますが、「どの季節に発症したのか」や「周囲に感染症流行の情報はあるか」などを確認すると、とても参考になります。

 

ロタウイルスに感染した際の症状の特徴

ロタウイルスに感染することで見られやすい症状には特徴があります。主な症状は次のものになります。

 

【ロタウイルス感染症でよく見られる症状の例】

  • 下痢(白い便が特徴)
  • 嘔吐
  • 腹痛
  • 発熱

 

特に3−5月くらいに小さな子どもにこうした症状が見られた場合には、まず第一にノロウイルスによる感染を考えたほうが良いです。汚物を周囲に広げることなく処理することが大事なだけでなく、処理したあとの手は流水を用いて洗うようにしてください。(実はノロウイルスはアルコール消毒では効果が不十分と考えられています。)

 

意識朦朧(もうろう)や痙攣(けいれん)が見られたらすぐに医療機関の受診が必要

ロタウイルスに限らない話ですが、下痢や嘔吐を繰り返すと脱水症になりやすくなります。脱水にならないように頑張って水を飲んでいたとしても、脱水には注意しなければなりません。というのも、下痢や嘔吐があるときは、飲んだ水が吸収されずに体外に出ていきやすいからです。

脱水がひどくなると意識がぼんやりとしていきます。感染による全身の炎症も重なり、さらに意識が朦朧としやすいので、明らかにぼんやりとしている場合には医療機関を受診するほうが望ましいです。元より子どもは脱水によって体調が不安定になりやすいので、親御さんはよく観察するようにしてあげてください。

また、ウイルスが脳神経やその周囲に感染を起こすことがあり、その際には痙攣が見られやすくなります。小さい子どもの痙攣には熱性痙攣とよばれる基本的に様子を見ることができる類いのものもありますが、「痙攣が続く場合に本当に様子を見ていいのか」の判断はとても難しいものです。ましてや可愛い我が子に関して冷静に判断しろというのは酷な話です。判断に困る場合には、まず医療機関に一報入れて相談してみると良いと思います。

 

ロタウイルスにかかった人が受ける治療

ロタウイルスに感染しても特効薬はありません。新型コロナウイルスに関しては抗ウイルス薬がいろいろと試されていますが、ロタウイルスに対する治療薬は今のところ(2020年11月4日現在)有効なものは見つかっていないのです。

実はほとんどのウイルスにおいて、抗ウイルス薬は存在しません。この話をすると、「どうして多くのウイルスに対して治療薬を作らないのか」と疑問に思う人もいると思います。しかし、ほとんどのウイルス感染症は治療しなくても身体に備わっている免疫の仕組みで治るため、治療薬が開発されていないというのが現実です。また、今回の新型コロナウイルスについては、重症度が高く患者数も多いと考えられた背景から、新薬開発が急ピッチで進められているわけです。ロタウイルスは重症になる人が少ないという点や、すでにワクチンによる予防方法が確立している点(詳しくは次のコラムで説明します)が、治療薬が確立していない大きな理由かもしれません。

 

脱水にならないように気をつけながら様子を見るのが基本スタイル

治療薬がないためロタウイルスに感染した人が何か特別なことを期待できるわけではありませんが、脱水にならないよう気をつけることはとても大切です。症状の項で述べたとおり、脱水が進行するととても重い症状が見られるようになるため、できるだけ飲水は継続するようにしてください。一方で、飲んでもすぐに吐いてしまうようでは脱水が改善しないため、そういった場合には点滴で補液が行われます。

また、下痢がひどい場合には下痢止め(止痢薬)を使いたくなりますが、かえって回復を妨げる懸念があるため、使用は控えるようにしてください。これはロタウイルスに限らず他の感染症による下痢に対しても基本的に同様と考えて良いです。

 

感染にかからないようにすること・感染を広げないようにすること

感染症にかからないようにするためには予防をしっかりと行うことです。良くも悪くも新型コロナウイルス感染症のおかげで、感染症の予防方法について国民全体のリテラシーが向上してていますが、ロタウイルスにおいては手洗いをして体内にウイルスが入らないようにすることがとても重要になります。一方で、新型コロナウイルスの場合にはアルコール消毒も推奨されていましたが、ロタウイルスに対してアルコールの効果が乏しいことがわかっているので、アルコールによる手指衛生は推奨されていない点には注意が必要です。

また、感染者から周囲に広げないようにする配慮も大切です。特にロタウイルス感染者の吐物や下痢にはウイルスが多く含まれているため、汚物を介して感染が広がらないように気を付けなければなりません。処理する際にはマスクや使い捨ての手袋を用いながら行ったほうが無難ですし、処置が終わったあとにはしっかりと流水を用いて手洗いするようにしてください。ロタウイルスは少量でも感染が起こるため、洗い流しきるためにはいつもよりだいぶ念入りに手洗いする気持ちでいると良いです。

 

【今回のコラムのポイント】

  • ロタウイルスの主な症状は下痢と嘔吐
  • 乳幼児に多いが大人もかかる
  • 特効薬はなく、脱水症状にならないように注意が必要
  • 感染を広げないためには、汚物の適切な処理と手洗いが重要

 

ワクチンについては次回のコラムで

感染症を予防したり重症化を回避したりする上で重要な役割を担うものにワクチンがあります。ロタウイルスにはすでにワクチンが開発されており、今回の予防接種スケジュールの変更はまさにこのロタウイルスのワクチンが対象となっています。詳細を語ると長くなるので一旦このコラムは終わりにしますが、次回のコラムで詳しく説明していきます。

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。