2017.12.24 | ニュース

関節症性乾癬に対するセクキヌマブ注射2年間の効果は?

397人の治療で検証
from Rheumatology (Oxford, England)
関節症性乾癬に対するセクキヌマブ注射2年間の効果は?の写真
(c) WavebreakMediaMicro - Fotolia.com

関節症性乾癬は、皮膚の症状に加えて関節の腫れや痛みを起こす病気です。セクキヌマブはほかの治療で効果不十分な場合の選択肢となる薬です。セクキヌマブを最長104週間使用した研究の結果が報告されました。

関節症性乾癬に対するセクキヌマブの長期研究

アメリカ・イギリスなどの国にまたがる76か所の施設で行われた、関節症性乾癬に対するセクキヌマブ(商品名:コセンティクス®)の研究の結果が、専門誌『Rheumatology』に報告されました。

この研究は、中等度から重度の関節症性乾癬がある患者で、NSAIDs(痛み止めの薬)などの治療を受けたあとも症状が続いている人を対象とし、セクキヌマブを使った治療で症状の変化を調べています。

対象者397人が、ランダムに4グループに分けられました。

  • 偽薬を注射するグループ
  • セクキヌマブ75mgを注射するグループ
  • セクキヌマブ150mgを注射するグループ
  • セクキヌマブ300mgを注射するグループ

どのグループでも開始時、1週目、2週目、3週目、4週目、以後4週ごとに注射をすることと決められました。

効果判定には、「ACR20」の基準を使いました。ACR20は、症状などを総合して病気の勢いが改善したことを判定する基準です。痛みのある関節の数・腫れのある関節の数がともに20%以上減り、かつ患者自身が評価する痛みの程度など5項目中3項目で20%以上の改善があることを条件としています。

4グループのそれぞれで、ACR20基準を満たすだけの改善があった人の割合を比較すると決められました。

 

治療開始から24週の時点でデータが解析され、すでにセクキヌマブが有効と報告されています24週時点でACR20まで改善した人の割合は次のようになりました。

  • 偽薬:15%
  • セクキヌマブ75mg:29%
  • セクキヌマブ150mg:51%
  • セクキヌマブ300mg:54%

その後もこの研究は長期的な効果と安全性を調べるため、5年後までのデータを収集するよう続行中です。

最初に偽薬のグループに入った対象者は、一定のルールで途中からセクキヌマブ150mgまたは300mgのグループに再度割り当てられました。

ここで紹介する報告は、治療開始から104週後までのデータを解析したものです。

 

104週時点でも改善あり 

セクキヌマブを注射した3グループ(もともと偽薬のグループにいた人を除く)で、104週時点でACR20まで改善していた人の割合は次のようになりました。

  • セクキヌマブ75mg:50.3%
  • セクキヌマブ150mg:64.4%
  • セクキヌマブ300mg:69.4%

 

副作用やその他の原因による有害な出来事の発生率(すべての用量の合計)を、セクキヌマブを100人が1年間使用したときに換算すると、以下の件数となりました。

  • 深刻な感染症:1.6件
  • カンジダ(カビの一種)の感染症:2.3件
  • 潰瘍性大腸炎:0.3件
  • 好中球減少症:0.1件
  • がん/詳細不明の腫瘍:1.3件

 

以上の結果から、研究班はセクキヌマブの効果について「持続する改善をもたらした」、安全性については「新たなまたは予期しなかった注目すべき出来事は現わさなかった」と記しています。

 

関節症性乾癬にセクキヌマブは長期的にも有効?

関節症性乾癬に対するセクキヌマブの研究の2年後の結果を紹介しました。セクキヌマブを使用した人の過半数で一定基準以上の改善がありました。

セクキヌマブは日本では2014年に「既存治療で効果不十分な尋常性乾癬及び関節症性乾癬」を効能・効果として承認されました。長期的な効果や副作用についてはここでも紹介したように追跡中の面もあります。より長期のデータが報告されてくることによって、治療法を考えるうえでより多くの材料をもとに見通しを立てられるようになります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Secukinumab sustains improvement in signs and symptoms of psoriatic arthritis: 2 year results from the phase 3 FUTURE 2 study.

Rheumatology (Oxford). 2017 Nov 1

[PMID: 28968735]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。