2017.12.21 | ニュース

食べ物の研究はなぜ「誰が言ったか」を知らせないといけないのか

スタンフォード大学教授の意見

from JAMA

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食べ物と健康について多くの情報が出回っていますが、「誰が言っているのか」を意識したことのある人はいるでしょうか? 研究結果の適切な理解を助けるために、著者の情報をより透明に開示するべきだとする主張を紹介します。

誰が言ったかはなぜ重要なのか

スタンフォード大学予防研究センター教授のジョン・イワニディース(ヨアニディス)医師らが、医学誌『JAMA』に寄稿した意見文の中で、食べ物と健康に関わる論文などについて、著者の利益相反の開示をさらに透明にする必要を主張しました。

利益相反とは、同じ人が対立する利害関係の中にいることを指します。たとえば医学研究の研究資金が企業から提供されている場合に、企業に対する利害と社会全体(研究結果を利用する患者、医師、ほかの研究者など)に対する利害が一致しない状況がありえます。

イワニディース氏らは、直接の金銭的な利益相反が注目されていることには意義を認める一方、「食品産業から資金提供を受けること自体が自動的に結果をゆがめるという清教徒的な見方は時代遅れである」と断って、利益相反が考えられるその他の状況を挙げています。

  • 研究者が食べ物について本を書くことなどが、間接的に金銭的な利益相反となる可能性がある
  • 金銭的な利益以外にも、研究者が研究の結果自体に価値意識を持っている可能性がある。たとえば宗教上の理由で食事について決めていることがある研究者は、その決めごとが健康に悪いのでやめるべきだという結論を出すとは考えにくい
  • 著者が政治的立場を代表している場合がある

こうした要素については開示するべきであり、一例として、著者が菜食やグルテンフリー食を厳しく守っているかどうかが開示されることによって、読者は提示された内容を適切な文脈に位置付けることができるとしています。

 

食べ物以外ではどうか?

意見文はまた、食べ物以外の生活習慣(喫煙など)についても考察しています。つまり、生活習慣の研究についても食べ物と同じ考え方で著者の情報を開示するべきかどうかを議論しています。

食べ物の研究がほかの生活習慣の研究と違う特徴として、以下の4点が挙げられています。

  1. 食べ物より強く健康に影響する生活習慣もある
  2. 食べ物ほどあらゆる人に関係する生活習慣はない
  3. 食べ物は特に注目され話題になっているため、ゆがんだ情報が多くの人に害を与える恐れがある
  4. 文化的な特徴が食べ物に現れることが多い

これらの違いは考慮するべきとされています。

そのうえで一般的には、食べ物以外についても、著者がどんな人かによって読者の受け取り方が変わる可能性があるならば、その情報は開示するべきだと意見文は主張しています。

 

誰が言っているのか?

食べ物の研究についての意見を紹介しました。

この意見文を著したイワニディース氏は、2005年の「なぜ刊行された研究結果のほとんどは偽であるのか」という論文などで知られています。2005年の論文に対してもさまざまな指摘や意見が寄せられました。ここで紹介した意見も多くの人に支持されるかどうかは未知です。

食べ物と健康の関係は世の中から注目されています。役に立つ情報がある一方で、生活に負担を強いるアドバイスや、確かな証拠のない情報も出回っているのが現状です。

紹介した意見文は研究論文などのあり方を議論したものですが、消費者の立場からもこうした考察をふまえて情報を読み解くことが、情報の海に溺れることなく自分の価値観に沿った判断をするための助けになるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Disclosures in Nutrition Research: Why It Is Different.

JAMA. 2017 Dec 7. [Epub ahead of print]

[PMID: 29222543]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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