糖尿病の薬セマグルチドの副作用と効果は?日本人308人の試験

糖尿病の治療薬にはいろいろな種類があり、それぞれに違った特徴があります。日本人の患者を対象にセマグルチドとシタグリプチンを比較する研究が行われました。
日本人2型糖尿病患者に対するセマグルチドまたはシタグリプチン単剤治療
関西電力医学研究所所長の清野裕氏らの研究班が、日本人の2型糖尿病患者を対象に、セマグルチドとシタグリプチンの安全性と効果を比較する研究を行い、結果を専門誌『Diabetes, Obesity and Metabolism』に報告しました。
セマグルチド、シタグリプチンとは?
セマグルチドは未承認の糖尿病治療薬です。GLP-1受容体作動薬に分類されます。
既存のGLP-1受容体作動薬としてリラグルチド(商品名:ビクトーザ®)、エキセナチド(商品名:バイエッタ®)などが使われています。GLP-1受容体作動薬は注射して使います。
シタグリプチン(商品名:ジャヌビア®、グラクティブ®)はDPP-4阻害薬に分類されます。飲み薬です。
GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬はどちらも広く使われている薬です。位置付けについては意見の違いもありますが、一例として米国糖尿病学会の推奨では、メトホルミン(第一選択とされる治療薬)と生活習慣の改善で効果が不十分の場合などに選択肢とされています。この推奨の中でGLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬の特徴は表のように説明されています。
DPP-4阻害薬 (シタグリプチンを含む) | GLP-1受容体作動薬 | |
有効性 | 中等度 | 高い |
低血糖のリスク | 低い | 低い |
体重への影響 | 変化なし | 減る |
副作用 | まれ | 胃腸に多い |
費用 | 高い | 高い |
セマグルチドにはほかのGLP-1受容体作動薬と似た性質が予想されます。
セマグルチドの安全性の研究
ここで紹介する研究では、日本人の2型糖尿病患者で、食事と運動などで治療中の308人が対象となりました。
参加時点で、直前1-2か月程度の血糖値を反映するHbA1cの検査値は平均8.1%(糖尿病ではない人では基準値6.5%)でした。
対象者はランダムに3グループに分けられました。
- セマグルチド0.5mgを週1回注射するグループ
- セマグルチド1.0mgを週1回注射するグループ
- シタグリプチン100mgを1日1回飲むグループ
治療を30週間続け、その間に治療下で発現した有害事象(薬の副作用やその他の原因による症状などで、治療中に現れたもの)によって安全性を評価することと決められました。
セマグルチドのほうが治療下で発現した有害事象が多い
治療下で発現した有害事象が現れた割合は下記のとおりでした。
- セマグルチド0.5mg:74.8%
- セマグルチド1.0mg:71.6%
- シタグリプチン:66.0%
セマグルチドのほうがシタグリプチンよりも割合が高くなりました。セマグルチドでは便秘、吐き気、下痢などが多く現れました。
HbA1cが下がった量は下記のとおりでした。
- セマグルチド0.5mg:1.9%
- セマグルチド1.0mg:2.2%
- シタグリプチン:0.7%
セマグルチドのほうがシタグリプチンよりも大きくHbA1cが下がっていました。
研究班は「2型糖尿病のある日本人でセマグルチドからシタグリプチンよりも多くの治療下で発現した有害事象が報告された。しかしセマグルチドの安全性プロファイルはほかのGLP-1受容体作動薬と類似していた」と結論しています。
セマグルチドは糖尿病治療に加わるか?
セマグルチドの安全性を試した研究を紹介しました。既存薬のシタグリプチンよりも治療下で発現した有害事象がやや多い結果でした。
セマグルチドは2017年11月時点で承認申請中です。近い将来承認されて広く使用可能となる可能性があります。
糖尿病治療薬にはここで挙げたほかにもたくさんの種類があり、さまざまな面から特徴を比較して使い分けられています。副作用についてもひとつひとつの薬について検証されていることで、患者個人の状況や価値観に合ったものを選ぶ判断がより確かになる助けとなります。
執筆者
Safety and efficacy of semaglutide once weekly vs sitagliptin once daily, both as monotherapy in Japanese people with type 2 diabetes.
Diabetes Obes Metab. 2017 Aug 8. [Epub ahead of print]
[PMID: 28786547]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。