2017.08.14 | PR

同等性を証明するために・・・ジェネリック医薬品、品質向上への歴史と未来

国による法的整備も高い品質の理由
同等性を証明するために・・・ジェネリック医薬品、品質向上への歴史と未来の写真
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超高齢化、医療費高騰などを背景に、日本においても欧米のように一般的になったジェネリック医薬品。普及が進んできた理由のひとつに国(厚生労働省)によるガイドラインなどの整備があります。

ジェネリック医薬品はなぜ信頼されるようになったのか?

過去、ジェネリック医薬品(後発医薬品)は新薬(先発医薬品)の特許が切れた後にゾロゾロと発売されるという意味合いで「ゾロ品」といった通称で呼ばれていました。言わば安かろう悪かろうのイメージがありました。

しかし、時代とともにイメージは変わりつつあります。単にジェネリック医薬品が知れ渡っただけではなく、ジェネリック医薬品の品質を担保する方法そのものが変わってきたのです。

 

97年、ジェネリック医薬品の歴史が動いた

1997年の12月に、「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドラインについて」(医薬審第487号)が出されました。これはジェネリック医薬品の有効性や安全性を担保するための指針を示したもので、現行のガイドラインの基盤ともなっています。

この中では、それまで動物試験が許容されていた状況において原則としてヒトで試験を行うことや、経口製剤(飲み薬)については予試験としての溶出試験を実施すること、そして、同等性判定法の変更が決められています。これらの定めによりジェネリック医薬品の開発がいっそう厳格・明確な基準で行われるようになりました。

 

ジェネリック医薬品の試験では何を調べているのか?

ジェネリック医薬品は、有効性や安全性が先発医薬品と同等であることが必要です。この条件を担保するために、生物学的同等性を証明することが開発における重要な過程とされています。(生物学的同等性試験に関しては別のPR記事「材料選びから厳格!?ジェネリック医薬品がつくられる過程と品質確保」の「ジェネリック医薬品に関する様々な「試験」とは」の章でも紹介しています。)

 

生物学的同等性とは?

ジェネリック医薬品がただ同じ有効成分を同量含むというだけでは、実際に体内に投与した時に先発医薬品と同様の有効性や安全性は担保できません。そこで、ジェネリック医薬品に先発医薬品と同等の有効性や安全性が得られることを証明するための検査(試験)が必要となってきます。それが「生物学的同等性試験」という試験です。

 

内服薬(飲み薬)を例にとって、この試験の一部を紹介します。

  • 先発医薬品の3ロットを対象に溶出試験を行い標準製剤を決定
  • 標準製剤と試験製剤(ジェネリック医薬品)の溶出挙動を調べる
  • 健康成人志願者等を被験者としたクロスオーバー法による交差試験の実施
  • その他

 

このように、同一の主薬を同一量使っていても、生物学的同等性を証明するための試験は決して簡単ではありません。特に近年では極めて厳格な試験が行われています。

 

生物学的同等性はどのように担保されるようになったのか

生物学的同等性の概念を取り入れたガイドラインの始まりは1970年代に遡ります。

1971年(昭和46年6月)に「医薬品の製造(輸入)承認申請における資料の提出について」(薬発第589号)が出され、ここで概念として生物学的同等性試験が導入されました。

方法として血中濃度の時間的推移の比較試験などが規定されましたが、医薬品の吸収・排泄に関する資料には、動物(ウサギやイヌなどの大型動物)を用いた試験が対象となっていました。

 

ヒトでの試験を原則に

1980年(昭和55年5月)には「医薬品の製造又は輸入の承認申請に際し添付すべき資料の取り扱い等について」(薬審第718号)では「生物学的同等性に関する試験基準」が制定され動物ではなく原則、ヒトでの生物学的同等性試験を実施することになりました。また標準製剤(先発医薬品)や試験製剤(ジェネリック医薬品)の規定内容、溶出試験の位置付けなども規定されました。

この基準は画期的なものでしたが、不十分な点もありました。たとえば経口固形製剤の一部にはビーグル犬による試験を用いることができました。一般的にビーグル犬のデータはバラツキが大きい懸念やヒトとの背景の違うことによる影響の懸念があります。こうした不十分な点が、その後の更なる整備・改正へつながります。

 

GCPを適用

1989年(平成元年10月)の「医薬品の臨床試験の実施に関する基準について」(薬発第874号)では生物学的同等性試験についてもGCP(医薬品の臨床試験の実施)が適用されることになりました(旧GCP)。これは臨床試験が論理的な配慮のもとに科学的に適正に実施されるための基準などを示したもので、さらに1997年(平成9年)の4月からは同年の3月に出された「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(厚生省令第28号)によりGCPの省令化がされました(新GCP)。GCPは治験を実施する際に遵守すべき基準であり、これによって被験者の権利と安全が最大限に守られることにつながります。

 

更なる明確化

1997年の12月には、現行のガイドラインの基盤となる「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドラインについて」(医薬審第487号)が出されます。このガイドライン(新ガイドライン)は1980年に出された試験基準(旧ガイドライン)における不十分な点を改善したものです。根拠や基準の更なる明確化、規定の追加が行われました。例として、ヒト試験の厳格化(動物試験の原則排除)や、経口製剤における予試験としての溶出試験の実施などが規定されています。

 

改正・追加等により更に厳格なガイドラインへ

1997年の「後発医薬品の生物学的同等性ガイドラインについて」の後も更なる改正や厳密な明文化等が行われ、科学的な合理性が計られています。ここからは1998年以降に追加・改正等されたガイドラインをみていきます。

 

既存の医薬品も再評価・抜き打ち検査

1998年(平成10年7月)には既存の医薬品に関しても品質の再評価が開始されます。(医薬発第634号「医療用医薬品の品質に係る再評価の実施等について」)

これは医療用医薬品の品質の一層の確保を図るためのもので、既に承認を受けているジェネリック医薬品も先発医薬品を標準製剤として溶出試験等を行い生物学的同等性を再評価することを定めています。

品質再評価により溶出規格が設定された製品に関しては原則として抜き打ち検査が実施されるなど、品質に対する信頼性の向上を目指しています。

 

含量違い製剤も厳格に検証、そして貼り薬や塗り薬などに対しても・・・

2000年(平成12年2月)には「含量が異なる経口固形製剤の生物学的同等性試験ガイドラインについて」(医薬審第64号)が出されます。

ジェネリック医薬品では下図のように先発医薬品にない規格が存在する場合があり、これにより患者がより服薬しやすい状況を作り出すなどのメリットが考えられます。

図表提供:日本ジェネリック製薬協会「知っ得!ジェネリック」

 

こうした薬剤を含量違い製剤と言います。つまり含量違い製剤とは、既に承認された内服薬(飲み薬)と有効成分、効能・効果、用法・用量、剤形は同一で、含量だけが異なる製剤のことです。

「含量が異なる経口固形製剤の生物学的同等性試験ガイドラインについて」は、含量違い製剤の生物学的同等性を保証することを目的としています。そのために、含量違い製剤を同じ用量で服用した際の生物学的同等性を試す試験の実施方法の原則を示しています。

 

その他、現在までに行われた改正・追加等です。

 

  • 2000年(平成12年2月):「経口固形製剤の処方変更の生物学的同等性試験ガイドラインについて」(医薬審第67号)
  • 2001年(平成13年5月):ガイドライン等の一部改正について(医薬審第786号)
  • 2003年(平成15年7月):「局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドラインについて」(薬食審査発第0707001号)
  • 2006年(平成18年11月):ガイドライン等の一部改正について(薬食審査発第1124004号)、「局所皮膚適用製剤の剤形追加のための生物学的同等性試験ガイドラインについて」(薬食審査発第1124004号)
  • 2010年(平成22年11月):「局所皮膚適用製剤(半固形製剤及び貼付剤)の処方変更のための生物学的同等性試験ガイドラインについて」(薬食審査発1101第1号)
  • 2012年(平成24年2月):ガイドライン等の一部改正について(薬食審査発0229第10号)

 

内服薬(飲み薬)だけでなく湿布薬や塗り薬などの局所への効果を目的とした皮膚製剤に関しての生物学的同等性試験の実施方法の整備・改正も行われています。

 

ガイドライン以外にも打ち出される対策

ガイドラインの整備・改正等と並行してジェネリック医薬品への安全対策の強化、診療報酬の改定などが行われました。一部を紹介しましょう。

2005年(平成17年4月)には市販後の安全対策を強化する目的で、医薬品の製造販売業の許可要件として総括製造販売責任者、安全管理責任者、品質保証責任者の設置が義務付けられます。

2007年(平成19年10月)にはジェネリック医薬品の信頼性を高め患者や医療関係者が安心して使用できるように、国や関係者が行うべき取り組みについての「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」が策定されました。

翌2008年には多くの都道府県で「後発品促進協議会」が設置されています。また2008年の7月には国立医薬品食品衛生研究所によって「ジェネリック医薬品品質情報検討会」が設立されています。

このように、ジェネリック医薬品の開発に対しては長い歴史の中で規制や対策の整備・改正等が行われ、超えるべき壁を更に高く設定していくことがなされてきました。それによって有効性や安全性を担保できるようにしてきたのです。

 

もしもの時には頼れる相談窓口へ

ガイドラインの整備や改正などもあり、ジェネリック医薬品は承認される際、品質、有効性及び安全性において先発医薬品と同等であることが確認されています。

それでも不測の事態が起こった場合を織り込んで、ジェネリック医薬品の品質に関する相談窓口が設けられています。

たとえば、臨床現場においては先発医薬品からジェネリック医薬品に切り替えた際(またはジェネリック医薬品から先発医薬品に切り替えた際)にそれまで得られていた薬の効果が得られなくなった症例がゼロではないことも事実です。このような状況をどうとらえればいいのでしょうか。

 

ジェネリック医薬品とプラセボ効果

先発医薬品とジェネリック医薬品で違いが出るには色々な要因が考えられます。

例えば「プラセボ効果」のような要因です。プラセボというのは本物の薬と同様の(または類似した)外見や味などをしているが有効成分は入っていない偽薬のことです。プラセボは薬理活性成分を含まないにもかかわらず、プラセボを投与して症状が回復する場合が臨床上見られることもあります。このような効果をプラセボ効果と言います。

(関連記事:「偽の薬とわかっていても効いた?腰痛を和らげる効果」)

プラセボ効果は主に心理的な要因と考えられています。先発医薬品では薬の薬理的作用に加えてプラセボ効果が現れていたが、ジェネリック医薬品に切り替えることでプラセボ効果が減弱するといったことは起こりうるかもしれません。

たとえば薬の値段に対して心理的な要因が働く場合もあります。同じ偽薬を使った場合でも値段の高低を思い込ませることで効果に違いが出たという研究も報告されています。

 

ジェネリック医薬品と薬物耐性

薬に対する耐性(薬物耐性)によって効果に変化が現れる場合もあります。例えば、体内における薬物代謝が亢進して起こる代謝性耐性であったり、薬が作用する受容体などに代償的変化が起こる機能的耐性などが生じることで、今まで効いていた薬が効きづらくなることも考えられます。体が薬物耐性を獲得するしくみは、先発医薬品かジェネリック医薬品かに関係なく働くと考えられます。つまり、先発医薬品を使い続けていても、薬物耐性による変化は現れる可能性があります。

しかし、ケースは少ないかもしれませんが、先発医薬品からジェネリック医薬品に変更したタイミングで薬物耐性が目立ってきた場合には、切り替えによって効果が減弱したように見えるかもしれません。

 

色が変わると「何かが違う」

ある薬剤師の臨床での経験も示唆を含むものです。厚生労働省からの悪用防止対策の要請を受けて、ある睡眠導入薬(先発医薬品)の錠剤の色調が変更されたことがありました。以前の白色から淡青色となり、見た目にも確認できる変更になりました。

有効成分の量などが変わった訳ではないため、この薬を服用している多くの人では、今までと問題なく継続ができ、睡眠改善の効果もしっかりと現れました。

ただごく一部の人からは、効果も含めてそれまでの薬とは「何かが違う」という印象を感じたことが、薬剤師に伝えられました。

この「違い」が心理的な要因であったのか、耐性的な要因であったのか、はたまたその他の要因であったのかはわかりません。また、ごく一部に限ったことなのか、ほかの場所でも起こっていたことなのか、ほかの薬にも当てはまるかといった点も不明です。

ただ、色や大きさなどわずかな違いであっても、それが何かしらの影響を与えるしくみは上記のとおり想定できます。実際に体感できる違いが現れる可能性はゼロではないと考えられます。

 

ジェネリック医薬品が心配になったらどうする?

もちろん以上のような要因ではなく、ジェネリック医薬品そのものに問題がある可能性も、絶対にないとは言い切れません。これらを総合的にまた科学的な視点で検討することが必要となります。

ジェネリック医薬品の品質に関する懸念に対し、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が「ジェネリック医薬品相談窓口」を設けています。この相談窓口は、ジェネリック医薬品を使用する患者やその家族、医療従事者や医療関係者など、誰でも相談できるものです。

ここに寄せられた意見や質問などのうち科学的な検証が必要なものは、国立医薬品食品衛生研究所に設置されている「ジェネリック医薬品品質情報検討会」において必要に応じて学術的な検討が行われています。また、品質等への懸念に関する具体的な相談内容なども公表されています。

 

ジェネリック医薬品をめぐる新しい動き

よりよいジェネリック医薬品の製造と使用のため、多くの努力が重ねられてきました。今後は超高齢化や医療費高騰などを受け、国としてますますジェネリック医薬品を推奨していくことが予想されます。

実際に2017年(平成29年6月)の閣議決定において、2020年(平成32年)の9月までにジェネリック医薬品の使用割合(数量シェア)を80%とし、できる限り早期に達成できるように、さらなる使用促進策を検討することが定められました。(参照:厚生労働省「後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進について」

 

ジェネリック医薬品を正しく選べる未来へ

ジェネリック医薬品の有効性や安全性を担保するため、国はジェネリック医薬品に関するガイドラインを整備・改正してきました。

同時に、ジェネリック医薬品を製造する製薬メーカーの品質向上への企業努力も続けられてきました。確かな品質への裏付けだけでなく、先発医薬品にはないジェネリック医薬品独自の有用性なども追求されてきました。

そして医療従事者や患者の理解も進み、ジェネリック医薬品は身近に普及したものになりました。

先発医薬品かジェネリック医薬品かを選択するのはあくまでも患者自身です。ジェネリック医薬品に対しての正しい認識を持って適切な選択をすることが今後は更に重要となるのではないでしょうか。

執筆者

MEDLEY編集部

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。