2017.07.17 | PR

材料選びから厳格!?ジェネリック医薬品がつくられる過程と品質確保

ジェネリックだからこそ厳格に・・・

材料選びから厳格!?ジェネリック医薬品がつくられる過程と品質確保の写真

一般的にジェネリック医薬品は先発医薬品に比べ安価です。品質が劣るのではと思えるかもしれませんが、ジェネリック医薬品は先発医薬品同様、材料=原料(原薬)選びから始まる厳格な工程によって品質を確保されています。
ジェネリック医薬品は後発医薬品とも呼ばれ、新薬として認可された薬の特許が切れた後で発売される医薬品です。ジェネリック医薬品は一般的に先発医薬品に比べ安価ですが、ジェネリック医薬品に関しては安くできる理由が存在します。ジェネリック医薬品の価格等に関しては 「自己負担が減るだけじゃない、ジェネリック医薬品の医療費への貢献とは」 でも詳しく紹介しています。
先発医薬品同様、ジェネリック医薬品の品質確保はその原料(原薬)選びから始まります。

ジェネリック医薬品がどのように開発されているかを考えるにあたって、まずは薬剤(製剤)の元になる有効成分の原料(原薬)をどのように選定・調達しているかをみていきます。

ジェネリック医薬品だけでなく、先発医薬品にも当てはまることですが、医薬品の開発において高品質の製品を製造する上で、原料(原薬)選定は非常に重要です。

日本におけるジェネリック医薬品メーカーには自社で原薬を製造する企業もありますが、全ての医薬品に対して自社で製造しているわけではなく、国内の原薬メーカーや必要に応じて海外の原薬メーカーからの供給を受けて製剤の製造を行っています。

製造に使われる原薬となるためには厳しい基準を満たす必要があり、通常、国が定める基準に沿うだけでなく、国が定めるよりも厳格なジェネリック医薬品メーカー独自の自主基準を設けて選定を行っています。

単に国の審査で承認されれば良いというわけでなく、より高い基準で品質を確認するための原薬の評価項目として例えば以下の項目に関して評価を実施しています。

  • 色調や性状:主に「見た目」の確認です。個体や液体などの性状、色、溶媒(水やアルコールなどの液体)に溶かした時の状態などを確認します。
  • 純度:特に重要な試験で、不純物が基準値以内かどうかを調査します。基本的にジェネリック医薬品であってもガイドラインに準じた管理が実施されています。具体的には先発医薬品の製剤を対象として高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、分離分析といった操作を行い、もしも基準値より純度が低い原薬であった場合は不適合となります。他に気体を使って行うガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)なども行われています。
  • 結晶形:結晶形は薬の溶けやすさ(溶解性)や光や湿度・温度などに対する安定性などに影響を及ぼします。結晶の安定度合いによっては、製剤化の工程で溶解度が落ち、溶出が不十分になったり、逆に溶出が早くなる可能性もあります。粉末X線解析法や固形核磁気共鳴(固形NMR)などの方法により結晶形の測定が行われます。

この他、粒子径などに関しても評価が行われ、これら試験検査結果から厳しい自主基準に適合した良質なものがジェネリック医薬品の原料(原薬)となっています。

 

一般的にジェネリック医薬品を製造する製薬会社は、もしもなんらかの理由で原薬の供給が停止となった場合でも、安定供給が維持できるような体制をとっています。例えば、1つの原薬に対して複数の原薬メーカーから調達するなどの対策であったり、製薬会社自身やそのグループ企業において原薬を製造したりすることによって、原薬の安定確保に向けた取り組みが行われています。

 

原料(原薬)の選定をした後はいよいよ製剤をつくる段階(製剤化)へ移ります。この工程で重要なのが添加剤(添加物)です。錠剤、カプセル剤、散剤などの製剤は原薬 以外 の成分を含んでいます。錠剤の製造方法を例にしてみると、原薬(有効成分)に賦形剤、結合剤、崩壊剤などを加えて混和し均一にした後、水又は結合剤を含む溶液を用いて適切な方法で粒状にした後、滑沢剤などを加えて混和し圧縮形成して完成になります。これは錠剤のつくり方の一例ですが、原薬の他に賦形剤や結合剤など原薬以外の物質を加えることで錠剤が完成するわけです。この賦形剤や結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤などのことを添加剤(医薬品添加物)と呼び、製剤化を容易にする、品質の安定化を図る、有用性を高めるなどの目的で、先発医薬品も含めてほとんどすべての医薬品に添加されています。これらは製剤の投与量において薬理作用を示さず無害であるものが使われ、日本で使われている医薬品の添加剤は、「医薬品添加物辞典」に収載されているもので、なおかつすでに医薬品として使用された経験があるものです。

 

※新規の添加剤が使われる場合は

新規添加剤、あるいは既に使用実績がある添加剤であるが投与経路の変更、増量等を行う場合は、当該添加剤の品質、安全性等に関する資料を提出しなくてはなりません。これは食品添加物として使用前例があったとしても同様に扱われます。ただし、食品添加物として認められる際に提出した資料は、医薬品添加剤の評価の資料として使用されることもあります。

 

ジェネリック医薬品の添加剤(添加物)の選定では、有効成分との相性や安定性、溶出性など先発医薬品との同等性が必要になるため、100種類以上の添加剤(添加物)と添加量の組み合わせからたった1つの処方を生み出し製剤化します。

もちろん添加剤自体が体に不利益を与える可能性もゼロではなく、アレルギーなどの有害反応を引き起こす可能性に関しては注意が必要とされています。例えば、認められている添加剤(添加物)のひとつにデンプン(でん粉)がありますが、この添加剤の原料はトウモロコシ(トウモロコシデンプン)やジャガイモ(バレイショデンプン)などの食品を原料とするものです。これらの原料となる食品に対してなんらかのアレルギーを持つ人がこの添加剤が入った薬剤を使った場合、アレルギー反応があらわれるケースも考えられます。ただ、このようなケースは同じ「医薬品添加物辞典」に収載されている添加剤(添加物)を使っている先発医薬品においても考えられ、ジェネリック医薬品が特別リスクのある添加剤(添加物)を使っているというわけではありません。添加剤(添加物)の安全性等に関する情報は日本医薬品添加剤協会ホームページ内でもご覧になれます。

ところで先発医薬品には主成分だけでなく製造方法などに特許を持つ場合があります。この特許により使用できない添加剤がある場合も考えられ、その場合には各企業独自の製剤設計や高度な製造技術などを導入する必要があります。このことが結果としてジェネリック医薬品に付加価値を与えるケースもあり、より飲みやすかったり、使いやすかったり、安定性の高い薬をつくり出すことにつながることもあります。ジェネリック医薬品の付加価値については 「自己負担が減るだけじゃない、ジェネリック医薬品の医療費への貢献とは」 中の「先発医薬品とジェネリック医薬品は全てが瓜二つではない」の章でも紹介しています。

 

ジェネリック医薬品の効果や品質などを証明するためには様々な試験をクリアしなくてはなりません。

どの試験もそれぞれに重要ですが、その中でも薬の効き目などが先発医薬品と同等であることを証明する「生物学的同等性試験」は特に重要です。

ジェネリック医薬品は先発医薬品と同一の有効成分を同一量含有し、同一経路から投与される医薬品です。しかし単に同一の有効成分を同一量含むというだけでは、先発医薬品と同等の有効性や安全性は担保できません。臨床現場で長期に渡り使われてきた先発医薬品と同等の有効性や安全性を示すには、治療学的な同等性(臨床的同等性)などの証明が必要です。

この証明に行われるのが厳しい生物学的同等性ガイドライン(参照: 生物学的同等性BEガイドライン等PMDA独立行政 医薬品医療機器総合機構)に基づき実施される生物学的同等性試験です。この試験は先発医薬品に対するジェネリック医薬品の治療学的な同等性を証明するために、血液中の有効成分の濃度推移が同等であることを確認するものです。

薬の効果や副作用があらわれる要因は様々ですが、主なものとして血液中の薬物濃度があり、先発医薬品においては主薬の血中濃度の推移とそれによって生じた有効性や安全性などの関係が長期に渡る臨床での使用などにより確認されています。この関係に基づき、ジェネリック医薬品として造られた製剤における主薬の血中濃度推移が先発医薬品のそれと重なっていれば、有効性や安全性は先発医薬品と同等と言えます。

少し専門的な話になりますが、静脈内への注射による投与以外の投与経路で体内に入った薬剤は吸収され、全身循環血液中へ到達します。飲み薬(経口投与)であれば、口から入った薬物は小腸で吸収された後、門脈に集められ肝臓を通過する際に肝臓の酵素によって代謝を受けて(これを肝初回通過効果と呼びます)から全身循環へたどり着きます。

このように静脈注射以外 の経路で投与された薬物が全身循環(体循環)血中に到達した速度と量をバイオアベイラビリティ(生物学的利用率)といい、同一薬物においては血中濃度の違いを決定する唯一の因子となります。

血中濃度はたとえ同じ人が同じ医薬品を服用した場合であっても、その人の体質や体調などが医薬品の吸収、代謝、排泄といった薬物動態に影響を及ぼすなど自然のばらつきも常についてまわります。もう少し細かく「血中濃度のばらつき」をみていくと、このばらつきがおこる原因は 製剤間の違い以外 に、投与する含量の違い、血中濃度測定上のばらつき、血中濃度を決める個体内のばらつき等によってもおこります。平均含量に幅があったり、個々の製剤含量に幅があるなどのさけられない変動を加味した上で生物学的同等性が確認されます。当然、ばらつきが同じでも平均値が異なると同等ではない(非同等)わけですし、その逆で平均値が同じでもばらつきが大きいと同等ではない(非同等)わけです。これら個々の要因も含め、規定の範囲内に入ることが証明されて初めてジェネリック医薬品は生物学的に同等だと評価されるのです。

 

1980年以前の生物学的同等性のガイドラインでは、ヒトによる生物学的同等性試験は義務付けられておらず、経口固形製剤では、ビーグル犬による動物実験だけで承認されていましたが、ヒトでの薬物動態を動物実験から予測することは困難なため、1980年以降にヒト試験にて同等性を判定することになりました。また2006年には局所皮膚適用製剤の試験においても原則、ヒト試験を行うことが再確認され、ガイドライン自体の見直しも含めてより厳格なものになっています。なお、生物学的同等性試験の被験者は原則として健康成人(20人以上)の志願者によって行われています。

 

その他の試験としては溶出試験、安定性試験などが行われています。溶出試験※1は数種の異なるpH(溶液中の水素イオンの濃度を表す指数)の試験液※2に先発医薬品とジェネリック医薬品を入れて製剤の崩壊から溶液に至る過程をin vitro(試験管や培養器などの中でヒトや動物の組織を用いて、体内と同様の環境を人工的に作り、薬物の反応を検出する試験)で再現する試験です。この溶出試験はバイオアベイラビリティをin vitroで評価できる試験でもあります。

安定性試験は医薬品の流通期間中の品質の安定性を確認あるいは推定するために行う試験です。主に加速試験と長期保存試験が行われています。加速試験は一定の流通期間中の品質の安定性を短期間で 推定するために実施する試験で通常、6ヶ月の試験成績から3年間の安定性が推定可能です。長期保存試験は一定の流通期間中の品質の安定性を確認するために実施する試験で、加速試験で3年間の安定性を推定できない場合にこの試験が必要となります。これ以外にも製剤によっては流通期間中に起こりうる極端な条件下における品質の変化を予知するための試験(苛酷試験)や包装形態の違いによる安定性の確保等のために行う試験(相対比較試験)といった試験が行われる場合もあります。

 

※1薬から有効成分がどのように溶け出していくのかを見た試験のこと。つまり消化管における有効成分の溶出する時間と濃度の推移が推測できる試験。

※2胃・腸などの消化管内に似た環境pH1.2、pH4.0、pH6.8など

 

厳格な試験により生物学的同等性が証明されたジェネリック医薬品はその後、厚生労働大臣に承認申請を行い承認審査を受けます。この審査では同一性調査や適合性調査が行われます。同一性調査は既に承認されている先発医薬品との成分、分量、効能効果、用法、品質等の同一性を確認するものです。一方、適合性調査では申請に際し添付された資料が信頼性の基準に沿って作られているかどうかや製造管理及び品質管理の基準に沿って製造が行われることが確認されます。GCP(医薬品の臨床試験の実施の基準)の実地調査やGMP(医薬品等の製造管理、品質管理に関する基準)の調査といった様々な調査を経て承認の可否が判断され総合的な審査をクリアしたものが晴れてジェネリック医薬品として承認され薬価収載されるのです。

製造所工場ごとにGMP省令に適合する必要があり定期的に査察が行われています。

(画像提供:日本ジェネリック製薬協会「知っ得!ジェネリック!」)

こうして医薬品として承認を受け、世に出たジェネリック医薬品ですが、一度認可されたらそのままで製造販売が継続されるわけではなく、市場で流通しているジェネリック医薬品を抜き取り、品質検査(溶出試験)などが行われ、仮に不適合の結果が出た場合は自主回収等の措置が実施されます。

このようにジェネリック医薬品は厳格な試験や審査等によって高い品質の確保が命題とされている医薬品でもあります。もちろん先発医薬品においても原薬の選定から製剤化、流通されてからの臨床における治療実績や副作用報告などの蓄積、添付文書の改定など薬剤として高い品質が常に求められます。ジェネリック医薬品はこの先発医薬品の長年に渡って得られた有効性や安全性を引き継ぐ医薬品とも言えます。だからこそ「厳しい目」によって審査され、それをクリアする高い品質を確保しなくてはならないのです。

執筆者

MEDLEY編集部

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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