自閉症スペクトラム障害に対する食事療法の研究
自閉症スペクトラム障害はアスペルガー症候群などを含みます。広汎性発達障害の一部とされる場合もあります。原因は不明です。
アメリカのヴァンダービルト大学の研究班が、自閉症スペクトラム障害の治療としての食事または栄養補充としてこれまでに研究されている内容を調査し、小児科専門誌『Pediatrics』に報告しました。
効果を十分に示したものはない
調査により、採用基準を満たした19件の研究が見つかりました。そのうちバイアス(データが偏ること)が入っている恐れが小さいと見られたものは4件だけでした。効果について次の結果が得られました。
- オメガ3脂肪酸のサプリメント:問題行動に変化なし、わずかな害あり(低い質の証拠)
- 酵素(2件の研究でそれぞれ別のもの)、メチルビタミンB12、レボカルニチン、グルテン/カゼインフリー食、グルテンまたはカゼイン含有の挑戦的食事、ラクダのミルク:証拠不十分
食事を心配する必要はない
自閉症スペクトラム障害に対して、食事や栄養補充による効果は示されていないとした報告を紹介しました。
自閉症スペクトラム障害の治療として確立したものはありません。症状の程度にもよりますが、生活環境を整えて過ごしやすくすることや、行動療法などが行われています。
自閉症スペクトラム障害は原因不明です。子供の「障害」を考えると、親は心配のあまり自分に原因があったのではないかと思えてくるかもしれませんが、育て方で変わるものではありません。
食事療法に効果があるとは言えません。食事に気を付けることは毎日大変な労力がかかりますが、効果がはっきりしないなら、気を付ける必要もないでしょう。
子供がありのままに生きやすいように、家族や周りの人々との関係性を作っていくことのほうが、効果不明の「治療」を探すよりも大切なことではないでしょうか。
執筆者
Nutritional and Dietary Interventions for Autism Spectrum Disorder: A Systematic Review.
Pediatrics. 2017 May 26. [Epub ahead of print]
[PMID: 28562286]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。