てんかん治療薬単剤10種の比較
イギリスのリバプール大学の研究班が、てんかんの治療薬の効果などについて文献の調査と解析を行い、結果を『Cochrane Database of Systematic Reviews』に報告しました。
この研究は、てんかんの治療薬10種類について3点を比較しています。
- 治療中止となるまでの期間
- 寛解(発作がない状態)に至るまでの期間
- 最初の発作が出るまでの期間
てんかん発作がある人に対して、発作を減らすことが治療の目的とされます。薬の効果が出ていれば、最初の発作が出るまでの期間は長くなり、寛解も見込めるようになると考えられます。一方、副作用などで治療中止となる場合もあります。
てんかん発作の型は多くの種類に分かれます。ここでは以下のいずれかの発作が出ている人に対する治療の結果を調べました。
- 部分起始発作
- 単純部分発作
- 複雑部分発作
- 二次性全般化発作
- 全般化強直間代発作
調査対象とする薬は、単独で使うことのできる10種類を選びました。
- カルバマゼピン
- フェニトイン
- バルプロ酸ナトリウム
- フェノバルビタール
- オクスカルバゼピン
- ラモトリギン
- ガバペンチン
- トピラマート
- レベチラセタム
- ゾニサミド
※オクスカルバゼピンは2017年7月10日時点で日本では承認されていますが販売されていません。
レベチラセタムは中止までが長く、カルバマゼピンは最初の発作までが長い
文献の検索により、採用条件を満たす77件の研究が見つかり、そのうち36件では参加者個人のデータが得られました。
統計解析で、複数の治療法を比較できるネットワークメタアナリシスという手法を使い、治療の結果を比較しました。次の結果が得られました。
- 部分発作のある人で、レベチラセタムはカルバマゼピンまたはラモトリギンよりも、カルバマゼピンはガバペンチンまたはフェノバルビタールよりも治療中止までの期間が長い(高い質の証拠)
- 発作がない状態が12か月続くまでの期間、発作がない状態が6か月続くまでの期間は、部分発作がある人でも全般発作がある人でも薬によってほとんど差がない(中等度から高い質の証拠)
- 部分発作のある人で、治療開始から最初の発作が出るまでの期間は、フェノバルビタールがカルバマゼピンまたはラモトリギンよりも、カルバマゼピンはバルプロ酸ナトリウム、ガバペンチン、またはラモトリギンよりも、フェニトインはラモトリギンよりも優れている(高い質の証拠)
副作用の可能性があることとして多く報告されていたものは眠気、疲労感、頭痛、胃腸症状、気が遠くなる、皮膚症状などでした。
研究班は、「全体として、このレビューにより得られた高い質の証拠により、カルバマゼピンとラモトリギンは部分起始発作のある人の一次治療として適するというNICEなどの現行の推奨は支持され、またレベチラセタムが妥当な選択肢となるかもしれないことが示される」と結論しています。
てんかん治療薬は何から始めるか
てんかん治療薬についての研究を紹介しました。てんかんの治療では最初に使った薬で十分な効果が得られない場合もあり、薬を替えても不十分ならば複数の薬を組み合わせるなどの方法も使われます。
てんかん発作を起こす状態は多様で、治療薬の使い分けも状況に応じて細かく検討されています。
ここで紹介した結果は一般的なものです。個々の例では平均的な結果が当てはまらないこともあります。実際には複雑な判断が必要になりますが、基本的な点について高い質の証拠があり、またこのように要約されていることで、より複雑な判断を考えやすくするために役立ちます。
執筆者
Antiepileptic drug monotherapy for epilepsy: a network meta-analysis of individual participant data.
Cochrane Database Syst Rev. 2017 Jun 29.
[PMID: 28661008]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。