EGFR変異陽性非小細胞肺がんに対する放射線治療の効果
アメリカの研究班が、EGFR変異陽性の非小細胞肺がんがある患者を対象として、個々の判断により選ばれた治療によって生存期間に違いがあるかを調べ、専門誌『Journal of Clinical Oncology』に報告しました。
この研究は、6施設でそれぞれ治療された351人の患者の記録を集計することで、治療による結果の違いを検討しています。
非小細胞肺がんとは肺がんのうち一部の分類にあたるものを指します。EGFR変異陽性とは、がん細胞がある種の遺伝子変異を持っていることを指します。EGFR変異陽性のがんに対する治療のひとつがEGFR-TKIという種類の抗がん剤です。
定位放射線治療で生存期間が長い
集まったデータの解析により次の結果が得られました。
全生存期間の中央値は、定位放射線治療群(100人)で46か月、全脳照射群(120人)で30か月、EGFR-TKI群(131人)で25か月だった(P<0.001)。
治療法ごとに分けると、半数の人が生存した期間は次のようになりました。
- 定位放射線治療のあとEGFR-TKIを使う(100人):46か月
- 全脳照射のあとEGFR-TKIを使う(120人):30か月
- EGFR-TKIのあと定位放射線治療または全脳照射を使う(131人):25か月
定位放射線治療とは、放射線治療の中でも正確に狭い範囲を狙って放射線を照射する方法です。多くの方向から少しずつ放射線を照射することで、狙った場所に放射線が集中的に当たるようにする方法が取られます。全脳照射は脳の全体に放射線を照射する方法です。
脳転移に定位放射線治療が有効?
EGFR変異陽性の非小細胞肺がんの脳転移に対する治療の結果を紹介しました。
治療法が違った人は、もともと病気の状態が同様だったとは言えません。たとえば脳転移が多発していることを理由に全脳照射が選ばれることがあるため、全脳照射で一見生存期間が短くなっても、それだけで全脳照射が劣っているとは言えません。
この研究は治療法をあらかじめ振り分ける方法ではなく、結果として行われた治療によって結果を比較しているため、計算外の要素が影響している可能性は否定できません。そのため、この結果だけで定位放射線治療が優れていると結論することはできません。しかし、ほかの面からも合わせて治療法を選ぶ中で参考とすることができるかもしれません。
執筆者
Management of Brain Metastases in Tyrosine Kinase Inhibitor-Naïve Epidermal Growth Factor Receptor-Mutant Non-Small-Cell Lung Cancer: A Retrospective Multi-Institutional Analysis.
J Clin Oncol. 2017 Apr 1.
[PMID: 28113019]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。