変形性膝関節症の治療の効果をAHRQが調査
アメリカの政府機関である医療品質研究調査機構(AHRQ)が、変形性膝関節症の治療の効果として報告されているデータを調査しました。
AHRQは、文献の調査により、以下の治療の効果についての報告を集めました。
- 細胞療法
- グルコサミン
- コンドロイチン
- グルコサミンとコンドロイチンの併用
- 筋力トレーニング
- 敏捷性トレーニング
- 有酸素運動(陸上運動と水中運動を含む)
- 温泉療法
- 泥浴療法
- 電気刺激療法(経皮的電気刺激、神経筋電気刺激、パルス電磁場療法を含む)
- 全身振動療法
- 温熱療法
- 赤外線療法
- 超音波治療
- 装具(膝ブレース、靴の中敷き、治療用靴)
- 食事による体重減少
- 家庭治療
- 自己管理
見つかった研究報告から結果をまとめました。
電気刺激で短期、減量で中期に効果あり
調査の結果は、「高いレベルの証拠によって支持される結論はなかった」というものでした。以下の効果または害について中等度の質または低い質の証拠が見つかりました。
- 経皮的電気刺激(TENS)が短期的に痛みを改善する(中等度の質の証拠)
- 体重減少が中期的に痛みを改善する(中等度の質の証拠)
- 長期的にグルコサミンとコンドロイチン併用は痛みまたは機能に効果がなく、グルコサミンまたはコンドロイチン硫酸塩単独でも痛みに効果がない(中等度の質の証拠)
- どの治療にも、深刻な害として一貫して報告されているものはない
以下の治療も有効とする報告がありましたが、証拠の質は低いと判定されました。
- 短期的効果(4週から12週)について
- 筋力トレーニングがWOMACスコア(膝機能の指標)を改善する
- 太極拳が痛みと機能を改善する
- 敏捷性トレーニングが痛みを改善する
- 家庭プログラムが痛みを改善する
- パルス電磁場治療が痛みを改善する
- 中期的効果(12週から26週)について
- 体重減少が中期的に機能を改善する
- 関節内多血小板血漿が痛みと生活の質(QoL)を改善する
- グルコサミンとコンドロイチンの併用が痛みと機能を改善する
- コンドロイチン硫酸塩が単独で痛みを改善する
- 全身運動プログラムが痛みと機能を改善する
- 太極拳が痛みと機能を改善する
- 全身振動療法が機能を改善する
- 家庭プログラムが痛みと機能を改善する
- 長期的効果(26週よりも長期)について
- 敏捷性トレーニングが痛みと機能を改善する
- 全身運動プログラムが痛みと機能を改善する
- 徒手療法(マッサージ、指圧など)が痛みを改善する
- 体重減少が痛みを改善する
膝が痛いときはどうすれば?
変形性膝関節症の治療についての調査結果を紹介しました。
調査された範囲で、質の高い証拠は見つかりませんでした。つまり、調査した治療法のうちで、効果があると言える信頼度の高いものはありませんでした。
中等度から低い質の証拠があったものについては、不確かさが残るものの、治療による負担を考えた上で試してみることは、証拠がないものに比べれば合理的と言えるでしょう。また運動は膝の痛み以外にもさまざまな面で健康に効果があります。
変形性膝関節症の治療として決定的な方法は見つかっていないのが現状です。苦しい状況ですが、「何でもやってみよう」と考えるよりは、証拠があるものから試してみるほうが、自分に合った治療法を見つける近道になるかもしれません。
執筆者
Treatment of Osteoarthritis of the Knee: An Update Review.
Comparative Effectiveness Review Number 190, 2017 May
https://effectivehealthcare.ahrq.gov/ehc/products/633/2441/osteoarthritis-knee-update-report-170505.pdf※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。