2019.03.22 | コラム

レントゲン検査で原因の分からなかった関節痛って大丈夫?

湿布薬で様子見しましょうと言われたら

レントゲン検査で原因の分からなかった関節痛って大丈夫?の写真

患者「先生、最近膝の痛みがひどくて歩くのがしんどいんです」
医師「わかりました、一度レントゲンを撮って、関節の状態を確認してみましょう」

(数分後・・・)

医師「レントゲンでは特に異常はないですね、少し湿布薬で様子を見てみましょう」
患者「そうなんですね、ありがとうございます(でも、たしかに膝は痛いんだけど、問題ないってどういうことだろう・・・)」

レントゲン検査は関節が痛い時に関節の状態を調べるために行われる画像検査の代表です。しかし、レントゲン検査を受けたのに、結局原因がわからないということは珍しくありません。そんな時、原因がわからなくて良いのかな、追加の検査をしなく大丈夫かなと不安に感じる人もいるかもしれません。でも、実は追加の検査をせずに少し様子を見てみるというのは間違った対応ではありません。

このコラムではレントゲン検査の目的や、レントゲン検査で原因が分からなかった時のその後の流れついてお話ししたいと思います。

 

1. そもそも関節痛はどうして起こるのか

関節痛はいろいろなことが原因で起こります。例えば、膝関節の痛みの原因には変形性膝関節症、靭帯損傷、半月板損傷などがあります。肩関節の痛みであれば、肩関節周囲炎(五十肩)、腱板損傷、変形性肩関節症などが挙げられます。これは関節というのが図1のように骨、軟骨、靭帯などさまざまな組織によって構成されており、「関節の痛み」の原因となりうる場所の種類が多いこととも関連しています。

 

【図1:関節の構造】

どの関節にどういった痛みがあるのかを把握することは、関節痛の治療方針を決定する上でも重要です。そのためには、問診や診察を通して関節の痛みの特徴やどういう動きで悪くなるかを確認したり、画像検査の結果を参考にすることもあります。関節痛の原因把握のために行われる画像検査としては、レントゲン検査、MRI検査、超音波検査、関節鏡検査などがありますが、その中でもっとも幅広く行われているのがレントゲン検査です。

 

2. レントゲン検査では何がわかるのか

レントゲン検査は身体の外からX線を当てることで身体の中の状態を調べる検査です。X線は身体の中を通過することができますが、身体を構成する組織ごとに透過率が異なるため、影絵のように内臓の形を把握することができます。例えば、健康診断で行われる胸部レントゲン検査では、この技術を用いることで心臓の形を調べたり、肺の中にがんなどの異常なものができていないかを、わずか数分で確認することができます。

 

 

関節のレントゲン検査でも同様に、症状のある関節にX線を当てることで状態を調べることができます。レントゲン検査が診断の決め手となる関節痛の原因疾患の代表としては、以下のものがあります。

 

  • 骨折
  • 脱臼
  • 変形性関節症
  • 関節リウマチ
  • 骨腫瘍(骨のがん)・転移性骨腫瘍(がんの骨への転移)

 

これらの病気は「骨の形状」や「骨の位置関係」に異常が起こる病気です。骨は関節を構成する組織の中でX線をもっとも通しにくいため、レントゲン検査は骨の形状や位置関係の異常を見つけるのに優れています。

また、上記の病気の中には手術や薬物治療を必要とするものもあり、治療方針を決める上でも重要です。さらに、多くの医療機関で行うことができ、また検査直後に画像を確認できるというのもレントゲン検査の強みです。

一方で、レントゲン検査では肩関節周囲炎、靭帯損傷、半月板損傷のように骨以外の損傷が原因の病気の診断には優れていません。レントゲン検査では靭帯や軟骨を見ることができないためです。代わりに靭帯や軟骨の状態を見ることができる画像検査があります。それがMRI検査です。

 

3. 靭帯や軟骨まで見ることができるMRI検査が必要な人とは

MRI検査は磁石の力を使い画像を構築する検査で、レントゲン検査でわからなかった靭帯や軟骨、筋肉の状態に関する情報が得られます。したがって、レントゲン検査で骨に異常がなく、靭帯や軟骨の損傷が疑われる場合には、MRI検査が検討されます。

しかし、冒頭の患者さんのようにレントゲン検査で原因が分からなかった場合に、全員にMRI検査が行われるわけではありません。その理由としては、MRI検査がレントゲン検査と比べると受けられる医療機関が限られていること、そしてもう一つに関節痛の原因の多くは保存療法(痛み止めやサポーターなどによる治療法)で様子をみていくと、改善していくことが挙げられます。人間の身体には傷を修復する機能があり、関節の損傷もひどいものでなければ、時間とともに修復することができるためです。

したがって、レントゲン検査で異常がなければ、まずは保存療法で良くなるか様子を見るのは理にかなった選択であると言えます。もし、保存療法でしばらく様子をみても良くならない場合には、MRI検査の段取りが組まれることになります。

 

ただし、問診や診察から靭帯断裂や半月板損傷など手術が必要な状態だと判断された際や、症状の程度から保存療法で良くならなさそうな時にはMRI検査の段取りが早い時点で組まれます。

まとめると、MRI検査が考慮されるものとしては、

 

  • 保存療法を行っても改善しない場合
  • 問診や診察から靭帯断裂や半月板損傷などが疑われる場合
  • 関節の症状が強い場合

 

などが考えられます。

このように問診や診察の内容から、MRI検査に進んだ方が良いかが判断されていきます。

 

ここまで、関節のレントゲン検査やMRI検査について話してきました。関節痛の原因となる病気はさまざまですが、多くは痛み止めの湿布薬やサポーターで良くなります。レントゲン検査は関節痛の原因特定だけでなく、手術や薬物治療が必要な病気を除外し、保存療法で様子をみて良さそうかといったことの判断に役立てられることがあります。また、症状に関する情報は検査や治療方針を決める上で非常に重要な情報になります。分かる範囲で良いので担当のお医者さんに伝えてください。

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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