2017.06.04 | ニュース

「副作用で筋肉が溶けた?」コレステロールの薬は本当に危ないのか

10,180人のデータから
from Lancet (London, England)
「副作用で筋肉が溶けた?」コレステロールの薬は本当に危ないのかの写真
(C) roger ashford - Fotolia.com

血中のコレステロールを減らすスタチンという薬はよく使われています。まれに横紋筋融解症という副作用を引き起こします。しかし、スタチンと知って飲むかどうかによって有害事象の現れかたが違ったことが報告されました。

病気の治療では、治療が原因となる副作用のほか、もとの病気の悪化やその他の原因による症状なども現れることがあります。症状などが出たときにいつも原因を特定できるとは限りません。副作用かどうかを区別せず、治療に続いて起こった有害な症状などをまとめて有害事象と呼びます。

イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンなどの研究班が、スタチンの有害事象の現れかたについて、状況による違いを調べ、医学誌『Lancet』に報告しました。

この研究は、薬剤の効果を確かめるために以前に行われた研究と、その後の追跡によって得られたデータを解析したものです。

もとの研究では、スタチンに分類されるアトルバスタチンという薬剤の効果が試されました。対象者は以下の条件に合う人が選ばれました。

  • 40歳から79歳
  • 高血圧がある
  • ほかにも3点以上の要素によって心筋梗塞脳卒中などのリスクが増加していると見られる
  • コレステロール値が正常または軽度高値(6.5mmol/l以下)
  • スタチンやフィブラート系薬剤によって脂質異常症の治療中ではない
  • 心筋梗塞が起こったことがない
  • 狭心症の治療中ではない

対象者はランダムに2グループに分けられ、1日10mgのアトルバスタチンを飲むグループ、偽薬を飲むグループとされました。この間、参加者は自分がどちらのグループかを知らされていませんでした。この方法をブラインドと言います。

この研究はアトルバスタチンの効果が示されたため打ち切りとなりましたが、以後の参加者はアトルバスタチンを飲むか飲まないかを自分で選べることとされ、経過は引き続き記録されました。

つまり、参加者は途中まで、自分がアトルバスタチンを飲んでいるのか、偽薬を飲んでいるのかを知らない(ブラインドされている)状態でした。対して途中から、アトルバスタチンを飲んでいる人はアトルバスタチンと知ったうえで(ブラインドされないで)飲んでいました。

研究期間の有害事象が一定基準で記録されました。

スタチンの副作用として知られる横紋筋融解症は、筋肉の痛みなどの症状を現します。記録された有害事象は「筋関連有害事象」などの分類に当てはめられました。

 

解析のため参加者10,180人のデータが使われました。ブラインドされていた期間は、半数の人で3.3年以上でした。

そのうちブラインドされずに追跡された人9,899人のデータが比較のため使われました。アトルバスタチンを飲んだ人は6,409人、飲まなかった人は3,490人でした。

ブラインドされた期間の1年あたりに、筋関連有害事象が現れた割合はアトルバスタチンのグループで2.03%、偽薬のグループで2.00%であり、統計的に差が見られませんでした

ブラインドされなかった期間の1年あたりでは、筋関連有害事象が現れた割合はアトルバスタチンを飲んだ人で1.26%、飲まなかった人で1.00%であり、アトルバスタチンを飲んだ人のほうが多くなりました

つまり、アトルバスタチンを飲むかどうかによって、筋関連有害事象の割合はブラインドされていれば違いがなかったのに対して、ブラインドされていなければ差がありました

研究班は「これらの結果は、臨床医と患者に、スタチンに関連する多くの有害事象はスタチンの使用と因果関係がないと納得させることを助け、スタチン関連の副作用に関する誇張された言説による公衆衛生上の有害事象に対抗することを助けるであろう」と結論しています。

 

飲んでいる薬が何かを知っているかどうかによって有害事象の現れかたが違ったという報告を紹介しました。

スタチンによる横紋筋融解症はまれです。しかし特に重症の場合ではごく少数ながら死亡例もあり、注意するべきとされる副作用です。

「スタチンを飲むと筋肉が痛くなる」と思っている人は、スタチンを飲んでいるときには筋肉の痛みを気にして敏感になるかもしれません。すると薬理的に横紋筋融解症が起こっていなくても筋関連有害事象が多く報告されるかもしれません。

ただしこの研究は既存のデータを解析したものなので、心理的な効果を計るために特化した設計はなされていません。ブラインドされた期間の数年の治療により体の状態などが変わった可能性もあり、さまざまな解釈がありえます。

この研究だけではっきりとした結論を出すことは難しいと思われますが、研究班の結論は、薬剤のリスクの伝えかたについて問題提起しています。

薬の副作用を強調しすぎることでかえって痛みを呼び起こすようなことは避けるべきです。その一方で、まれに起こる深刻な副作用を見逃さないことも大切です。情報化の時代にあって、リスクに関わる情報も患者を取り囲んでいますが、ともすれば偏った情報ばかりが入ってきてしまう状況があります。

薬の良い面と悪い面の両方をバランスよく伝え、患者が最も良い結果を得るにはどうすることが合理的かを事実に基づいて提案できる表現が、ますます重要になっているのではないでしょうか。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Adverse events associated with unblinded, but not with blinded, statin therapy in the Anglo-Scandinavian Cardiac Outcomes Trial-Lipid-Lowering Arm (ASCOT-LLA): a randomised double-blind placebo-controlled trial and its non-randomised non-blind extension phase.

Lancet. 2017 May 2. [Epub ahead of print]

[PMID: 28476288]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。


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