心筋梗塞発症後にスタチンを処方されていた人の服薬状況
アラバマ大学バーミンガム分校などの研究班が、アメリカの患者を対象とした調査の結果を、専門誌『JAMA Cardiology』に報告しました。
この研究は、2007年から2012年の間で心筋梗塞により入院し、退院後30日以内にストロングスタチンを処方されていた人を対象としています。
ストロングスタチンはある種の薬の総称です。ここではアトルバスタチン(1日40-80mg)とロスバスタチン(1日20-40mg)を指します。ストロングスタチンはスタチン系薬剤の一部で、血中のコレステロール値を下げる強力な効果があります。スタチン系薬剤は心筋梗塞が発生したあとの再発予防に効果があることから、『心筋梗塞二次予防に関するガイドライン』でも勧められています。
この研究の対象者は、入院前からストロングスタチンを飲み続けていた人も、退院後に新しくストロングスタチンを処方された人も含みます。
退院から6か月後と2年後に、退院後処方されたとおり(80%以上の日で)ストロングスタチンを飲み続けていたかが調査されました。
12%は飲むのをやめた
対象者のうち66歳から75歳の29,932人の中で、6か月後と2年後に薬を飲んでいる割合は表のとおりでした。
調査時 | 6か月後 | 2年後 |
服用をよく守っている | 17,633人(58.9%) | 10,308人(41.6%) |
弱い薬に変えた | 2,605人(8.7%) | 3,315人(13.4%) |
服用をあまり守らない | 5,182人(17.3%) | 4,727人(19.1%) |
飲むのをやめた | 3,705人(12.4%) | 4,648(18.8%) |
研究班は、飲むのをやめるなどした人が多いことから「心筋梗塞後にストロングスタチンの使用と服薬順守を増加させるための介入が必要である」と結論しています。
心筋梗塞になっても薬を飲めるか?
長く飲み続ける薬を、6か月後には該当者の12%以上、2年後には18%以上がやめていたという報告を紹介しました。
スタチンの効果は多くの研究結果から確かめられています。心筋梗塞のあとにスタチンを正しく飲めば再発の確率を下げることができます。したがって、飲むのをやめた人は飲み続けている人よりも心筋梗塞再発の確率が上がっている可能性があります。
にもかかわらず、なぜ18%もの人が飲むのをやめたのでしょうか。
この研究は、薬をやめた原因を突き止めることを目的にはしていません。推測の域を出ませんが、やめた人の中には、経済的な理由もあったかもしれません。「再発を考えても飲み続けるのは負担だ」と感じた人がいるかもしれません。「一度経験すると再発は怖くなくなった」という人もいるかもしれません。個々の理由を確かめるには別の調査が必要です。
心筋梗塞になった人のために、誰が何をするべきでしょうか?
執筆者
Adherence to High-Intensity Statins Following a Myocardial Infarction Hospitalization Among Medicare Beneficiaries.
JAMA Cardiol. 2017 Apr 19. [Epub ahead of print]
[PMID: 28423147]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。