2017.03.30 | ニュース

難病による下痢・脱毛が、免疫を弱くすると治った日本人女性

クロンカイト・カナダ症候群にシクロスポリンAを使用した2人の症例報告
from BMC gastroenterology
難病による下痢・脱毛が、免疫を弱くすると治った日本人女性の写真
(C) Two Brains Studios - Fotolia.com

クロンカイト・カナダ症候群は、胃腸に多数のポリープができるほか、脱毛・爪の萎縮・皮膚に色が着くなどの症状を現す難病です。主力の治療であるステロイド薬で症状が収まらず、免疫抑制薬を使用した2人の例が報告されました。

クロンカイト・カナダ症候群は胃や腸に多数のポリープができる、まれな病気です。胃腸の症状として腹痛や下痢を起こすほか、脱毛皮膚に色が着く色素沈着)、体重が減るなども特徴です。少数ですが胃がん大腸がんを伴う場合もあります。

クロンカイト・カナダ症候群の原因は不明です。治療にはステロイド薬が有効とされます。

 

大阪府の病院の医師のチームが、クロンカイト・カナダ症候群の患者2人の例を専門誌『BMC Gastroenterology』に報告しました。

この2人は、どちらもクロンカイト・カナダ症候群と診断され、ステロイド薬による治療を受けましたが、ステロイド薬で症状は改善しませんでした。しかし、治療薬をシクロスポリンAに変更すると、ポリープが減るなどの改善が現れました

シクロスポリンAは免疫を弱くする薬(免疫抑制薬)です。免疫が有害に働いているときの治療として使われる場合があります。

2人の経過を説明します。

 

1人目は75歳女性でした。

2か月続いた下痢と味覚異常、3週間続いた脱毛を訴えて受診しました。検査ではヘモグロビン血小板白血球のすべてが少ないなどの異常がありました。

内視鏡検査で多数のポリープが見つかりました。

骨髄検査で細胞が増加している様子が見られました。

症状と検査結果をもとに、クロンカイト・カナダ症候群と骨髄異形成症候群の併発と診断されました。

骨髄異形成症候群は、骨髄の異常により、ヘモグロビン・血小板・白血球のすべてが少なくなるなどの異常を引き起こす場合があります。クロンカイト・カナダ症候群は骨髄異形成症候群を伴う場合があるとした報告があります。

クロンカイト・カナダ症候群の治療のため、1日30mgのプレドニゾロン(ステロイド薬)が開始されましたが、4週間の治療で目に見える効果はありませんでした。

プレドニゾロンを50mgに増やしても改善はありませんでした。

治療薬をシクロスポリンAに変更したところ、下痢・腹痛・脱毛がしだいに改善し、完全になくなりました

シクロスポリンAを開始してから18か月時点で再度行われた内視鏡検査では、ポリープの一部が消えていました。

 

2人目の例は50歳男性でした。

2か月の下痢と皮膚色素沈着、2週間の味覚異常と腹痛、10kgの体重減少を訴えて受診しました。診察で爪の萎縮も見つかりました。

内視鏡で多数のポリープが見つかりました。

プレドニゾロン40mgによる4週間の治療で検査値は改善しましたが、腹部症状は悪化しました。

治療薬をシクロスポリンAに変更し、8か月後に再度行われた内視鏡検査で、ポリープが減少していました

 

報告の著者らが過去の文献を調査したところ、クロンカイト・カナダ症候群をステロイド薬で治療された人の報告で、効果をはっきり説明しているものが55人分見つかりました。

ここで報告された2人を加えて57人のうち、9人はステロイド薬により症状を改善させることができませんでした。

9人のうち2人は以後の経過が報告されておらず、5人は免疫抑制薬により症状が完全になくなり、1人は大腸を切り取る手術を受け、1人は死亡しました。

 

これらの事例をもとに、研究班はクロンカイト・カナダ症候群の症状が現れる過程で免疫が有害に働いている可能性を想定し、ステロイド薬で効果が現れない場合にはシクロスポリンAのような免疫抑制薬を検討することを主張しています。

ただし、免疫抑制薬の副作用による感染症や発がんの可能性にも注意するべきことを指摘しています。

 

クロンカイト・カナダ症候群という原因不明の病気に対して、免疫を弱くする薬が効果を現したように見える2人の例を紹介しました。

免疫抑制薬は感染症や発がんを起こす懸念もありますが、適切な管理のもとで使われていれば副作用が深刻な事態を引き起こすことはまれであり、それよりも現実に患者を苦しめている症状をなくす効果の価値が勝ると考えられます。

クロンカイト・カナダ症候群に対しては、臨床試験として比較されていない少数の例だけで免疫抑制薬が有効と決めることはできませんが、今後の研究のヒントになるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Effectiveness of cyclosporine as a treatment for steroid-resistant Cronkhite-Canada syndrome; two case reports.

BMC Gastroenterol. 2016 Oct 6.

[PMID: 27716071]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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