2017.02.12 | ニュース

性器から感染するヒトヘルペスウイルス2型は全員検査するべきか?

米国予防医学作業部会の推奨
from JAMA
性器から感染するヒトヘルペスウイルス2型は全員検査するべきか?の写真
(C) jarun011 - iStock

性器ヘルペスは痛みや水ぶくれを起こします。出産のときに子どもに感染する場合は特に危険です。しかし、薬で治療しても原因のウイルスを完全になくすことはできません。アメリカの政府機関が、症状がない人は検査をしないことを推奨しました。

性器ヘルペスは、性器のまわりに痛みや水ぶくれの症状が出る病気です。原因はヒトヘルペスウイルス1型(HSV-1)またはヒトヘルペスウイルス2型(HSV-2)です。

HSV-1とHSV-2が起こす病気として、ほかに口唇ヘルペスなどもあります。HSV-1は口の感染が、HSV-2は性器の感染が多く見つかります。

ヒトヘルペスウイルスにはじめて感染したとき、症状が出始めるまでに数日程度の潜伏期間があります。一度症状が出た人では、症状が収まってからもウイルスは一生体の中に住み着き、再発を繰り返します。

性器ヘルペスが特に問題になるのが妊娠中の女性です。出産時に性器ヘルペスの症状が出ている場合、産道から子どもに感染する恐れがあります(母子感染)。子どもが感染して新生児ヘルペスの状態になると、死亡率が20%から30%と非常に危険です。

性器ヘルペスの治療には抗ヘルペスウイルス薬が使えます。一度感染してしまったウイルスを体からなくすことはできませんが、症状を軽くするなどの効果が期待できます。

 

アメリカの政府機関である米国予防医学作業部会(USPSTF)が、性器ヘルペスを見つけ出す血液検査についての推奨事項を、医学誌『JAMA』で公表しました。

この推奨では、症状のない人を対象として、HSV-2の血液検査によって感染を見つけ出すこと(血清学的スクリーニング)が勧められるかどうかを議論しています。HSV-1も検査で見つけ出せるのですが、血液検査では感染している場所が性器か口かを見分けられないこと、HSV-1は口に感染しやすいことから、HSV-1のスクリーニングは勧められていません。

推奨の中で、「重要性」として、性器ヘルペスのスクリーニングの利点が挙げられています。

  • 抗ウイルス薬によって発症時の症状が軽くなる可能性がある。
  • 治療によって出産時の母子感染を予防できる可能性がある。

ただし、これらの利点は、感染していて治療効果が期待できるにもかかわらず症状では見つけられない潜伏期間にだけ得られると考えられます。

USPSTFは、HSV-2のスクリーニングについてさまざまな研究から報告されているデータをもとに、推奨する内容を検討しました。2005年にも同じテーマで推奨が出されていましたが、新たに最近の情報を加えて更新しました。

 

調査の結果、報告されている次の内容が見つかりました。

  • 最もよく使われている血液検査の方法を使うと、HSV-2に感染していれば99%を正しく発見できる一方、感染していない人も17%程度の割合で陽性(感染の疑いあり)の結果が出る
  • 抗ウイルス薬によって症状のない性的パートナーの間で性器のHSV感染を予防できるかどうかは不明
  • 抗ウイルス薬によって、HSVに感染したパートナーから妊娠中の女性への感染を予防できるかどうかを調べた研究報告はない
  • 母親に性器ヘルペスの症状が出ているときは普通、母子感染を防ぐために帝王切開が勧められる
  • 感染者の統計などから推計すると、スクリーニングで陽性の結果が出る人のうち半分近くが実際には感染していない(偽陽性)ことが予想される。
  • 検査で陽性の結果が出ることは社会的・心理的な悪影響がある。

これらの根拠によって利益と害を比べた結果、「USPSTFは、症状のない青少年および成人に対しては、妊娠中の人を含めて、ルーチンに性器HSV感染の血清学的スクリーニングを行わないことを勧める」と結論されました。

 

性器ヘルペスの検査は誰にでもするべきではないとした推奨を紹介しました。

ここでも検討されているとおり、検査はすればするほどいいと単純には言えません。検査が間違う場合、検査結果自体に社会的・心理的な影響がある場合、治療の効果が十分大きいと言えない場合など、いろいろな要素によって利益が出たり害が出たりします。

検査を受ける前には、検査の目的と、自分が検査に合っているかどうかをよく確かめておくことをおすすめします。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Serologic Screening for Genital Herpes Infection: US Preventive Services Task Force Recommendation Statement.

JAMA. 2016 Dec 20.

[PMID: 27997659]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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