ニキビの薬で9%の子どもに先天異常が?イソトレチノインの危険性
イソトレチノインはニキビ治療薬です。重大な副作用として、胎児に悪影響があります。カナダの調査で、妊娠中の服用を避ける厳しいルールにもかかわらず、服用した女性から先天異常を持って生まれた子ども11人がいたことが報告されました。
イソトレチノイン使用中の妊娠の調査
カナダの研究班が、1996年から2011年の間にイソトレチノインを処方された女性の統計データを解析し、イソトレチノイン使用中の妊娠・出産、またそのうち先天異常を持って生まれた子どもの数などを調べました。
イソトレチノインの使用条件
イソトレチノインは胎児に悪影響があります。妊娠中にイソトレチノインを飲むことで、頭蓋・顔面の異常、心臓の異常、中枢神経系(脳・
- イソトレチノインを処方される女性には胎児への影響を説明すること
- 妊娠中の使用を避ける以下の注意について文書で同意を取ること
- 2種類の方法を同時に使って避妊すること
- 毎月妊娠の検査をすること
- そのほか注意事項に従うこと
厳しい注意にもかかわらず、イソトレチノイン使用中に妊娠した人の例は最近も報告されています。
2%が妊娠し、9%に先天異常あり
統計データから次の結果が得られました。
合計59,271人の女性患者が、イソトレチノイン治療102,308コースを受けていた。
高
特異度 の妊娠診断基準によると、治療開始から42週後までに、1,473件の妊娠があった(イソトレチノイン使用者1,000人あたり24.9件)。うち1,331件(90.4%)が自然胎児喪失または医療介入による中絶に至った。118人の生産のうち、先天形態異常の症例が11例(9.3%)あった。
イソトレチノインを処方された59,271人の女性のデータがありました。そのうち2.49%にあたる、のべ1,473人で、処方期間中に妊娠が確実な診断名(出産、中絶など)が下されていました。妊娠した場合の90%以上が、中絶または胎児死亡に至っていました。生きて産まれた子どもが118人いましたが、そのうち9.3%にあたる11人は先天形態異常を持っていました。
日本でも問題視されるイソトレチノインの危険
イソトレチノインによる悪影響の統計データを紹介しました。
イソトレチノインは日本では未承認です。すなわち、通常の保険診療の中でイソトレチノインが処方されることはありません。さらに、厚生労働省は個別の注意として、「米国等で難治性ニキビの治療に使用されている「アキュテイン」(一般名:イソトレチノイン)については、妊娠中の女性が服用した場合に、胎児への催奇形性のおそれがあるため、米国食品医薬品局(FDA)では、インターネットや個人輸入により入手することのないよう、注意喚起を行っています。」という事実を紹介しています(「アキュテイン(ACCUTANE)(わが国で未承認の難治性ニキビ治療薬)に関する注意喚起について」)。
厚生労働省の注意の中で、イソトレチノインを成分とする以下の商品名が挙げられています。
- アキュテイン(ACCUTANE)
- ロアキュテイン(ROACCUTANE)
- ソトレット(SOTRET)
- アムネスティーム(AMNESTEEM)
- クララビス(CLARAVIS)
- イソトロイン(ISOTROIN)
- アクノティン(ACNOTIN)
いずれも日本では保険診療として処方されることもなく、医師の診断によらず個人輸入することもできません。
ほかにもあるイソトレチノインの危険
FDAは、イソトレチノインの催奇形性のほかにも自殺のリスクに対する管理として、以下の
- うつ症状
- 自殺念慮
- 悲しみの気分
- イライラ
- 危険な衝動による行動
- 怒り
- 社会活動やスポーツ活動に対する喜び・関心の喪失
- 睡眠が長すぎる・短すぎる
- 体重・食欲の変化
- 学校・仕事の成績低下
- 集中できない
- 気分障害
- 精神病
- 攻撃性
薬のリスクを把握する
あらゆる薬に副作用があります。中でもイソトレチノインは特に妊娠・出産に対する注意が必要な薬です。
ニキビで困っている女性は妊娠可能な年齢の場合もあります。イソトレチノインを使う状況にある女性は、避妊についても正しい知識が必要になります。たとえば月経から日数を数えて「今日は安全日だから妊娠しない」と判断することはできません。
薬はリスクを考えに入れて正しく使わなければ深刻な結果を招いてしまうことがあります。危険性を最小限に抑えるための知識が大切です。
執筆者
Occurrence of pregnancy and pregnancy outcomes during isotretinoin therapy.
CMAJ. 2016 Jul 12.
[PMID: 27114489]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。