骨盤底筋トレーニングで2年後の症状は改善するか?
イギリスとニュージーランドの研究班が、骨盤臓器脱に対する骨盤底筋トレーニングの研究結果を医学誌『Lancet』に報告しました。
この研究は、出産経験がある女性で、骨盤臓器脱の症状があり、重症度は最重症(ステージ4)を除くステージ1から3で、未治療の人が対象となりました。
対象者はランダムに2グループに分けられ、骨盤底筋トレーニングをするグループ(介入群)、しないグループ(対照群)とされました。
介入群では、16週間をかけて5回の運動療法を行ったうえ、自宅でもトレーニングができるよう、ピラティスをもとにした骨盤底筋トレーニングの指導があり、さらに教材DVDが与えられました。
対照群の人は、骨盤臓器脱を防ぐ生活スタイルについてアドバイスするリーフレットを渡されました。
治療開始から2年後に重症度のスコアが比較されました。
トレーニングでわずかに症状改善
次の結果が得られました。
2年時点で平均のPOP-SSスコアは介入群で3.2(標準偏差3.4)、対照群で4.2(標準偏差4.4)だった(調整平均差-1.01、95%信頼区間-1.70から-0.33、P=0.004)。
3件の有害事象が報告された。すべて介入群だった(1人が転倒、1人が尾骨痛、1人が胸痛および息切れ)。
0点(症状なし)から28点(最も重症)のスコアで、骨盤底筋トレーニングをするグループでは2年後の平均点が3.2、骨盤底筋トレーニングをしないグループでは平均4.2でした。骨盤底筋トレーニングをするグループのほうが1点ほど症状が軽くなっていました。
トレーニングによる事故等の可能性があることとして、転倒などが介入群のうち計3人に起こりました。
骨盤臓器脱にはトレーニングが役に立つ?
骨盤底筋トレーニングにより2年後に効果が見られる結果となりました。効果の強さは限られていますが、治療の助けになる場面があるかもしれません。
骨盤臓器脱の治療には、ほかにペッサリーなどもあります。ペッサリーは膣の中に挿入して子宮などを支える道具です。
重症の場合などでは手術治療もあります。手術方法として、子宮を取り出して膣を縫縮する「膣式子宮全摘術+前後膣壁縫縮術」などの方法があります。ほかの手術方法にメッシュ手術などもあります。メッシュ手術は子宮を取り出すことなく治療する手術です。ただし、メッシュ手術には再手術や尿が出なくなるなどの合併症もあり、アメリカ食品医薬品局(FDA)は「骨盤臓器脱のメッシュによる経腟修復が伝統的なメッシュ以外の修復法よりも有効かどうかは明らかでない」という見解を示しています。
重症度や個人の価値観などに応じて治療法を選ぶうえで、実際に試したデータを参考にすることができます。
執筆者
Pelvic floor muscle training for secondary prevention of pelvic organ prolapse (PREVPROL): a multicentre randomised controlled trial.
Lancet. 2016 Dec 20. [Epub ahead of print]
[PMID: 28010994]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。