転倒防止の方法を探る研究
ポルトガルの研究班が、研究結果を専門誌『Clinical Rehabilitation』に報告しました。
この研究では、転倒防止のために有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせる効果を調べています。
対象者として、平均69歳で生活は自立している男性66人が選ばれました。対象者はランダムに3グループに分けられました。
- 有酸素運動をするグループ
- 有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせるグループ
- トレーニングをしないグループ
トレーニングは、毎週3回、32週間行うこととしました。
トレーニングの効果はどうやって測る?
トレーニングの効果を調べるため、次の方法が使われました。
- アップアンドゴーテスト
- 椅子から立ち上がって歩き、戻ってきて座るまでの素早さを測ります。
- 機能的リーチテスト
- 立った姿勢で手を前に伸ばし、バランスを保ちながらどれだけ伸ばせるかを測ります。
- 30秒立ち上がりテスト
- 30秒間に椅子から何回立ち上がれるかで足の力を測ります。
- 6分間歩行テスト
- 6分間に歩ける距離を測ります。
筋トレを加えると効果増
研究から次の結果が得られました。
両方の運動群が改善を報告した。しかし、有酸素運動の群と比べて、有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせた群のほうがよりよい成績が見られた(Timed Up and Go Testで-20.3% vs. -9.1%、機能的リーチテストで +27.5% vs. +10.9%、30秒立ち上がりテスト+20.8% vs. +7.3%、6分間歩行テスト+10.9% vs. +3.5%)。
トレーニングをした2グループとも運動能力が改善しました。筋力トレーニングを組み合わせたグループのほうが、4種類のテストですべて上回る効果が現れていました。
まとめ
高齢者が体を鍛えるには、有酸素運動だけでなく筋力トレーニングも組み合わせるとより効果的という結果でした。一方、有酸素運動だけでもトレーニングをしないよりは確かに効果が出ていました。
転倒予防のために考えられた筋力トレーニングとして、椅子に座って膝を伸ばす、椅子から立ち上がるなどの動作を繰り返す方法があります。
有酸素運動は、歩く、水泳などの運動です。
歳を取ってからも運動を!
高齢者の筋力が落ちる「サルコペニア」「ロコモティブシンドローム」などの状態は、健康状態の悪化につながりやすいとして最近話題になっています。
筋力が落ちてから運動するのは大変ですが、できることから始めて筋力トレーニングも取り込んでいくことで、生き生きとした体を維持する役に立てられるかもしれません。
執筆者
Combined exercise is more effective than aerobic exercise in the improvement of fall risk factors: A randomized controlled trial in community-dwelling older men.
Clin Rehabil. 2016 Jun 27. [Epub ahead of print]
[PMID: 27353246]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。